黒く艶やかなる獣の檻 その11

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音羽かなめについて知っていること。
年齢。クラス。身長は142センチ。成績はやや上位。ローティーンだが芯が通っており、
寡黙で曲げない性格。一人っ子。母は不在で、父に育てられてきた。今は叔父方から
学園に通う。
怜悧な瞳はいつも淡い。
発育途上の未成熟さは、無力透明で、か弱く、もろい。
腰まで弾むポニーテールは、丁寧にケアされていて滑らかに光を放つ。
はかなげに丸みをおびた躯のラインとほっそりした肢体は、あどけない新入生のもの。
淡々とした面立ちを重ねると、たしかに、倒錯的なロリータだった。
演劇同好会の、現役部長には見えない。
今だってそうだ。
少女は、少女自身の望み通りに、拘束の悦びを噛み締めている。
アームバインダーなどという無骨な革具に上半身を姦されながら、凛と背を伸ばす。
発情した肢体をつつみこむ、したたる愛液でへばりつくニーソックスとセーラー服の
トップスのみに剥きあげられている。紅潮した水蜜の肌と黒ずくめのコスの対比は、
目を奪われるほど蠱惑的だ。
あふれだす羞恥の泉こそ、官能のヴァルハラそのもの。
年齢相応な、無毛のクレヴァスを残酷に革ベルトが割りさいて、入るはずもない成人
サイズのディルドウの底が、窮屈そうにドテからはみだしている。
子宮口をこづいているのではと不安にかられるほどの深みまで拡張されてしまって‥
‥‥すべて、童女自身が自分の手で施した縛めのカタチなのだ。
今にして理解する。
なぜ、電車内で、貞操帯に引っかからず痴漢にショーツを脱がされていたか。
音羽かなめは、最初から自分で貞操帯を装着し、その上にショーツを穿いて今日一日
を過ごしていたのだから。
こんな彼女の行為を見せられて、そら恐ろしい戦慄をおぼえる。
大人びている、とさえ言いがたい。まるで犯罪的だ。
どれだけ、私が、音羽かなめを知らないか。
そもそも私はただの部活の顧問だ。かなめとの思い出を共有しているわけでもない。
学園の父兄には聞かせられないが、教師からすれば、1年ごと百人単位で入れかわる
生徒を完全にインプットなどできない。
少女の闇をのぞきこんでしまったことに眩暈をおぼえる。
にも、かかわらず‥‥
言いしれぬ気品に打たれ、息をつめたまま、彼女から目をそらせずにいた。
昂然とうなじをそらして天井をふりあおぎ集中しているポーズに、見蕩れていたのだ。
浅ましい下腹部を剥きだしのまま。
肩幅に下肢をわりひらいて、エスケープアートの感触に没頭する少女のありように。
年端も行かぬ女子生徒が、不意に、大人さえおどろく妖艶さをみせる。女子校とは、
そういう場所だ。
だから、思いもかけず期待がこみあげる。
これだけ絶望的な施錠を施されていながら、なお気高さを失わない少女に。ムリだと
折れた心が悲鳴をあげてしまう‥‥だからこそ、だ。このプレッシャーにたちむかう
彼女こそ、完璧な縛めから逃れられるのでは、と‥‥
ギシリ、と。
くるおしく革鳴りを軋ませ、少女のエスケープがはじまった。
鋭角に折りたたまれ、密着どころかこすれあう肘同士が、はためにも悩ましい。
ピンと揃えられたアームバインダーの先っぽ、手首のつけねがグッとねじれ、鎌首を
もたげながら、何度ものけ反っていく。
婀娜っぽく後ろ手を、腰を、うなじをひくつかせるローティーンの仕草は扇情的だ。
ひどく疚しい動悸がたかぶっていく。
「んっ、ンク‥‥」
とぎれとぎれに、愛らしい吐息を音羽かなめがこぼす。
まるでアクメに溺れているかのよう。
ビチビチと後ろ手の革袋を軋ませ、細身の躯が、果てしなくよがっていく。
谷間未満の胸をくすぐり、鎖骨を撫で、くりかえし弧を描いてアームバインダーへと
ふりそそぐポニーテールは、躍動的な音羽かなめの身悶えそのものだった。
瞳の奥に意志を沈め、ひたすら革の味を噛みしめていく。
ひくひくと痙攣し、食い込みをたしかめ、大きく腰をいざらせる。ロデオの暴れ馬の
ように上体をかがめ、革紐に束ねられたきゃしゃな後ろ手を何度も跳ねあげ、左右に
振りまわす。
ラチェットを緩めた拘束具のジッパーは、しかし、ゆるむ気配さえなかった。
