馴致 その1

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おぼろな意識が、惑乱した理性が、私を支配していた。
仄暗い自室の壁に、鏡写しとなったいやらしい裸体が映し出されていた。
週末の夜。静かなマンションの室内に、妖しく声が響く。
『これでもう、早紀ちゃんは絶対に、縄抜けなんかできないわ。注文どおり‥‥』
『ん、ッッ』
甘く、低く、ご主人様の声がねっとり耳朶をあやす。
それだけで一糸まとわぬ私のカラダは波打ち、快楽の記憶に震え上がっていく。
SMバー『hednism』での一夜。
女性バーテンを利用して実際のリアルな緊縛を味わおうとした私は逆に罠にはまり、
猥褻な調教風景をビデオに撮られてしまっていた。自縛マニアだと見抜かれ、一晩か
けてじっくりステージの内外で嬲られ、一部始終すべてを記録されてしまったのだ。
(あなた‥‥本当はご主人様なんていないわよね?)
むろん私は否定しているし、女性バーテンにしてもあくまで推測しているにすぎない。
けれど、しかし‥‥
録画されたこの映像だけは、逆らいようのない絶対的な弱みだった。
しがないOLである以上、自分の生活を守る為にも、私はあの人に逆らえないのだ。
微笑みかけてきたバーテンの、いとおしげな瞳。
『子猫ちゃん』とあの人に呼ばれ、かわいがられ、虐めされて。
あれから十日あまり。今ではすっかり、私はこの苛烈な被虐の味に馴らされていた。
もう、普通の自縛では、ただのセルフボンテージでは足らないのだ。
「んぁ‥‥ん、ンフ」
バーテンの鮮やかな縄掛けを目にしつつ、私はボールギャグの奥から吐息をもらした。
あの晩と同じ革マスクが顔の下半分を覆い、喘ぎも悲鳴も吸収してしまう。シンクロ
するかのように湧きあがった甘い感覚を噛みしめた私は、拘束する準備がととのった
自らの裸身を見下ろす。
ぺたんとベットに座った私は、折りたたんだ左右の足それぞれに形状記憶合金で施錠
される特殊な足枷を食い込ませていた。くるぶしとお尻がぴったり密着するほど膝を
たたんだこの姿では膝立ちがやっと。お湯に漬けないと外せない足枷は、自縛後の私
が両手の自由を取り戻さぬかぎり、高さ50センチのベットを断崖絶壁の牢獄に変えて
しまうのだ。
『気持ちイイでしょう? 我慢しないで。好きなだけ啼いて、私に喘ぎ声を聞かせて』
『くぅ‥‥ぅぅぅ』
愛情深い言葉責めをうけ、巧緻な緊縛を施される裸体が、鏡の向こうで火照っていた。
ふたたび目の当たりにする私自身の淫らがましさ。
あの感触、あのわななき、自力ではなにもできず、自由を奪われていく虜の感覚。
革の拘束着にきつく絞り出されたウェストや乳房がひりひり爛れだす。
2つの乳首をつなぐニップルチェーンがジャラリと揺れ、とたん、とめどない疼痛が
バイブを咥えこんだクレヴァスをつぅんと突き抜けていった。
「ふぐ、ンンンゥグ」
まだ自縛も完成しないのに、待ちかねていた淫靡な疼痛が躯の芯を灼いていた。あの
晩以来、このカラダはあの人好みに作り変えられつつある‥‥
んっと喘ぎを飲み下し、きたるべき絶望の愉悦に焦がれながら手首から拘束していく。
「‥‥」
肩に背負うのは、ハンガースタンドから外した軽いアルミ製ポール。卑猥に上半身を
喰い締める拘束着の革ストラップが、ポールがゆるまないようしっかりと両肩に固定
していた。
ピンと広げた両手は、肘の上下と手首の3箇所にそれぞれ革手枷を嵌められ、さらに
ミトンの革手袋が手首をすっぽり覆って指の自由さえ奪っていた。
肩のポールに取りつけた金具に手枷・肘枷のナスカン(連結器具)をつないで手枷を
施錠すれば、広げた腕は一本の棒となり、悩ましいセルフボンテージの仕上がりだ。
解錠のためのカギはニップルチェーンの中央から垂れ下がり、重みで今も私の乳首を
虐めつづけている。
つまりこれは責め絵などで見かける、肩に背負った棒に両手を縛りつける緊縛だった。
「ンッ」
カチリ、カチリとナスカンを軋ませ、みずから両肘をポールに括りつけていく。
あとは残された手枷から下がる錠前をポールに押しつけ、連結して施錠すれば残酷な
自縛奴隷のオブジェが誕生するばかりだった。
両腕を磔にされた苦しい姿勢のまま、錠前の開いた手枷をポールの金具に押し当てる。
「ン‥‥ンフ、かふっ‥‥」
ほんの一押し。
けれど、理性のかけらが私をすくませ、ためらわせていた。
いつものように、最後の最後で躊躇と陶酔がわきあがる。ゾクゾク背筋の引き攣れる
気持ちよさ、これが私をやみつきにさせ、セルフボンテージの虜にしているのだから。
絶体絶命の恐怖が、自由を剥奪される慄きが、私を惨めにあおりたてていく。
特に今回襲いかかったわななきは激しく苛烈だった。
今回のセルフボンテージはろくに準備もせず、ほどくための手順さえ検討していない。
ここで施錠してしまったら、私のカラダは取り返しのつかない緊縛を施されてしまう。
分かっている、絶対にやめるべきなのだ。
ためしに、寸前までトライするだけの予定だったのだから‥‥
これ以上してはいけないのだ‥‥
踏みとどまろうとする理性を、じくじく欲情に溺れた躯が拒み、甘く背を押していた。
爛れきったクレヴァスを犯すバイブの律動が気持ちイイ。
こんなに感じてるのに、こんなにイイのに、ここで寸止めなんて、逆に惨めすぎて。
もどかしくて、意識がおかしくなってしまう‥‥
そう‥‥ほんのちょっとだけ‥‥この刹那の、めくるめく愉悦のために‥‥


