黒く艶やかなる獣の檻 その8

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ガラスでひしゃげた乳首の先っぽ、じんじんとした痺れが、現実を教えてくれる。
マシュマロのようにたわんだおっぱい。
すっかり桜色に上気して、こんな露骨に丸出しで‥‥
電車の通過していく戸外の人々すべてに、私のヘンタイぶりをさらけだしているのだ。
揉みつぶされているのに、敏感になり張りつめた白磁の表面は、ぴりりと愉悦めいた
疼痛を送りこんでくる。
首をよじって左を見れば、そこには、はるかに薄い裸の胸を圧迫される少女が。
獣の拘束具は見えず、お揃いの首輪ばかりが痴女めいて人目を惹く。
まるで痴漢を招いているかのような姿だ。
‥‥このままじゃいけない。
「ンッ」
拘束にあらがい、アームバインダーの縛めにあらがい、革の軋みにあらがう。
ぴっちり重ねあわされた両手の指を絡ませ、鉄杭のようにピンと揃えられた後ろ手に
ありったけの腕力をこめていく。
「んぁ‥‥っ、ン!」
魚の背ビレのように固められたアームバインダーがうねり、ひくひくとくねりだす。
でも、それだけ。
人の圧力を押しかえし、腰をひねることさえ不可能なのだ。
逆三角錐の根元、ひときわ細い手首のつけねはギジリと革紐に絞りたてられたきり。
むっとする人の圧力と鉄軌の振動に揺すりたてられ、乳房をなぶられ、おっぱいを
虐めぬかれ、そそり勃つ乳首を無残に潰されていく。
加速する意識はずっとのぼせたまま、やみくもな焦燥感ばかりがあふれだす。
なんて無力なんだろう。せめて向き合えば、口を使って服を直せたかもしれないのに。
私には、もう何もできない‥‥
こみあげる何度目かの絶望をかみ殺す。
車窓をながれゆく漆黒の街がトリップ感をあおりたてる。これが夢ならイイのに。
ひどくいやらしい淫夢なら、少なくとも、目覚めることはできるのだ。
「ムリ。ね、やっぱりムリだよ、みなみィ」
「イヤ‥‥ァ」
どこか情欲に濡れた吐息で、音羽かなめが私を誘惑する。それを私が懸命に拒絶する。
仕方ないと。どうせもう晒し者になるしかないんだと。その方が気持ちイイと。
下半身の鈍い律動が、官能を狂ったようにかき乱す。
たえず器具に犯されつづけ、どろりとした刺激をたっぷり子宮にためこんでいるから
こそ分かる。
さぞ、その瞬間は気持ちイイんだろう。
ホームに押しだされ、二人仲良く繋がれたまま充血したおっぱいを見せびらかすのだ。
妄想だけで、下半身がドロドロに蜜をたくわえていく。
いや、違う!?
このまま行けば、妄想は数分後に現実になってしまう‥‥!
「ダメ‥‥っ」
調教されたカラダを心で否定する。
私は教師なのだ。せめて‥‥せめて音羽かなめだけでも、守ってあげなければ。
窓ガラスに乳房を這わせ、いざりながら、かなめに密着する。
左肩を少女にこすりつけ、肩甲骨まではだけられた冬服をズリ下ろそうとこころみる。
カラダを上下させ、セーラー服の裾を引っかけようと考えたのだ。
「ンッ‥‥んくぅ」
「み、みなみったら‥‥ぃア」
まるで唾液をころがしてゆくかのよう、抜けるような色の少女の柔肌に肩を這わせる。
揺すられるたび、ガラスに潰された乳首が痺れるのだろう。こっちまでとろけそうな
甘い喘ぎを音羽かなめがあふれさせる。
アームバインダーの肩紐にひっかかるらしく、めくれた制服はなかなか戻らなかった。
じりじりと、炙るような時間ばかりが過ぎていく。
じっと爪先立って胸をそらし、従順に協力する姿は嗜虐心をかきたてずにおれない。
「みなみ‥‥もうムリよ。いい。いいから」
「よくない‥‥」
「お願い。キス、して」
せめて壊れそうな心を包んでと、少女が無垢な唇をさしだしてくる。
壊れそうなのは私だって同じ。腰がぐずぐずで、下半身はイかされすぎて砕けそう。
だけど、かなめが‥‥かなめのために、私は、できるかぎりを‥‥
「ね。私もう‥‥みなみだけ‥‥」
音羽かなめはまぶたを伏せ、つうと濡れた口唇をさしだしていた。あまりにも無防備。
すぐにはキスをしない。
ちろりと舌先を伸ばし、紅い少女の舌をまさぐる。
(違う! こんなことしてたら)
(セーラー服を直してあげないと‥‥)
痙攣寸前の焦りが、焦燥感が、底なしの深淵をのぞかせていた。
こんなことをしている場合じゃない。ダメよ違う。そう思えば思うほど性感が昂ぶり、
堕ちた心が逃避的なリップサービスに没頭してしまう。
本当に、もうあと数分も残されていないのだ。
ほんの何駅か先でこのドアが開く。
そうしたらジ・エンド。2人とも破廉恥な格好で外に放りだされてしまう。革に緊め
あげられ、乳房を、おっぱいをみせびらかす卑猥なポーズのままで‥‥
なのに――――っっ!
