ロスト アイデンティティ 3

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――気づけば、顔の下半分を覆う革のフェイスギャグから、何度も舌を伸ばしていた。
これ以上ないほど完璧にこじ開けられた女の秘めた部分。
下半身の帳より、なお情欲で濡れた卑猥な穴。
そこに鈍色の枷をつきこまれ、なまめかしい肉色を覗かせながらギリギリあごを拡張
させられ、ぬらりとした唾液の輝きさえ赤裸々に暴かれる。
冷たい鉄の開口リングが、あからさまな奴隷の惨めさで無抵抗な唇を犯すのだ。
唇から唇へ、シームレスに密閉された透明なチューブ。
リングギャグから食みだすチューブは10センチ足らず。残りは喉奥まで突きこまれて
ディルドウのように口腔を犯す。あふれだす涎は一滴あまさずチューブで攪拌され、
相手の口中へ、トロトロと粘液を注ぎこむ。
犬拘束の女の子もまた、同じ形の責め具で喉をふさがれ、声を奪われているのだろう。
この擬似的なオーラルセックスにえずくこともなく、むしろ涎と吐息を交歓する淫ら
な空間めざして、懸命にチューブの中で舌をつきだすのだ。
「ンーーーッ!」
「ふァ、ンァァ‥‥ッ」
鼻声をこぼし、一心不乱に身をこじりながら、口腔をこじあける冷たい鉄のリングに
抗う。
犬拘束の子が差し伸べる鮮やかな舌先に、どうにかして触れたいと願う。
交わりたい。
つながりたい。
こぼれそうな瞳に鏡写しの被虐を炙らせたまま、目だけで思いを重ねあう。
無機質なディルドウで前後を犯され、機械仕掛けの律動だけでイかされるのはイヤ。
この女の子と、自分の意思で繋がったまま、イきたいのに――
なぜ、こんな感情がこみあげてきたのか。
それさえも把握できぬまま、ただ無我夢中で舌先を、神経の集中した敏感な器官を、
たっぷり唾液をためてつきだす。
それは、溺れる者がよすがを求めて懸命に差し伸べる手にも似て。
届かないからこそ、なお一層の焦燥感で心を狂わせていく。
「ン、ンンッ‥‥‥‥!!」
「‥‥んク」
にちゃりと、ほんの数センチ、絶望の距離をへだてたまま。
悩ましい舌先を唾液の銀糸がアーチとなって交わり‥‥
ぶるりと痙攣し、かぶさった彼女の肉の重みを、たわむ乳房の火傷しそうな熱を浴び
ながら‥‥子宮の底がねじれるほどの絶頂につきあげられて、ガクガクとのたうった。
後ろ手の縄目が千切れそうなほど引き攣れ、柔肌に食い込む。
そそりたった乳首の先で、いじましいクリップが疼痛をきわだたせる。
首輪がぎゅっと締まり‥‥
ベットに繋がれた奴隷の身を海老ぞりにたわませ、幾度となくアクメの底を突き破り、
たがが外れたように獣じみた浅ましい愉悦の中を転げおちていく。
したたり落ちる蜜がみるまに蒸発するほど裸身を上気させ、ひりひりした官能の熱を
わかちあいたくて、かろうじて動く太ももで彼女の下肢をギュッとはさみこむ。
長いバーの両端に足首を括り付けられた、大開脚の下半身。
それでも彼女よりは自由な下腹部をうねらせ、深々と咥えこんだディルドウを揺すり、
下半身を深々と咥えこんで反撃を封じながら、濡れそぼった熱い蜜壺を容赦なく犯し
たてるのだ。
灼りつく裸身と裸身を絡めあわせ、火照った柔肌に爛れた媚肉をこすりつけていく。
「あ‥‥ィ――」
「ン、ン‥‥‥‥ひぁッ!!」
かぼそい悲鳴にほくそ笑む刹那、最奥まで貫かれてドロリと堕ちていくのは私自身だ。
その喘ぎを耳にして嬉しげな彼女の瞳の色が、次の瞬間、衝撃に光を失う。
無限にイかされ、屈服させられつづけ、それでも終わらない。
マゾ同士の果てしない調教の環。
ただ不自然な裸身をこじり、ひたすら相手を追い上げていく。
犯されたくなければ犯すしかない。
悶えるほど固く締まっていく緊縛を身にまとう現実に酔いしれ、発情しきった相手を
不自由に無慈悲に虐めぬく。
同じ奴隷の拘束をほどこされた者同士、上下など存在しないのだ。
‥‥え?
‥‥存在、しない?
「――ッッ!!」
唐突に視野が白く染まった。
反芻した自身の思考が、私を打ちのめす。
砕けきった最後の希望が私を無理やりアクメの極みへ突き上げていく。
挿入の深さにむせび泣き、残酷な縄目に脂汗をたらして‥‥
途方もない官能の波濤に没しきり、ぞぶそぶと心を壊すばかりの情欲に飲まれきって、
抗う自由さえ奪われた緊縛の裸身を、高々と押し上げられていくのだ。
被虐のエクスタシー。狂おしいさらにその先へ。
欲望の果てを知り、壊れた理性の名残が、過程をすっ飛ばして無慈悲な解を弾きだす。
なぜ、私たちがこんな残酷な縛めを甘んじて受けているのか。
あまりにも簡単な答え。