カキン――
チャリッ――

はっと我に返ったときには、すべてが終わっていた。


無意識に押しつけていたU字錠が連結し、磔の形をとらされた手首が食いこんでいた。
左右の手枷が施錠された、冷たく無情な音。
「‥‥ぃうン!!」
唐突に全身を逆立てるほどの焦燥感に突き上げられた私は、ポールを背負った不自由
な裸身を激しくうねりよじらせていた。
狂乱の勢いで暴れまわった両手は、しかし、肩からビィンと一直線に固定されたまま。
のたうちまわる上体は重く窮屈に囚われていて、そら恐ろしいほどの痙攣が私を興奮
させていく。
(ウ、ウソ、まさか‥‥縛っちゃった、どうしよう‥‥)
ドクンドクン波打ってあふれだす戦慄と恐怖とせっぱつまった焦りと‥‥絶望と‥‥
やってしまった‥‥
後先考えず、快楽だけを欲して愚かにも‥‥
両手の手首も、肘も、ポールにへばりついて根が生えたようにぴくりとも動かない。
「んぐぅぅぅ!! んっふ、はぅぅぅ!!」
カーテンを開け放った窓に、卑猥な自縛姿の女性が映りこむ。
膝を曲げて固定された両足をしどけなく女座りの形でよじらせ、長い棒を背に抱いて
やじろべえのように腰を揺すり、そのたびに弾むニップルチェーンに甘く激しく乳首
を噛みつぶされて、ギクリと硬直する下半身をいやおうなくバイブで犯し貫かれ‥‥
口腔をふさぐボールギャグと、顔を覆うマスクに表情さえ殺されて、ただひたすらに
うるんだ哀願のまなざしをむけるしかない裸身。
『よし、これで完成』
『ファ‥‥ンッ、んンンン!!』 
『どう? “絶対縄抜けできない”緊縛が、ご主人様のオーダーだったわよね』 
ゾクリ、ゾクリと奔騰するカラダに注ぎ込まれるバーテンの残酷な台詞。
ビデオと現実の縄掛けは、自由を奪われてよがりまう躯は、シンクロしきっていた。
完全な拘束の完成。
もはや、私のカラダは私のモノではなかった。
どこの誰とも知れぬマスターに遠隔調教され、堕とされて発情したマゾ奴隷の裸身。
自ら縛りあげたカラダを痙攣させ、虜の身から逃れる術を知らず悶え続けるしかない
発情した肉の塊でしかないのだ。
ミトンの内側で、ギュウと指先が突っ張っていく。
ほとんど衝動的な愚かしさ‥‥
バーテンから渡されたビデオを見ているうち、こみあげた疼きに耐えかねて‥‥
刹那的に実行してしまった自縛から、いったいどうやって抜け出せばいいというのか。
それにそもそも‥‥この状況から、縄抜けすることが可能なのだろうか?
本当のところ、私はなにを期待していたのだろう。
――確実に失敗するだろう自縛の結末を、絶望の味を、欲していたのか。
全身をかけめぐった快楽の大波は、忌まわしい自縛の失敗、禁忌を犯した瞬間のダイ
ナミズムに果てしなく近くて、目くるめく絶頂が幾重にも幾重にも胎内に積み重なり、
膨れ上がっていって‥‥
(すごい、どうしようもなく感じている、ベトベトにアソコが濡れそぼって、そんな、
気持ちイイ‥‥良すぎて、狂って、狂っちゃ‥‥イク‥‥ッッ‥‥!!)
「ん、ひぅン、く、んんンンン‥‥ッッ」
まさに、一瞬のうちに。
壁のスクリーンに映しだされたあの晩の私自身の痴態を見せつけられながら、ビデオ
に映った調教の一部始終の、その甘美なる絶望の調べに己が自縛姿をだぶらせ、重ね
あわせながら‥‥
絶頂の、エクスタシーのはるか彼方にのせあげられ、私の意識は真っ白に消えていた。