「ん、あむっ」
「ぅあぅ‥‥んんー、もっと、ォ」
ちろちろと伸ばした舌同士で唾液をまぶしあう。
いやらしく粘膜をなすりあう、オーラルセックスをやめることができない。
外気をかき乱す2つの舌が、かなめと私の鼻先でくっついては離れ、ねろねろ絡まる。
みるからに情交を連想させる肉色のまじわり。それが、たまらなく焦燥感をかきたて
止まらないのだ。
もう。欲しい。もっともっと、最低な刺激が、犯される悦びが――!
ひっきりなしの粘液と汁のひびき。
はぁ、はぁとせわしなく雌犬のようにあえぎ、熱い息をこぼす。
どのみち、キスをしようにも少女の顔が遠すぎ、唇を重ねることもおぼつかないのだ。
だから、こんな淡くもどかしい前戯で、意識が攪拌されてしまう。
耳たぶは弾けそうなほど脈打っていた。
いつのまにか――
あれほど嫌悪していた複数の手が、スラックスを、コートをまさぐるのを感じとる。
こちらに背を向ける乗客のすきまから、痴漢たちの手が伸びてくる。
彼らは「見て」いるのだ。
人の壁にへだてられた、この淫靡な行為のすべてを。
誰かもわからない酷い仕打ちをほどこす手。品定めする乱暴な指づかいが裸身を揉み
ほぐし、アームバインダーをつつっとねぶり、コートをたくしあげてお尻をむにっと
握りしめる。
悩ましい感触。飛びあがりたい衝撃。それすら、疚しい背徳にすりかえられてしまう。
こんなにも玩具にされて‥‥性感が狂ってしまう。
また‥‥
かなめが、人目もはばからずに舌を近々と寄せてくる。
ほっそりしたうなじとうなじを差し伸べて。
ドアに頭をくっつけるようにして距離を縮め、ようやく唇をふれあわせる。
奴隷同士キスの交歓をつづけながら、長い長いアクメに、達してしまう‥‥‥‥ッ!
ガクンと乗客の波がはずみ、大きく傾いてよろめいた。
電車が停止、した‥‥?
え‥‥?
はっと流し目をくれた窓の先には人気のない駅のホームが広がっていた。
よりかかっていたドアが開く――!


               ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥


「ひぁぁっ!」
ガラスに癒着する乳房がぎりりっとひしゃげ、ドアに引きずりこまれる。
反射的に悲鳴をあげて上体をのけぞらせ、むっちり張りつめる双乳を吸いこんでいく
戸袋の細いスリットから裸身をねじきった。
ひきはがす痛みが陶酔を吹きとばし、つんのめりつつ足を踏みだす。
車内の圧力がふくれあがり、突き飛ばされる勢いで硬いホームをたたっと踏みしめる。
うぁ、もっと‥‥!
反動で大きく不規則に2つの乳房がたわみ、ぷるんと跳ねまわった。
ピリリとした電撃に、その場で反りかえってしまう、
熟れきったおっぱいを引っぺがされた苦悶は、荒々しく乳房を愛撫されたかのよう。
マゾめいた疼きに下半身を突きあげられ、動揺がおさまらない。
冷たい風が渦をまく。
コートを巻き込んで拘束の身を悩ましくなぞりあげる。
半ばイキかかった下腹部を噛みしめたまま、膝が震えて一歩も進めないのだ。
私の悲鳴で一斉にむけられた無数の瞳。銃弾のような視線、嵐のような注視を浴びせ
かけられ、その密度に心がくじけてしまう。
どうしたらいいの‥‥?