私は彼女の奴隷であり‥‥そして、彼女こそが私の奴隷、なのだ。


悩ましく愛らしく、いじましく悶え狂う犬拘束の子の、この可愛らしさはどうだろう。
嗜虐心をそそる、涙にぬれた表情はどうだろう。
この子が欲しい。
二人で共に緊縛の味を噛みしめ、マゾヒストの愉悦に極限まで溺れてみたい。
私がそう思ったから。
あるいは、私たち自身がそう願ったからこそ。
私と彼女は抜かりない入念な縄化粧と革拘束を施され、自由を剥奪されている――
つまりはそういうこと。
彼女と私のほかに、この部屋に戻る者など、どこにもいない。
発情した奴隷を二人も転がしておいて鑑賞する‥‥そんな人間は最初から存在しない。
縄掛けを施したのは、他ならぬ私。
私が彼女に拘束を施し、彼女が、私の裸身を縛り上げたのだ。
セルフボンデージのスリルと興奮に酔いしれ、見るからに挑発的に、どうあがこうと
も決して自力では解くことができないようお互い自身を‥‥あるいは自分自身を‥‥
厳しく固く縛りあげたに違いない。
おそらくは、刹那のスリルに盲いたままで縄抜けの手順など考えもせず、ひしひしと
艶かしい裸体に縄を打ち、己が身を玩具で犯したのだろう。
ベットに放置したのも私自身。
奴隷のあがきを鑑賞するのも私自身。
絶望的なセルフボンデージを互いの身に噛ませたのも、私自身なのだ。
一人では絶対に縄抜けできぬよう、念入りに。
目覚めたとき、被虐に彩られた牝として扱われるほかないように仕立て上げて‥‥
「か、はァ――ッ!!」
ギジジッ、と縄鳴りが大きく軋み、呼気の塊をごっそり吐き出す。
高手小手に括り合わされた手首が弾み、ひときわ厳しく縄目が噛み絞ったのだ。
‥‥だから、これは自業自得の末路だ。
艶めいた夜の褥で喘ぐのは、無残に緊縛された牝犬二匹きり。
自縛の過程がどうあれ、記憶がごっそり欠落している以上は抜けだす手段も失ってし
まったに等しい。
セルフボンデージでいう『嵌まり』。
そして、この状態を救ってくれるご主人様は最初からいないのだ――
「‥‥‥‥」
くるんと、瞳が裏返るような感覚。
ひときわ深い律動にずぶりと突き上げられ、獣のようによがり泣く。
のしかぶさった犬拘束の子の悶える膝が下腹部を直撃したせいで、高々と自失したま
ま極めつけの愉悦に乗せ上げられ、その衝撃も咀嚼できぬまま、遥か彼方、無感覚の
先にまで意識を放り込まれて‥‥
私は、気を失った。