何度も肩を上下させ、食いこむベルトにあらがって身悶えてはいるが、それだけだ。
――掛け時計のまわる秒針が、焦りをつのらせていく。
何を、待ちわびているのだろう。
彼女自身、ひとりでは不可能だって、そう言ってなかったっけ。
どうあがいたって、外側から施錠された革拘束を緩めることは、構造上できないのだ。
「か、かなめちゃん‥‥」
音羽かなめは頬を火照らせ、官能的に悶えつづけている。
それ自体が快感をもたらすのだろう。
激しく身じろぐほど、股間の貞操帯は深くきわどく少女の秘めた部分をえぐっていく。
不自然なに肩をよじらせ、なまめかしく鎖骨を浮きたたせるばかり。
「ムリよ、こんな‥‥もう‥‥ダメよ私たちは‥‥」
屈服、してしまう。
全身を締めあげる、お似合いの奴隷のシンボルに‥‥服従してしまう。
思いつく手なんてない。頭が真っ白になっていくだけ。このまま2人よりそって眠り、
明日、学園に向かうしかない‥‥このカラダのままで。疲労だって限界だ。汗だくの
革拘束を味わいながらの、最後の登校になるだろう。
朝もやの中、露出緊縛の裸身を疼かせながら好奇の目で犯されつづけ、破廉恥な露出
行のはてにつかまり、教師としての人生も終わる‥‥。
「んっ」
ぞくぞくっと妄想に煽られ、瞬間的にアクメに達してしまう。
一度きりのあやまちを思う躯は、しかし、恥ずかしいほど溶けていた。まるでマゾだ。
革の縛めにねじふせられ自由を奪われる切なさに、ムリヤリの刺激に、妄想の悦びに、
教え子の手で目ざめさせられた。
そして今はそのご主人様‥‥ではない、奴隷の先輩さえ、同じ従属の悦びをむさぼり、
希望のかけらさえみあたらない。
「ンフ、あァ」
甘く声をひそめる音羽かなめにたえきれず、うつむいてしまう。
教師らしからぬ判断の甘さで、自分の人生も、彼女さえも、巻き込んでしまう‥‥
伏せた目の端でばさりと何かが落ち、ぼんやり顔をあげた。
少女の、右肩のストラップが、外れている。
なぜ?
一瞬、混乱した。あんなに固く食い入っていたはずなのに?
見れば、残った左側のストラップも首のそばから腕側に寄り、肩からズリ落ちるのも
時間の問題だ。
ぞくりと、純粋な慄きが、背骨を這い上がっていく。
トリックがないのは触れあった私自身が証言できる。あれは完璧にきゃしゃな鎖骨に
食いこんでいたし、脱出の糸口さえなかった。
なかった‥‥はずなのだ。
セーラー服に絡まり、へばりつく革ベルトを、テクニックだけで肩から外すなんて。
よく見れば、背中で弾ませていたアームバインダーとラチェットを結ぶ革紐もかなり
たるんでいる。これなら、ジッパーを引きおろせるかもしれない。
「っく、ン、ふァッ」
地道なエスケープの努力の末に、少女は縄抜けのきっかけをつかんだ。
汗を飛びちらせ、怜悧な瞳をきゅっと閉ざして、内側に没頭したまま、裸身をつつむ
革の伸縮具合を把握していく。
さらに数分、苦悶のはてに左のストラップも落ちる。蛇のように後ろ手をもぞつかせ、
内側からの圧力で数ミリずつジッパーを引き下ろす少女を手伝いもせず、私は、この
パフォーマンスに圧倒されていた。
はっきりと、言葉にしてはならない声を、頭のなかで思ってしまう。


私は、音羽かなめが、おそろしい。
もし対等であったなら、この子には、絶対にかなわない。きっと。


ほっそりした愛くるしい肢体は、のたくるヒュドラに変わっていた。
痴漢を撃退した手並みも。拘束馴れしている仕草も、エスケープアートの技術さえ、
この年頃の女子ができて良いレベルではない。まるで、毎日だれかに調教されてでも
いるかのよう。
不吉な思いを、ふりはらう。
違う。あれができるまで、きっと猛特訓したに違いない。そうなのだ。だからアーム
バインダーはSMの道具といわれて音羽かなめが怒りをあらわにした理由も、それな
ら納得できる。
「先生‥‥せんせい?」
「‥‥」
「センセ。みなみ先生? だいじょうぶ?」
呆けた私を揺り動かす手に、がくがくと首がかしぐ。
ついで、肩を手でつかまれている事実に気づき、ようやく意識をとりもどした。
南京錠の鍵をかざして、音羽かなめが微笑んでいる。
のろのろ顔を起こすと、いつのまにか、寝室のベッドにうつぶせで沈みこんでいた。