血の気がのぼって考えることもできない。分かるのはただ一つ。終わりだ。すべての
終わり、何もかもを、いやらしい胸から、発情した躯から、はしたない拘束遊戯の何
から何までを乗客に見られ、撮られ、記録されて、広められちゃう‥‥
晒されちゃう‥‥晒し者に‥‥
混乱する私の頭に、鈴のような軽やかな囁きがしみとおった。
「看板まで」
言うなりセーラー服の裾をひるがえして音羽かなめが小走りになる。はっと気づき、
かなめを追った。首輪同士ををつなぐリードで少女を引き倒さぬよう、肩をならべて
駅名表示板の裏にまわりこむ。
途端、怒涛のようなざわめきが表示板ごしに押し寄せてきた。
「おい、今の‥‥見たか?」
「あ。何が」
「写メ、写メとれなかった‥‥痴女だろアレ」
「マジ? いたの? そんなの」
異常なまでの興奮が停車中の車両からあふれだす。一瞬、群集が殺到してきたのでは
と裸身がすくむほど熱っぽい声と瞳が、2人の足と、表示板の下から丸見えのアーム
バインダーの丸っこい先端に、手首の細い部分を緊めあげる革ベルトにからみつく。
「見ろよ! あの手、なんか絶対縛られてるって。ヘンだよ」
「は? バッグの見間違いじゃねーの?」
「違うって。首輪もしてて手綱ついてた。あれ掴んでたら面白かったのになぁ」
とぎれとぎれの猥褻きわまる話。それが今の私たち自身。奴隷そのものの現実なのだ。
――首輪のリードを乗客に奪われたなら。
――革のバッグなどではなく、後ろ手を縛めるアームバインダーだと知られたら。
――本気で乳首を勃たせ、甘い息をこぼしているとバレたなら。
ジングルが鳴り、ぷしゅっとドアの排気がこだまする。
重々しい列車の振動にびくっと震え、肩をすぼめて音羽かなめに抱きついてしまう。
いやがらず、ローティーンの初々しい裸身がつと擦り寄ってきた。
不自由な躯同士のハグ。かなめも私も、お互いを心ゆくまで抱き寄せたいと願うその
両手を後ろにまとめられ、限界まで引き伸ばされ、拷問じみたアームバインダーの内
側で縛りあわされてしまっている。
その事実が切なく、また愛おしさをかきたてる。
悩乱しきった私の2つの性感帯の谷間で、少女のうなじをはさみこむ。つんとそそり
勃つ乳首で少女の耳朶をくすぐり、ふわりと広がるつややかな黒髪、ポニーテールの
括り目に口づける。
列車の轟音がひときわ高まり、潮のように遠のいていった。
戻ってきた静寂のなか、おっぱいに埋まったままの少女がちろと上目づかいをよこす。
「もう、おひついた?」
「ひゃっ、ダメ‥‥どこで、話して」
暖かい呼気にむににっと乳房を愛撫され、うぁ、と喘ぎ声をもらしてしまう。瞳の色
で悪戯っぽく微笑み、少女はぐりりっと顔をうずめてきた。つやつやした黒髪のさざ
波が鎖骨をくすぐり、甘やかに官能を刺激する。
音羽かなめ。私を罠にはめた張本人。手綱でつながれた奴隷同士。
露出行為‥‥いや、露出緊縛の先輩。
女性との性のまじわりなのに嫌ではない。むしろ、同時に虐めぬかれ、同時に心細い
この主なき露出緊縛に、私の方が酔いしれてしまっている‥‥
バージスラインの先、たゆんと弾む下乳に、少女の可憐な乳首が刺さってくる。
大人の私に負けないぐらい自己主張し、カチカチに尖りきって生の調教行為の興奮を
じんじんと伝えてくるのだ。儚くも健気な少女の身体反応に、花芯が疼きだす。
そう。こんなにも近いのに。
このつややかな獣の拘束を身にまとう限り、お互いをなぐさめ慰撫する、本当に愛情
あふれる抱擁だけは、今の私たちが、決して叶えられないモノ‥‥
棒のように固められた後ろ手のまま、自由を剥奪された裸身すべてで少女を包みこむ。
「かなめ‥‥ェ」
「うん、みなみ‥‥イイよ」
ん、と。喉をこくりと鳴らし、主にささげる奴隷のように、少女が唇をさしだす。
敏感になりすぎた双乳の谷から、あえかな首元をさらけだし、人目を気にしないかの
よう。
たゆたゆ弾む乳房以上に、心臓が壊れる寸前まで乱れはじめてしまう。
挙動不審に首をねじり、周囲を確認する。いつもの駅。この時間はほとんど降りる客
もいない。ホームのこちら側にも人気はない。大丈夫。駅員でさえ遠い。
でも、監視カメラは‥‥?
