馴致 幕間

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激しい音をたて、
鞭が
カラダに‥‥振り下ろされてくる。
逃げようと、
かわそうと、
身をよじる動きを知り尽くすかのように、鋭い痛みが肌のあちこちで弾けていく。
あれ‥‥
どこ、だっけ‥‥
『何やっているの、早紀は!』
「ふグ、んぅぅ」
びっくりしてふりむく私の前で、あの女性バーテンが私を睨んでいた。
ビシリ。弾む痛みでカラダをわななかす。後ろ手の、懐かしい緊縛。気持ちイイ‥‥
どこも動かせない。やっぱり、感じちゃうんだ。
私、マゾだから‥‥
胸が、叩かれすぎて、ピリピリして、裂けちゃいそう‥‥
バーテンがふたたび鞭を振りあげる。
『駄目な子ね、あれだけ言っていたのに』
何を‥‥?
『だから素直になりなさいって、いったでしょう』
え、私、ご主人様の言うとおりに‥‥
『セルフボンテージなんかしないって、ウソをついていたんでしょう? 違う?』
あぁ‥‥
そうか、そうだったっけ‥‥
猿轡をかみしめ、答えられずにいる私をビシリびしりと鞭が襲う。
痛い。痛くて、ヒリヒリして、叩かれた痕がむずがゆく紅く腫れあがって‥‥
たまらない。
私はもう、どうしようもないから。
お願い、お願いです。もっと‥‥
もっと私を虐めて、お仕置きを、ごほうびのお仕置きを下さい‥‥

ひざまずこうとするカラダがギュッとムリヤリに折り畳まれて。
暗い室内に私は、いつのまにか座っている。
膝を抱えるようにして。両手をピンとそろえて、なんか大きな棒に括りつけられて。
頭がもうろうとして分からない。急に寂しくなる。
ごしゅじん‥‥さま‥‥ 


夜が、落ちてきた。
ぐわんと頭が振られて、それではっと意識を取りもどす。
私‥‥なにを‥‥
意識がどろどろで、動かそうとして手も足もまるで神経が通ってないみたいに反応
する気配もなく、焦って悶えて。
あぁ、いつものことだ、私、縛られてる。
両手を広げて、硬い柱に縛りつけられて‥‥すごい‥‥グチャグチャの緊縛だ。
縄‥‥じゃない。革の拘束具と、金属の錠で、これ以上ないくらいハードな拘束を
みっちり施されて‥‥身動きもままならないくらい、かっちり囚われちゃっている。
カギも見当たらないし、ボールギャグが口いっぱいになるまで頬張らされていて。
下半身だって、あそこにみっちり根元まで太いバイブを飲み込まされて‥‥
これじゃ抜けそうもない。ずっと犯されっぱなし‥‥
ヤダ、私、感じてるんだ‥‥べちゃべちゃに濡れそぼってる‥‥よね‥‥?
あれ?
‥‥でも、変だ。
だったら私は、誰に縛られちゃっているの‥‥
だって、これがセルフボンテージだったら、絶対ほどけない‥‥
ふぅ、ふぅぅと浅く息を吸う。
なんだか空気が薄くって、頭がちゃんと働いてくれてないみたいだ。


『やっぱり早紀さん、マゾなんですよ』
今度は中野さんの声だ。
おっとりした普段の彼女じゃない。まるで、夜の営みをリードする、女王様のよう。
甘く鈍く私のカラダをくすぐりはじめる。気持ちよくて、悶えてしまうのが楽しい
のか、くすくすくすくす笑いながら、中野さんが、私のカラダを、

『ほどけないセルフボンテージなんて、そんなの実行しちゃうの本物のマゾですよ』

凄い勢いで、甘く意地悪くなぶりはじめてきた。
子猫が‥‥名前、なんだっけ‥‥子猫が、猛烈にミャアミャア鳴きたてている。
羨ましいの?