少女が馬乗りになり、カチャカチャと最後のベルトを外していく。
無数の編み紐を少しづつゆるめられ、ゆっくりと、後ろ手が解放されていく。外気が
腕をくすぐり、半日近く私を虐めぬいたアームバインダーの感触がなくなり‥‥
ようやく、私は長々と呼吸を吐きだした。
腕の感触がにぶく、動かない。
大丈夫だよと、手馴れた手つきで音羽かなめがマッサージしはじめる。
汗ばんだ躰をバスタオルでぬぐわれ、両腕から肩そして背中へと小さな手で揉みほぐ
していく。気づけばショーツは脱がされ、貞操帯も外れていた。生徒に全裸をさらす
気恥ずかしさを、そしらぬふりでやりすごす。
「サービス抜群ね」
「ふふ。ね? ちゃんと脱出しましたよ。見てて、くれたよね」
「ええ‥‥すごかったわ。あれは私じゃムリ。負けたって気分にさえなったもの」
「ふふっ」
疲労でやつれているはずなのに、褒められてよほど嬉しかったのだろう。輝く笑みを
こぼし、愉悦にきらめく少女の瞳が迫ってきた。
「でね? ちゃんと自由を取り戻してあげたから、約束、守ってね」
「やく、そ、く?」
ぞわ、と心がおびえ、動揺する。
今羽かなめの透明な瞳の底に、どろりとした、妖しい翳りがやどる。
腕も、躯も、しびれきって自由が効かない。まだ身動きさえままならない私は、ただ
凝っと、観念して少女の宣告を待つ。

「忘れた? それだと、お仕置き、しちゃうよ、み・な・み(・・・・・)」

「‥‥ん、と」
「エスケープアートの直前に言ったわ。もっと‥‥‥‥続き、してくれるんでしょ?」


               ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥


黒々と磁力を放つポニーテールを垂らし、音羽かなめが横顔をのぞきこんでくる。
きゃしゃな肩ごしの掛け時計は夜10時を指していた。互いの呼吸だけが部屋をみたす。
沈黙は、意志を表明するもの。なら天使の通りぬけた寝室で、私はどうしたら良いの
だろう。
近すぎるほどの顔。色づいた唇さえ、すぐ奪えそうだ。逆も、また。
「かなめの瞳。綺麗ね」
「みなみ、ったら」
みなみ。
みなみ、みなみ、と。
何度もくりかえされた呼びすてが、いつのまにか教え子と私を対等にさせる。元々、
あの拘束のさなか、彼女をからめとるために示した親愛の情。それがここにきて違う
意味をおびつつある。
気づけば、のしかかった少女の指先がやわらかく裸の背を這いまわり、しとどに汗ば
んだおっぱいを脇からつついていた。
ぞわぞわ、と背筋をくすぐる戦慄は嫌悪感なのか。それとももっと甘い記憶、なのか。
おそらく音羽かなめはすべてお見通しのはずだ。
長時間の拘束になれていない私の心身が疲労し、抵抗できないカラダであることを。
今の私が少女にさからえない人形と同じだということ‥‥そして、私自身がそこまで
考えをめぐらせていることまで、すべて考慮済みだ。
「そうね」
ゆっくり、言葉をくぎって語りかける。
方向をそらすしかない。私は音羽かなめの言いなりではないのだ。
「出来の良い、言いつけにしたがう教え子に、ご褒美をあげるのはやぶさかでないわ。
でも‥‥」
「うふふっ。『やぶさか』だって。古い言葉。みなみってちょっと男性的な(ヒト)だよね。
ううん、中性的って言った方がいいかな」
だが、あっさり見抜かれる。
リードしかけた会話の手綱を、たやすく奪われてしまう。
「‥‥褒めているようには聞こえないわ」
いいえ、と音羽かなめはかぶりを振り、潤んだ頬をそっと擦りよせてくる。
「だって。先生に、恋しちゃってるかも」
「あら、そう」
「先生はとても女性的で、柔らかいのに、芯にはすごくまっすぐなところがあるの。
とても、私ごのみ」
それ、は。
音羽かなめへの私の評価、そのものではないだろうか。
「きっと似たもの同士、かもしれない。でも、先生にはとても脆いところがあるわ。
それが、愛しいの」
「あらあら。恋しいから愛しいまで、一気に2段階アップね、嬉しいわ、私のかなめ」
「お慕い申しておりますわ、私の、みなみ」
じゃれあいだと。
女子校にありがちな擬似恋愛だと、女の子同士のふざけあいの範疇と、割りきっても
よいのだろうか。
私は、残念ながら、そこまで無邪気ではいられなかった。