それも少女の声に断ち切られてしまう。
「ご褒美。どっちがいい?」
「どっちって‥‥」
「私にキスのご褒美くれるのと、私がキスのご褒美してあげるの。どっちでもイイよ」
トクン。動悸がはずむ。
単純すぎる二択。私はこの少女に、攻められたいのか‥‥攻めたいのか。
口を開き、声が出ず、さらに喉を絞って。
「ご褒美‥‥ちょうだい。奴隷のセンパイ、でしょ、かなめは」
今日何度目か、すっかり忘れるほどの――それこそ食べてきたパンの数も種類も忘れ
てしまうほどの――当然さで、かなめと私は舌をまじわらせ、いつものディープキス
に心を浸らせた。


               ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥


ガコンと自動改札が開き、通りしなにホームへ入っていく人の奇妙な視線を無視して
駅前へ歩きだす。
ここまでくれば自宅のマンションまで歩いて10分。ようやく、本当に解放されるのだ。
「大丈夫。がんばったね、私のみなみ」
「かなめ‥‥ちゃん」
「膝震えてるよ。でも私も。こんな危なかったの、ひさしぶり」
少女のほっそりした下肢もまた、まだ時折ぶるるっと奇妙な痙攣を起こす。
それほどの危機を、2人ともこの躯で乗りきったという達成感さえわいてくるから不
思議なものだ。
駅前の小さなロータリーを抜け、夜の住宅街を人気のないルートから歩いてゆく。
「私もみなみからご褒美欲しいな。頭を下げて」
「何をするの?」
「また胸をはだけてあげる。さっき、乳合わせしてもらうの忘れちゃったから」
「ダメ。そしてイヤ。少なくともここでは嫌。また今度ね」
吊り橋理論そのままだと思う。
どちらかといえば音羽かなめは理知的で、あまり感情の読めない生徒だと思っていた。
それが窮地を切りぬけた今では友達の気安さなのだから。
「それよりかなめ、コートのボタン2つまで全開ってなに? 私お仕置きされてる?」
「して欲しいならいつでも‥‥だからぁ、みなみ巨乳すぎ。ずるい」
「だからって、これじゃ‥‥」
さっき、駅のトイレで直してもらったファーコートに目を落とす。
腰のベルトはアームバインダーごときつく縛られ、逆に襟ぐりはVどころかスリット
めいて縦にはだけられ、へその真上まで羞らう肌色がのぞいている。
砲弾のように張りつめた乳房がたゆんたゆん自己主張して‥‥その、ひどく悩ましい。
これじゃ脱ぎかけのライダースーツよ。心の中でひとりツッコミを入れる。
「これ‥‥走ったら、またポロンってこぼれちゃう」
「ふんだ。それがヤなら、えっちな乳首を勃たせっ放しでストッパーにして下さい」
これもすでに何度目かのやりとり。
服従させら引き廻される奴隷のお願いが、そうやすやす通るわけもない。
「私は、かなめちゃんの胸、好きよ」
「‥‥っ!」
小さく逸らした頬が、柄にもなく紅潮するのも新鮮なのだ。
今はつるんと少女の胸を覆いかくす、黒い冬服の胸元を眺めやる。私同様、かなめも
衣服の下ではまだキリキリ乳首を尖らせ、甘い快感にむしばまれているのだろうかと。
視線に気づいたか、かなめが顔をあげてくる。
「ねえ、みなみ。アームバインダーは、いやらしい道具だった?」
「いいえ」
少し考え、正直な言葉を返した。
もう偽れない。そう思えていた。音羽かなめも‥‥そして、自分自身も。
この獣の檻がいやらしいのではない。これは、ごく少数を選ぶ判定機のようなもの。
おそらく大抵は血行不良や痺れで15分も持たないだろう。呆れるほど柔軟で忍耐強く、
受け身でいられる人のみが、この被虐の味に触れてしまうのだ――
あるいは、だからこそかなめは私を?