びっくりして目がさめる。
なんだったんだろう‥‥中野さん、酔っていた‥‥?
うすぼんやりした、まぶたがくっつきそうな眠気の中で世界を見つめて。
見覚えのある室内に、見覚えのある家具に、
見覚えのある、

窓ガラスに映った、私自身のエッチな、姿。


『それがキャンセルの理由なんてひどいな。俺、すねちゃいますよ』
「‥‥ん、ンクゥ」
『一日中家の中にこもって、何してるかと思ったら、一人エッチだなんて‥‥』
喉を鳴らして、甘えるように謝ってみせる。でも、誰かは分からない。
私のご主人さま?
あぁ、違う、いや、同じなのかな、水谷君だ。
背中から私を抱き寄せてカラダをいじっている、みたいな、気が、する。
ふわふわと、
ふわふわ‥‥と‥‥
『‥‥だろ? だから、‥‥も』


「‥‥、よく、躾けたんだね、君自身を」
「!」
誰かが、いた。
私の背後に。
しんと静まりかえった、真夜中近い、私のアパートの一室に。
聞き取れぬほどの低い小さい囁き。男らしい‥‥としか判断できない、わざと声を
分かりにくくしている感じの声だ。
ふりむこうとして、今度は、まぎれもなくしっかり頭をおさえつけられ、ふたたび
前を向かされた。緊縛された裸身では、男性の力にかなうはずもない。そしてそれ
以上に、頭をなでた男の優しい仕草が、まるで、ずっと前に知っていた者のような
気がさせられて、逆らいたくなかったのだ。
優しく、男が腰を抱き寄せる。
腰だけじゃない。つぅっと、手の先から肘、二の腕、肩、首のあたりからずーっと
下へ‥‥淫靡な、犯そうという手つきじゃなくて診察するものの手つきで指が私を
なぞっていって。
最後に、男は私の乳房をたゆんとすくいあげ、その上を何度も指でなぞりだした。
くすぐったい、恥ずかしい感触。
なんだかワケが分からぬまま悶え続けて、でも、それはエッチな気分を昂ぶらせる
ためのものじゃなくて、そのうち‥‥
そう、
それが指文字らしいことに気がついて。


エッチな

マゾの

子猫

みつけ


「‥‥んむっむっムッゥゥ」
顔がパァァッと真っ赤に染まっていくのが分かった。
なんだろう、この人は。怖いはずなのに、いきなりの侵入者なのに、こうして緊縛
された裸の女性がいるというのに、優しく優しく私を扱おうとしているようなのだ。
伝わったことが分かったのだろう。
ぽんと肩を叩かれ、ふたたび男性の指が背中でくねりだす。
ゆっくりと、同じ台詞をくりかえし、くりかえし‥‥

き
み
を

か
っ
て

あ
げ
る
ね

‥‥
‥‥‥‥
‥‥‥‥‥‥
ぶるりと
背筋が、愉悦の前兆にも似て、大きく弓なりにのけぞりかかった。


‥‥君を‥‥


‥‥飼って‥‥‥‥あげる‥‥ね‥‥‥‥


そう、か‥‥
私は、もう人じゃないんだ。
自由をみずから放棄して、奴隷でありたいと望んでいたはしたないペットなのか。
だから、この男性に囚われて、飼われてしまったとしても‥‥
ボールギャグを咥えこみ、全身を拘束されたこの状況では、なす術もなく彼に身を
預けるしか、選択肢がないのだ‥‥
私、飼われて‥‥
人であることを、やめて‥‥しま‥‥
意味が。
戦慄の内容が脳裏にとどくより早く、私は激しくおののきに震え上がっていた。
彼が誰なのか、たしかめようとした瞳に目隠しの布を巻きつけられ。
抵抗する手段もなく、無防備な下半身にいまだバイブをくわえ込んだままで。
背をのたうたせ、ギクギクッと‥‥
狂おしく、股間をオツユまみれにして、イッてしまっていた‥‥


                         (飼育 その1へ続く‥‥

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