乳房を揉みこまれながら、少女を思う。
ここまでの疑問や気がかり、小さな気づきがカタチを結んでいく。なぜ吉川女史では
なく私が選ばれたのか。なぜ最初からカギを郵送できたのか。今日に限って、なぜ、
あんな忌まわしい貞操帯を着用していたのか。
「ええ。かなめには、ご褒美をあげないと。ね?」
「‥‥」
待ちわびて、けれど淡い面立ちのまま、かなめが私を見つめる。
「でもね。私、自分の恋人には一つだけ要求することがあってね。聞いてもらえる?」
「‥‥もちろん。みなみの言うことなら、なんでも」
あえて『彼氏』ではなく『恋人』と言ったことを悟ったのだろう。音羽かなめが身を
のりだしてくる。あえかな吐息に希望と不安をはらませる。その一瞬だけは、年頃の
女の子そのものだ。
「私、ウソをつく子は、嫌いなの」
「‥‥え?」
思いがけない返事だったらしい。意外にも、すばやい切り返しもできず音羽かなめが
ポカンとする。
「どう、かなめ? すべて、予定どおりなのかしら」
「あ、っと。その、何が、ですか?」
「決まっているじゃない」

「私の調教具合よ。かなめの思い通りの奴隷に仕上がってきてるかしら(・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・)、私。合格?」


にっこりと、声を失った音羽かなめに笑いかける。
おそらく、この憶測は正しい。
音羽かなめは最初から、アームバインダーを見つけるべくして見つけさせた。教師の
あいだで議題にあがり、生活指導の主任から部活顧問の私へと話が降りてくるよう、
すべてが計算づくだった。
私を仲間にひきこみ、エスケープアートの劇中劇を実現させる。それは表向きの理由。
むしろ、調教器具としてのアームバインダーにたっぷり私を馴れさせる。そっちこそ
が真の目的だったのだ。
最後のエスケープこそ、想定外だったかもしれない。
それでも、半裸のまま拘束された私を曳きまわし、露出緊縛のスリルと奴隷の緊張を
たっぷり味わわせ、Mの悦楽に目覚めさせるたくらみは、ほとんど達成しかけている
のだ。
瞳に強い光をはらみ、音羽かなめを見つめかえす。
彼女のもくろみが分かった今、どう返されても押しきれる自信がある。これでも教師
なのだから。むしろどう反応がかえってくるか、興味は尽きない。
シラをきるだろうか。
そらぞらしく泣き崩れるだろうか。
それとも、開きなおって、そのしたたかな本心をさらけだすだろうか。
――いずれも違っていた。
「あ、うぁ、その‥‥みなみは、そんなに気持ちよかったの? 調教されちゃうかも
って心配するぐらい」
ゴメンね、と。
音羽かなめは、声を曇らせて謝ったのだ。
ぎゅっと一度、柔らかく、でもしっかり裸の背中ごしに抱擁してくる。微熱をわかち
あう。まるで本心から気づかってくるまなざしに動揺し、心が乱れた。
どういうこと?
私が邪推しすぎていたとでも? 偶然の結果だと? いや、それより何より。
なんて――かわいいんだろう。
そろりそろりと、繊細な手が私の頬をなぞっていく。
「大丈夫? 顔赤くなってるの、気にしないで。私もだから。いっぱい感じちゃって
何度もイってたもの。みなみに見られながらエスケープしてる最中だって‥‥ほら、
こんなに。ね?」
音羽かなめが、うつぶせの私の前に回りこんできた。まるだしの下半身を喰い締める
残酷な貞操帯を解錠する。
においたつ‥‥という表現が比喩でもなんでもなく、もわっと少女の性を凝縮した匂
いが鼻をつく。どろんとしたたりだす透明なねばつき。革ベルトの束が垂れさがると、
数ミリずり落ちたきり、ディルドウとアナルプラグは少女の体内にきっちり埋まった
まま停止した。
咥えこんだ肉の合わせ目がはっきりのぞいている。
拡張された秘裂に根元まで呑みこまれて、それ自身の重さだけではもう、あどけない
クレヴァスから抜き取れないのだ。
「あ、はっ」
軽くイキかけて恍惚となり、半笑いに涎がまざる。
私に見せつけてから、んぐ、と喉をならし、貞操帯をずりあげた。縦のベルトが完全
にお尻の谷間に隠れるまでキュキュッと梳きあげ、施錠する。
本物のバイブを抜き差しする仕草は卑猥すぎ、むさぼるように見つめてしまっていた。
だから、ね?