「だから私をハメたの?」
「いいえ」
色のない視線で、けれども親密さはたたえたまま、音羽かなめが振り向く。
「私は最初からみなみが好き。だから同じものを知って欲しかった。保健体育の先生
って肌が合わないこと多いけど、楠先生――じゃなくて、みなみ――は、休みがちな
私にも優しかったし」
「あぁ‥‥それと、みなみって言い直すことないわ。楠先生でいいじゃない」
「イヤ。私のみなみは、私のみなみ」
「ふふ」
少女の所有欲を見せつけられ、思わず笑っていた。頭の回転が速くて、世知に長けて
いて、でも本当は普通の女の子だ。そう、思える。
女同士のキス。不純かもしれない。でも私も素直に応じてしまった。
イヤではなかったからだ。
街灯に浮きあがるアームバインダーは、夜の艶をまといさらに淫靡だった。
不自由なセーラー服をひるがえし、軽やかにタップする少女を引き連れて歩く。文字
通りの「引き連れて」だ。首輪のリードが私と彼女を離れられないよう繋ぎとめる。
ここでは、奴隷の少女を連れまわすのは奴隷の私なのだ。
クルマが行きかう信号前で立ちどまる。
暗闇の対岸には、詰襟姿の学生。隠れて悪戯するみたいに、かなめが後ろ手のアーム
バインダーで私の後ろ手をこすりあげてくる。革と革のきしみ。その奥から少女の熱
さえ伝わって、拘束された手首が跳ね、ずくりと卑猥な腰がとろける。
「こら。先生を発情させて楽しい?」
「えっちなの」
笑ったかなめは、ふと、眉尻を下げた。
「ねえ。みなみは、こんなモノでいやらしい気分になるなんて、変‥‥だった?」
「いいえ。私の負け」
無力透明な音羽かなめの幼い瞳には、どろりと澱み、溶けあう光彩がまじっている。
証明されたのはアームバインダーのいやらしさではなく私のいやらしさ。でもそれで
良いという気がした。
前の彼氏と別れてからの期間も長いし、えろい時期なのかもしれない。
ソレでも良い。
とろりと粘る下腹部の、電池の切れたローターの余韻の、なんと気持ちイイことか。
あと数分、帰宅までこの性感に酔いしれたってイイじゃないと思う。すでに放課後で
さえない。生徒と教師ではない。少女と私は対等に話をしたいのだ。
自分からアームバインダーをくねらせ、少女のお尻をそっとなであげてやる。
「ひゃっ」
「シーッ! どうしたのかなめ、躾のなっていない子ね」
「うぅ‥‥」
信号は青。口を尖らせ、かろうじてよがり声を抑えた少女の横を、学生が通りすぎる。
通りしな、私のコートを舐めまわすように視線が動いた。
ぽかんとした刹那、大きく鼓動が波打つ。
しまった。私いま‥‥!
たわわな乳房は2つとも充血しきり、裏地に擦られて乳首も硬くそそり勃ったまま。
駄目押しのアームバインダーで窮屈に両肩を背後に緊めあげられ、胸をグイッと強制
的に突きださせられていたのだ。
もとより、コート下のジャケットは全開状態。
音羽かなめのラッピングのせいで、かろうじて左右の乳首にコートがひっかかる格好。
2つの横乳は露骨に丸見え、谷間に缶コーヒーをはさめるぐらいぱっつんぱっつんに
火照りきった淫らさなのだ。
「やらしいみなみ。戻ってきた今の子に犯されちゃうかも」
「ちょっ‥‥と、やめて」
ぎりりっと、革の奥で指が引き攣れる。
物をつかむこともバランスを取ることもできない両手。
革で緊めあげられた無様な後ろ手のアームバインダーは、羽をもがれた鳥そのものだ。
アームバインダー先端のリングと首輪を曳きまわされれば、車内であれこういう戸外
であれ、相手を問わず、私は家畜のように這いつくばらされるしかないのだ。
そのリスク。
ひそかな拘束を露呈するリスクを抱えたときの蜜の味ときたら。
背後から駆け抜けていく自転車のきしみにビクッと棒立ち、通行人とすれ違うたび、
対向車に出くわすたび、無意識に肩をすぼめ、カラダをよじって胸を隠しながら、膝
の痙攣さえひくひくと感じてしまいそうに昇りつめながら。
怖い、が、感じる、に変わっていく自分が、なにより恐ろしく愉しみだなんて‥‥
心臓は早鐘のように乱れ、はふはふと犬のように舌を出す。
マンションの入口にたどりついた時、私はため息さえついていた。こんなにも危うい