              ‥‥‥‥‥‥‥‥


「さて。早紀ちゃん、だったわね。私から提案があるのだけど‥‥‥‥」
あの日、あの時。
青ざめた私を見やってバーテンは口を開いた。
「普通、こうなったらその後、子猫ちゃんがどうされるか、想像つくかしら」
「‥‥私の、ご主人さまが、黙っていませんよ」
「あらぁ」
パンと手を打ち、はなやいだ仕草でバーテンは声を上げた。
「ぜひお会いしたいわ。こんな可愛い娘を手なづけるご主人さま。気が合いそう」
「‥‥」
「いいのよ、言いつけて。仕返し結構。さぁ、どうする?」
あくまで意地悪くバーテンはにやつく。しかも、悔しいことに私は反論できないのだ。
ただ黙って気おされないようにジト目で睨む。
「まぁまぁ、そう毛を逆立てないの」
「よしてください。ペットみたいにそういう表現」
「ふふ。前にも言ったけど、私は無理矢理とか脅迫で奴隷をモノにするのは嫌いなの。
SMは信頼関係だから、お互いに信頼と愛情がないとダメ。そうよね」
「‥‥はい」
「そこで提案。あなた、一日私の奴隷をやってみなさい」
「え‥‥?」
「つまり体験奴隷になるってこと。私と早紀ちゃん、お互いの相性がどれだけ良いか、
実際に肌で試すの。それで最後にどうするか選ばせてあげる。拒否するか、一生私の
奴隷になって可愛がられてすごすか。二択をね」
バーテンの台詞は、硬直していた私の身体に電気を通したようなものだった。
一日体験奴隷‥‥
私にも、選択の余地が‥‥
せっぱ詰まった心に響く、福音のような救いの手。
それは、拒みようのない誘惑だった。私の心はまだ見ぬ本来のマスターと、目の前の
小悪魔的な女性との間で揺れ動いている。この人をもう一度ご主人様と呼び、調教を
受けることができる‥‥しかも最後には、自分で選択までできるというのだ。
「その‥‥もし、その後でやっぱり私が拒否したら」
「そうね。残念だけど、それ以上要求はしない。写真もビデオのマスターも返す」
「!」
「その代わり」
顔を明るくした私の瞳を覗きこんで、バーテンは嗜虐的な表情をただよわせた。
「調教師としての誇りにかけて、私は絶対あなたを堕としてみせるから」


             ‥‥‥‥‥‥‥‥


ゆるゆる重力を失った絶頂。エクスタシーの波間から意識をとりもどす。
女性バーテンの提案した期日は刻々と迫っていた。
その日、私がどのように責められ、どう変わってしまうのか。ただ一晩であれほど私
を狂わせた彼女から徹底的に調教された時、はたして私はセルフボンテージマニアと
しての矜持を押し通せるのだろうか。
あの人なしでは耐えられぬ、淫らなマゾ奴隷に変貌してしまうのではないだろうか?
飛びついた承諾は、今では悪魔の刻限と化して心を苛み、うろたえさせていた。
今夜もそう。
あの晩の事を思い返すうち手は自然と彼女に渡されたビデオへ伸び、壁のスクリーン
に私自身の調教風景を映し出しているうち、いつか疚しい疼きが肌を覆いだして‥‥
そうだ、私は‥‥
あれ、なにをして‥‥躯が、ギチギチ軋んでる‥‥?
ビリビリ、よがり狂ってるみたいに‥‥すごいの、グチャグチャに私、感じて‥‥
のろのろ瞳を開け、浮上してきた意識をはっきりさせようと首を振る。