音羽かなめが、うっとりした瞳でささやきかけてくる。
いつのまにか声は極小に絞られ、ひとことも聞き逃せない私は耳をそばだてていた。
どういうことだろう。あれほど無色だった音羽かなめが、今は、はっきり、橘みなみ
色に染まっている。
私に、スキだ――と、訴えかけてくる。
「すごいでしょ、この快感? 先生だってまだ物足りないはず」
「ち、ちが‥‥私は、別にっ」
「いいの。こんなこと、堅物の吉川先生じゃ聞いてくれないもん。みなみセンセなら
キレイだし、一緒に感じてほしいって」
少し上ずった音羽かなめの誘惑が、耳朶をこそばゆく撫でていく。
やっぱりね。知的な人ほど、SMに嵌まるらしいですよ。想像力のプレイだからコレ。
だから私、みなみセンセなら分かち合ってもらえるかなって思ってた。
躯も柔らかいし、触っててうっとりしちゃう。
‥‥そ、れ、に。
音羽かなめの声音に、まえぶれもなく悪戯っぽい小悪魔がやどる。
「どっちにしたって先生、抵抗できないですよ」
「あっ、や、イヤ」
「ううん。本当は嫌じゃないの。私と同じ。カラダが疼いてる。でもためらっちゃう。
ご褒美のつづきをするのが怖いって、思ってる」
そーっと、頭を撫でられる。まるで安心させるかのようだ。
ようやく欲望に素直になった私のことを褒めながら、優しく撫でていく。暖かい感触
にうっとりしかけている自分を、どこか変だと思う。
でも、不快ではない。
音羽かなめを拒絶する気にはなれない。最初からそうだった。今もそう。
だから。
「だから、みなみ先生は受け入れればいいんです。私を」
「それじゃ、ごほうびの順序が逆よ」
「ううん。先生は律儀だし、私にごほうび下さるでしょう? 私もソレが欲しいの。
だから、ね? みなみ先生は、ただじっとして、教え子の手でむりやり縛り上げられ
ていくシチュエーションに酔っちゃえばいいんです。だって抵抗できないんだから」
「ムリヤリ‥‥?」
「ええ。私の好きにされちゃうの。いっぱい可愛がられてくの」
ささやかれれば囁かれるほど、革拘束の苦しい圧力から自由になったはずの股間が、
解放された躯がちりちり火照り、甘くしびれていく。
「今夜だけは、ずうっと年下の、教え子に、いろいろされちゃうんですよ?」
「んぁっ、イイ‥‥っ!」
かぷり。
耳の裏を甘噛みされ、浅ましくも本気で自失していた。
ひくんと、電流めいた官能に下半身を溶かされていく。ぬるぬる唾液をまぶされる。
耳たぶをぬぐおうと伸ばしかけた手を、そろっとつかまれた。
音羽かなめの淫靡な手が、だらんと力の抜けた私の腕をなぞり、するするっと指先に
からみつく。
右の手には右手を重ね、左手に左の指をからませて背中へ引き寄せる。
お尻のうえあたりで、手のひら同士を重ねるよう密着させられた。手首のつけねで、
きゅっと小さな革紐が一巻き、まきついてくる。
どくん、と心臓がとびあがった。いま。今しかない。この先も自由でいたいなら。
ここで動かなきゃ、私、また‥‥
もし、ちょっとでも強引な動きや、力まかせの束縛があれば、躯は反発してただろう。
少女の手さばきは違った。あくまでいとおしく慰撫され、導かれていく。
力を入れてムリヤリされているわけじゃない。
少女は右手で革紐をゆるく持っているだけ。左手は、私のお尻の谷間へ伸びていく。
だから、いつだってふりほどける‥‥逃れられる、はず、なのに。
「こんな機会、きっと、二度と、ないよ?」
「あ、はっ、う‥‥」
「普段のみなみセンセなら、私が3人いたって負けるもの。今夜、今だけです。私が
みなみの躯に、私好みの感じかたを教えてあげられるのは」
つつうっと、少女自身オナニーにふけるかのように、小さな爪の先がお尻にもぐり、
もっとも過敏な戸渡りの部分を、クレヴァスめざして這いずっていく。
う、ぁ‥‥
こんなに、私、かなわない‥‥
顔をシーツにうずめ、快楽を、くいしばる。感じてると知られたくないから。
今‥‥イってる、のに‥‥ィ‥‥!?
パチリと乾いた音がして、おずおずうなじを傾ける。
ちらと見えた光景にドキっとなり、顔をさっとねじむけて知らんぷりをした。
たわわなお尻に載せられた後ろ手を、アクセ風の小さな革紐で括られてしまっている。
細い革紐を、バックルを通して留めただけの単純な拘束。
なのに、これだけで下半身が疼きだす。
拘束はぴっちりしてて、手首をひねるのもムリ。バックルは手の甲の真上で、だから、
もはや、自力ではほどけない。
苦しさや違和感はないのに、指先が絶対に届かないから、ムリ、なのだ‥‥
「‥‥っ、っは、ン‥‥」
ここで抵抗しないで、いい、のだろうか?