アバンチュールも、ここで終わりだと感じたからだ。
カンカンとローファーを響かせてエレベーターホールへと向かう。その私の手綱を、
かなめがぎゅっとたぐりよせた。
「待って。エレベーターは、気をつけた方が」
「どうして」
「私たちはこうして手綱でつながっているんです。たくさん乗ってきたら、降りる時
絡まって、2人ともマゾ奴隷だってバレちゃう」
「っ、あ‥‥」
「自分のマンションだからこそ注意して。ここで身バレしたらみなみに逃げ場ないよ」
そう、か‥‥
急速に頬が熱くなり、羞じらいと怖れがかぁっとこみあげてくる。
街中や車内なら、少なくとも逃げられる。でもここは学校と一緒。住人に知り合いも
いるし、教師だって知られてる。ここで目撃されたら、身の破滅なのだ。
気づいたとき、私は膝を丸めてその場でしゃがみこんでいた。
こんな状況で、みんな帰宅する時間に、誰にも見られず部屋に戻るのはムリ‥‥
「‥‥ッ!」
「ちょっと、しっかりして」
かなめの気配がかぶさった刹那、ひゃんと情けない声をあげて私は尻餅をついていた。
柔らかな前歯が、とても卑猥なしぐさで私の耳を甘噛みしていく。
「あとちょっとだから。私でできるご褒美何でもあげるから。家に戻ろう。ね?」
「うん。うん‥‥」
ぞくぞくっとわきあがる甘い誘惑。
もわっとした気分のまま、どうにかバランスをとって立ち上がる。
エレベーターを避け、階段をゆっくり5階まで。ローファーの靴音さえ殺しながら、
狭い階段を縦にならんで歩いていく。もう少し‥‥と、誘うようにお尻をふって歩く
かなめのおかげもあったのだろう。
部屋の前にたどりつき、カギを出そうとして、そして。


『みなみ先生はすごいわね。キーリングごとポーチをロッカーにしまうんだ』
『ここはセキュリティもたしかな名門女子ですし? あと仕事柄、飛んだり跳ねたり
するのに、ポケットに物を入れたくないの。雪衣先生もどう?』
『そうね〜。ま、私は遠慮しておこうかしら。これでもちょっとは小心なもので』


織原先生との会話を思いだす。
そう‥‥保健体育の教諭という仕事柄、私はいつも登校時に家のキーリングはポーチ、
定期や財布はまとめてコートかジャケットに放りこんでいる。
記憶をたどるかぎり、肩がけのポーチはロッカーの荷棚から咥えておろしたきり‥‥
そうして現に、私は何も肩から下げてなどいないのだ。
「う、そ、でしょう‥‥」
わなわなと、躯がコートの最奥で震えだす。恐怖と、マゾヒスティックな焦りから。
忘れた理由は単純。あの時ポーチを引っぱりだした私はそこで安心してしまったのだ。
へたへたと腰が抜け、しゃがみこんでしまう。
学校の閉門は9時。以降は警備員以外は入ることができない。つまり、明朝、学園に
向かうまで、私はアームバインダーに囚われの我が身をどうすることもできない。
もっとも安心できる自宅。
そんな場所まで、少女ごと、緊縛を施された裸身を引き廻しておきながら‥‥
カギが届いているはずの、その家の中にたどりつくことができない‥‥だなんて‥‥!
「ぃゃ‥‥そんな、そんなのイヤァ‥‥ん、ンァァ」
「ひむっ」
どうしようもない絶望感にかられて絶叫する口唇を、パニックに陥った私を、瞬時に
音羽かなめが奪いとる。ほとんど無理やり上からかぶせるように舌がひらめいて進入
し、悲鳴をあまさず吸いつくす。
どろりとした唾液。甘い蜜をくちゅくちゅと攪拌し、少女の甘露が私を犯してゆく。
ぅあ、ダメ‥‥
こんなに優しく虐められたら。抜け道なしだって、一巻の終わりだって分かっている
のに‥‥ぐずぐずに溶かされちゃう‥‥!
こんな縛られっぱなしで、献身的に尽くす少女に何も返せないのに。
惨めまま気分だけが昂ぶって、浅ましくオーガズムをむさぼって、腰が、下腹部が、
勝手にひくついちゃう‥‥!
へたりこんだまま、上から唇に蓋をかぶせた少女に至近で見つめられながら。
じわぁっとスラックスに広がる、失禁ではない本物の快楽の蜜を放心して感じながら、
マンションの廊下にいやらしい滲みを作りはじめていた。



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