金属音を奏でた首輪がぎっと緊まり。
目に映るのは丸出しのオッパイと、勃起した乳首を摘むニップルチェーンの鋭い痛み。
何もかもがなまなましく女を匂いたたせ‥‥
部屋の中央に活けられた自縛奴隷のオブジェは、緩む気配もみせずひくひくと痙攣を
くりかえしていた。


「ほごっ、ン、んんンンーーーーーーっっ!?」
あふれかえった絶叫は、しかし、すべて緘口具に吸収され、かすれて宙を漂っていた。
一片のためらいも容赦も慈悲もなく、すみからすみまで拘束しつくされて。
目覚めた私は、完璧な奴隷そのものだった。
はしたなく玩具に嬲られて発情しきり、無力な自縛姿をあまさず空気に晒しつくして。
嬉しげにニチニチとバイブを咥え、股間をべっとり愛液まみれにしてベット上に放置
されたまま、男を誘うように飾りつけられていた。
「ふぅ、ふぅぅっ、ひぅぅぅ」
ぶるりぶるりと裸身の震えがとまらない。
自縛していたのだと、自由を奪われた緊縛姿だったのだと、目覚めて気づくこの瞬間
に心を飲みこむ戦慄と恐慌は何度あじわってもなれることがない。ショックで心臓が
止まりかけ、次の瞬間、貯めこまれていた快感がどっと流れ入ってドロドロに裸身を
蹂躙し、最後に凍えるような絶望が肌を総毛立たせるのだ。
「うっ、ぐ、くぅぅ」
私にできるのは全身を突っ張らせ、口枷を噛みしめ、狂おしい波をやり過ごす事のみ。
どうしようどうしよう解けない縛られてる‥‥理性も思考もグチャグチャに潰されて、
ガクガクとイキっぱなしになってしまうのだ。
いつのまにか、マンションの部屋にはうっすら朝日がさしかかっていた。
どうやらイったきり、前屈みの窮屈な姿でうとうとしていたらしい。拘束されてから
すでに数時間。全身がだるいのもうなずける。
おそらくはうつらうつら気を失っている間もセルフボンテージの施された肢体は自動
的にイカされ続けているのだろう。わずかに腰を動かしただけでゾブリと深い凌辱の
男根が下腹部を芯まで貫き、クレヴァスを裏側からめくりかえす勢いで律動しだす。
たった一本のバイブに、ここまで追いつめられてしまうなんて。
奴隷としての認識はまたもカラダに火を点け、あっという間に理性を溶かしだす。
違うのだ、それではいけない‥‥
悩ましく眉をひそめ、ギリギリと快楽を意識から締めだそうとした。
足の指でギュウとシーツをつかみ、未練たっぷりにボールギャグを歯の裏で咥えこむ。
後から後からわきだす被虐の情感に身をよじり、うるむ目で私自身を仔細に見下ろす。
「‥‥」
たっぷり一分近くののち、頭が真っ白になっていた。
ウソよ、信じたくない‥‥
こんな‥‥本当に、今度ばかりは脱出の手が思い浮かばない‥‥
肩に背負うアルミ製のポールに磔の形で拘束されてしまった両手。肩・肘に2箇所と
手首、さらには首輪までもがポールに縛りつけられ、しかも鎖でなくナスカンで直接
連結されているため、ポールと腕とがぴったり密着している。
単純に引っかけて嵌める構造のナスカンも、指が使えない今、外せるはずもない。
それは両手を広げきった先の手枷とておなじこと。
この姿は、躯のどこにも手が届かない、きわめて巧緻な拘束なのだ。
そして私自身を解放する唯一のカギは不自由な手の届かぬ乳房の間、ニップルチェー
ンの中央にナスカンで連結され、ぶらぶらと揺れている‥‥
(どうしよう、どうすれば‥‥)
焦りはもどかしい刺激となり、ヒリヒリと全身に熱を帯びさせていく。
仮にポールの端まで手枷と留め具をずらしていったとしても、ポールの両端についた
丸い飾り玉が邪魔をしてポールから抜き取ることはできそうにない。
ポールそのものは軽く細い。
けれど女の力ではどうしようもない、強靭な磔の横木となって私を拘束しているのだ。
この手枷を外せなければ、私は一生このままだ‥‥
「ひふっっ、つぅッッ」