あれだけ怯えていたプレイの続きを少女に求められ、さからわず従順に犯されていく。
ぎりぎりでのせめぎあいも、駆け引きもなく。
ただ、童女に誘われるがままに。
下腹部をさわられ、うながされて腰を浮かした。
なにやら巻きついてくるベルトの感触を、意識して頭から追いだす。
「ねえ知ってる? ここまで私、ずっと約束を守ってます。先生には何もしませんて
いう最初の約束」
「‥‥あ」
「だから、これは、先生が望んだこと。先生がウンって言ったら、次をしてあげる」
夕暮れの部室がフラッシュバックする。
そういえば、最初にアームバインダーを着せられる前、私は彼女と約束した。
私が嫌がることはしない。
そう言った彼女の台詞は、皮肉にも守られている。
守られて当然だ。だって、ひどいことをされた私自身が、少女のすべてを受け入れた
のだから。
半裸で引き回され、おかしな器具にお尻を虐められ‥‥後ろ手に括られて‥‥
首輪でつながれたまま電車内で痴漢に嬲られてしまった‥‥
ぞくっ、ぞくっとわきあがる反発の思いを、あやすようにして無意識に沈めていく。
たしかに私は教え子に調教されているし、このまま、されてしまうのだろう。
でも、無自覚ではない。
その快楽さえコントロールできると思って倒錯した刺激に身をゆだねた、やんちゃな
心もあるはずなのだ。でなければ、理由もなくアームバインダーを着せられたりする
はずがない。
‥‥今、この瞬間に。
またしても、細く絞りこまれた獣皮の檻に、上半身をゆだねかけているように。
手首を革紐で括られたその下に、音羽かなめがさっきまで身にまとっていた皮革製の
アームバインダーをさしこまれる。少女のぬくもりを残した革の肌ざわりが、背中を
くすぐっている。
「これが、私からかなめへのごほうびだって言うの? 逆じゃないかしら」
「いいえ。みなみと一緒に、さっきのつづきをしたいの。その‥‥キス、とか」
キス。
ほんの半日で、もう回数も忘れるくらい何度もくりかえした。
少女の唇の柔らかさ、ついばむ前歯の感触、舌の味さえも完璧にインプット済だ。
けれど。
「キスするためだけで、また、かなめの手で縛られてしまうなんて‥‥」
「嫌じゃないのよね。私の、みなみ」
「ひどい、わ‥‥」
自分のおかれた状況を口にすると、それだけでひりひりと下腹部が熱くうるみだす。
「そういうこと。だから、ごほうび、私にくださいね。先生」
反則の笑みだった。
怜悧でガラス細工の瞳が、嗜虐の愉悦にとろけ、私にだけ微笑みかける。
抵抗しない私の反応に満足したらしい。音羽かなめの手がせわしなく裸身を這いまわる。
さっきとは違い、彼女自身がそうしていたように、交差させずに両肩へストラップを
掛けていく。
その絞り方さえゆるやかで、ジッパーもだらんと口をあけたまま。
動悸がじわじわ昂ぶっていく。また、再び、不自由な枷に閉じ込められてしまうのか。
「さあ。最後は、自分でできるでしょう?」
「‥‥え?」
気づいた時、私は部室での音羽かなめと、ほとんど同じ状況下におかれていた。
アームバインダーの背面を開いて、ベッドの縁に座っている。
違うのは、膝を折りたたんだ右足を、スラックスのベルトで更に拘束されてること。
足首と太もものつけねに喰いこみ、窮屈に絞り上げられている。もう立つこともでき
ず、よちよち膝行するのがやっとだ。
「最後、自分をアームバインダーに閉じ込めるのは、みなみ自身でやりなさい」
「――ウソ、でしょう」
いきなり心臓が大きく跳ねた。バクバクと、狂ったように暴れだす。
全部、音羽かなめにしてもらえると思っていた。
それならあきらめもつくし、部室のときと一緒で、むりやり彼女に強いられたのだと
正当化できる。
ジッパーから壁のフックに結ばれた糸を泣きそうな目で見つめる。
これでは、言いわけもきかない。私自身が、望んでマゾの拘束を受け入れるのだから。
「や、やっぱり怖い。私、そこまでしたいわけじゃ‥‥」
「だ〜め」
今度は大丈夫。絶対に、大丈夫。ね。
私が万が一のフォローにまわりますから。なにも、危険、ないですよ?
それに、と音羽かなめが妖しく呟く。この方が、絶対に、気持ちイイですから。それ
だけは保証します。
‥‥かなめの台詞のどこに誘い込まれたのか。
ぎゅうっと上半身を屈め、壁かけのフックにつながる糸を思いきり引っぱっていた。
ずるるとジッパーが動きだし、みるまに手首を狭隘な袋の中へギリギリ閉ざしていく。
だが、勢いが足らない。
密着させた両肘の少し下あたりで、糸は限界まで張りつめてしまった。この体勢では
これ以上ジッパーを締められない。困惑してカラダを揺すりたてる。
「それじゃ気持ちよくなれないよ、私のみなみ」
「やっ」
‥‥心を見透かす、台詞だった。
直截に煽られて、背筋がつっぱってしまう。
思いきり、最後までひとりでイききらないと。そう、そっと耳たぶに囁かれた瞬間、
無意識に躯がびくんと跳ねていた。
「うぁ、っ‥‥ク!」
不自由な右足ごと、ベッドの端から落下する。
刹那の解放感。ほんの数十センチの段差がこんなに遠いとは思わず震えあがり、さら
に、一瞬のブランクののち。
ジジジジッ!!
激しく一気にアームバインダーの口が締まり、背中の両腕をそろえて伸ばしたまま、
あっと思うまもなく、最上部までジッパーが引きあげられていた。
ブチッと糸が千切れ、右足が床に落ちる。
秒もかからない、ほんのわずかのアクション。けれど、その前後の変化は劇的だった。
「あ。うぁ、あ‥‥っふ」
クールボブの後ろ髪をかたむけて、拘束具合を確認するまでもない。
柔肌から感じとる圧倒的なくるおしさ。
ぎりりっと裸身を押したわめる独特の革ざわりが、自身に引き返しのつかない拘束を
施してしまったのだと実感させる。
淫らな自縛プレイの羞じらいがわきあがってくる。
がくがくっと裸身が弾み、痙攣するまま、シーリングをふり仰ぐ。
‥‥弓なりにそりかえったあごを音羽かなめにつままれ、強く、唇をふさがれていた。
「ン、んくっ、んっ」
「むぅ、ンー」
何がなんだか分からず、天地上下がひっくりかえったまま、少女の味蕾にすがりつく。
天からそそぎこまれる甘露にむせかけ、けれど唇を放してもらえず、苦労して飲み下
していく。
お尻のすぼまりも、物欲しげなクレヴァスだって犯されてるわけではない。
ただ拘束され、キスをせびられているだけ。なのに。
ねっとりした少女の唾液がたまらなく下半身を疼かせ、アクメへ昂ぶらせていく。
何度もバネ仕掛けの背中が跳ね、瞳が焦点をうしなった。
イって、まだイって、気づくとまだ愛されている。にげまわる舌の先のさきまで縛り
尽くされて、これ以上ない無力さにビクビク震えてしまう。
音羽かなめとの今までで一番被虐的。そして、一番官能的なディープキスだったろう。
口腔を解放されても、しばらく、人の言葉が出せなかった。
「あー。え、あ、ぅあ‥‥」
「うふ。お楽しみ真っ最中ね。いいわ。可愛いみなみ」
彼女に肩を借りて半身を起こし、どうにかベッドに横たえてもらう。
ゆるく気だるく淡い絶頂にひくつく私に馬乗りになり、少女が伸ばした両手に何かを
つかんで顔へ近づけてきた。
「さ。あーんして」
外見から、革のマスクらしい。中央に金属の大きな輪が取りつけられている。
こんなものまで通学鞄に入れてあったんだ‥‥
本来なら働く警戒心は、このとき、まるで電源が切れたように無反応だった。思えば、
この時点ですでに詰みになっているのだから。
「な、何よソレ‥‥聞いてない」
「もっとごほうび、欲しいでしょ? みなみってば」
いまさら何をいやがるの、とうっすら微笑まれては、断りようなどありはしないのだ。
おずおずと口を開く。けれど全然大きすぎ、金属の輪が入らない。思いっきり、特大
ハンバーガーにかぶりつくみたく、あごが外れそうなほど口腔を解放する。
「ん、あ、うぁっ、ム、ンンンーッ」
んぐぐっと、なんの遠慮も躊躇もなく、鉄の枷は私の口内に侵入してきた。
リングギャグって言うのよ、などと自慢げな少女の声など耳を素通りだ。どうにか、
上下の歯でしっかり鉄のリングを噛みしめ、意外に深いその輪っかから舌をだらんと
さしのべる。というより、そこしか舌のおき場所がないのだ。
「うん。似合ってる。えっちいね。今のみなみ」
「ぃあ」
はじめてアームバインダーを着せられた時のように、音羽かなめと頬を密着させて、
顔の下半分を覆う革マスクを後頭部でむすんでもらう。たくしあげた髪を戻す指先が
やんわり首輪をなぞっていき、被虐的な愛撫に躯がしびれた。
「うふふ、どうしてくれようかな。みなみのごほうび、味わうには‥‥ね?」
「えあぁ」
舌をやんわり指でつままれ、幼児そのものの舌ったらずな返事をかえす。
まさに会話の自由さえ奪われて、私はただ、音羽かなめにイかされるだけの存在だ。
その指で。舌で。からまりあう肢体で。そして‥‥?