たぷんとアソコが蠕動し、みちりと淫音をこぼしてオツユがあふれだす。
桃源郷の境をさまよって、私のカラダはすっかりドロドロの汁まみれだった。全身の
拘束着にしみこむ汗。革マスクの下であふれる唾液。根元までバイブを飲み込んで、
浅ましいオツユ垂れ流しのクレヴァス。
こんなので‥‥
いや、この恐怖こそが私をこの極限まで煽りたて、グズグズに感じさせてしまう‥‥
もっとも深い無意識の底で望んでいた絶望の形がコレだった。
自分の姿に目を落とし、いとおしく噛みしめる奴隷の証‥‥口腔一杯にふくらみ舌を
押しひしぐ惨めなボールギャグの縁に歯を立ててくぅんと爛れた吐息をまき散らす。
あまりにも無残で、縄抜けの不可能な姿だった。
もはや何一つ自由の残されていない四肢。ただただ言いなりになるしかないマゾの形。
そもそもセルフボンテージは、コントロールする過程に達成感と快楽があったはずな
のだ。無謀にひとしい自縛でも、必死にもがき、悶え、快楽にのたうって苦しみ‥‥
それらすべてをコントロールして、最後には自由を取りもどす。
それが、自縛のカイカンだったはずなのに。
「‥‥」
ふ、クッ‥‥むせぶ熱い吐息をボールギャグの穴から吐きだすと、ヨダレがしぶきと
なって惨めに飛び散った。
空白になった頭は、しとどな官能に蕩けた頭は縄抜けの手段さえ思いつかずに無様な
自縛の舞ばかりをカラダに命じている。こうしてブルブルと、ひくひくと、どんなに
裸身を弾ませ、くねりよじらせたところで、金属の枷が外れる可能性などないのに。
これはセルフボンテージではない。
ただよがり狂うだけの、主のいない調教記録そのものだ‥‥
『奴隷市場で競りにかけちゃおうかしら。あなた、絶対売れ残らないからおしまいね。
普通の生活、捨ててみる?』
「ん、ク!?」
唐突に耳に届いた女性バーテンの声が、私をぶるっと震わせた。
パニックに塗りこめられ、忘れていた。
未だに、ビデオは延々と壁に映像を映しだし、連続再生を続けているのだ。
残酷な響きをこめ、バーテンの嬲り台詞が続いていく。
『戸籍も失って、一生快楽をむさぼるだけの人生。短命らしいわね、専属奴隷って』
ウソ‥‥
そんな、そんなのイヤ‥‥
でも、私、抵抗できないのに‥‥このままじゃ‥‥
あの時、あの瞬間感じていたおののき。
けれど、それはまさに今の私自身に重なってしまうのではないだろうか。
そもそも自縛の予定など立てていなかった私は、いつもと違って玄関のカギを閉めた
まま。この猿轡では悲鳴さえどこにも届かず、仮にどうにかベットから降りられたと
しても膝立ちの、両手を磔の、この姿では狭い玄関にさえ入ることができない‥‥
「ひぅぅぅ、んぶ、ンォ、いぁぁぁァァ‥‥!!」
どろりとあふれだす絶望の調べ。
連綿とくりひろげられる私自身の調教の記録と、何の変わりがあるというのか。
今の私はどこにも行けず、なにもできず、ただ機械的にイカされながら衰弱していく
ほかない、快楽をもさぼるだけの人形なのだ‥‥
はしたないその光景に目を奪われ、同じようにギシギシと身を軋ませつつ、ふたたび
鼻先へ突きぬけるような苦しく激しいエクスタシーに飲まれた拘束姿の裸身は、わき
腹を波打たせ、懸命に快楽反応を噛みしめながら軽々と絶頂へ昇りつめていく。
「ン〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッッッ!!!」
拘束された両手が動かせず、アクメの衝撃が受け止めきれずにカラダの中を暴れ狂う。
声にならない絶頂の悲鳴とともに、ドプリとしとどな淫ら汁が、股間の革ベルトから
洩れだした‥‥


                         Total  daily  - 

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