いや‥‥
そもそも、なんでこんな事になっているのだろう。
「‥‥‥‥‥‥」
「ん? どうしたの、みなみ?」
いつもの思索が、霞んでいたもやの向こうから徐々に戻ってくる。
そもそも、2人同時の破滅をのがれるため、ご褒美を約束したのではなかったか。
それが気づけば甘美な焦らし責めのはて、教え子の少女はすっかりスカートまで履き
なおし、女教師だけが、より苛烈な革拘束にその身を緊め上げられ、灼けつく快楽の
予兆に一人、よがりきっている。
だって、そんな‥‥どうしてこんな、ことに‥‥?
「ひょっ、はなめ、ひゃ‥‥ン、なんへ、私、こんなほほ、ひィ?」
「もー。みなみ、何しゃべってるか、分かんない」
こんな、莫迦な‥‥
拒否権さえも、拒絶の言葉も中止のお願いさえできない躯にされてしまって。
生殺与奪のいっさいを奪われた私を、音羽かなめはどうやってイかせようというの?
その答えが。
彼女の通学鞄から、ずるりと引きずり出される。
「じゃん。コレ、私がしてるのと対のアタッチメントです。双頭ディルドーって言う
らしいよ。女の子同士で、一つにつながるとき、使うの」
「ひぁぁあ、イアア!!」
恥も外聞もなく、私は絶叫していた。
どろんと取り出されたソレは、あまりに長くて、太くて、しかもヒダが生々しい‥‥
女をイき狂わせるため考案された、破廉恥なセックスの道具なのだ。
あんなので、かなめに犯されたら。
私きっと、おかしくなっちゃ‥‥絶対に、ダメ‥‥ッッ!
「ああ、あまり大声出すと不審に思ったマンションの隣人が来ちゃいますよ? 警察
呼ばれちゃうと大変じゃないですか‥‥特に、みなみが」
「ぃえ、うっ、ンふ、っふ‥‥」
ぎょっとして尻すぼみに声が消えてしまう。
ハァハァと舌を荒げ、乱れた呼吸も直せずにベッド際までいざって逃れていく。
「嫌なんだ。みなみは、こういうの」
「ン、んんッ!!」
必死にぶんぶん首をうなずかせる。私が嫌がることしないって言ってくれてたよね?
そうでしょう、かなめ!?
「んー。参ったな。だって、これ以外は全部電池切れで‥‥あ、そうだ」
「にゃ、に? かなめ、ひゃン?」
やっとの思いで後退したベッド上の十数センチをやすやすと詰め、音羽かなめがギシ、
とのしかかってくる。小柄な体が、今は女王様そのもの。縮こまってしまう。
「思いついたの――イイことを」
ほんのりと‥‥あるきかなきかの笑みをのぼせて、音羽かなめは一つの提案をした。


               ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥


バタンと、玄関のドアが閉ざされる。
熱に浮かされた狂騒は、音羽かなめとともにドアの外へ吸い出されていく。
そして‥‥静寂。
二度目の沈黙と無音は、永く、深かった。
私は呆然となり、なにも考えられず、ベッドで膝立ちのまま上半身を起こしていた。
『みなみと私で、賭けをしましょう。ゲーム、ね』
すでにゲームは始まっている。
賭けの対象は‥‥いうなれば、私の貞操そのもの。
少女に凌辱されるのがイヤならば、私は、リミットの十数分までのあいだにノルマを
クリアしなければならない。
この、二度目の拘束ゲームは、自縛遊戯は、私だけのものだった。
食いこんだ革ベルトを、痛いほど意識する。
かなめのぬくもりを残した首輪が、今は2重に私のうなじを捕らえて締め上げる。
さっきより更に狭隘な、逆三角形に尖ったアームバインダーが、肘どころか、はるか
上までビッチリ絞り上げていく。
股間に、貞操帯もどきまで装着されてしまって、私には選択肢などないに等しい。
悔しいことに、私をからかう少女の責めの文句は、すべて正しかった。
たった半日前には想像つかないほど‥‥
理不尽かつ絶望的な拘束を施されている事実に、私は、女の部分を濡らしてしまう。
たまらなく気持ちイイのだ。この絶望と焦燥感が。
もう、後戻りはできない――



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