              ‥‥‥‥‥‥‥‥


「ふぅう‥‥」
「ン‥‥」
「ンムゥ‥‥ンッ、ンン、ンェ‥‥」
――どこからかだろう。
声にならない吐息のようなリズムが、じかに体内へ送り込まれてくる。
羽音のような振動が鼓膜を震わす。
悩ましい呼吸が、しきりと口の中をさぐりまわす。
まるでペッテイングのようにさわさわと歯の裏をくすぐり、舌先をいじりだす。
ずず、ズブッと、とめどない拡張感のせいで下半身が海水に没したかのように濡れて
いく。固まった手足に、体重の乗った後ろ手のかすかな鈍痛に、重さより愛おしさを
感じさせる暖かい人肌に、少しづつ意識が浮上する。
ふうっと瞳を薄く開いた。
そこでようやく、愛らしい端正な顔が私を見下ろしているのに気づき、ぎゅっと胸を
締めつけられる。今にも泣きそうな瞳が絡みつき、言葉を奪われた呻き声でなにかを
訴えかけてくる。せっぱつまった表情に、ドキリとさせられる。
何、私、どうして‥‥?
次の瞬間、気絶中に溜めこまれたアクメの奔流が、どっと絶頂を告げる濁流となって
体内を貫いた。
「ンァァァァァッッッ!!」
鉄の口枷を噛みしぼり、絶叫する。愉悦なんて甘やかなものではない。獣の領域まで
達せんばかりの、根源的なエクスタシー。人としての意識を根こそぎ奪われかける。
みりみりと縄を軋らせ、ベットの上で暴れくるう。
魚のようにビッチリ固められた緊縛は、緩み一つ生じてはいなかった。
上半身が一つの固まりになり、ひくひくと弾けていく。気絶という自衛本能によって
忘れていたばかりのエクスタシーが神経を灼きつくし理性を押し流す。
「うぁ、あ、ァァアーー」
3回は軽く気をやっただろう、本気で達し、イかされて、だらだらと下半身が猥褻な
お汁を垂れ流していく。ひどく疚しくふしだらな悦びに震え、何度も揺り戻されては
小さなアクメに悲鳴をこぼす。
キュウキュウと下腹部を収縮させ、今はもう振動の止まった二本挿しのバイブを前後
で咥えこみ、深く深くへと引きずり込んでいく。
止まらない。
腰が勝手に蠢いて、どこまでも‥‥
「!?」
ギジリ、と小さな、鋭い痛みが肩をさす。
目を落とすと、犬拘束の子の手枷が私の肩に食い込んでいた。バックルが肉を食み、
緊縛の味に溺れきっていた意識がクリアになっていく。
滂沱のごとく瞳をうるませ、彼女は犬拘束の肩を必死にもじつかせていた。ミトンの
奥で指を動かす。まるでリモコンの輪郭を何度も握るかのように。
‥‥リモコン!?
そうだ、私もまた、手枷のミトンの奥で、彼女を操り人形に変えてしまうリモコンを
握らされていたのだ。しかも気絶したはずみで、スイッチを切り忘れて。
あわてて指先を蠢かし、親指で突起を押し戻す。
とたん、羽音のようなリズムが途絶え、くたくたと彼女の体から力が抜けた。
さっきから響いていた微音は、ずっとこの子を責め立てていたバイブだったらしい。
びく、びくくんと胸の上で弾むカラダが愛おしく、申し訳ない気分でいっぱいになる。
彼女はいち早く絶息した私を見てバイブを切ってくれた。なのに、私ときたら、自分
の快感にひたりきって、彼女のことなんか忘れてた――
「‥‥」
謝罪の言葉さえ、今の私たちには許されない。だから、優しく彼女をあやし、痙攣が
止まるまでずっと頬をすりよせていた。
「ング、うァ、ク‥‥イク‥‥ンッ‥‥」
「‥‥‥‥ッ」
しゃっくりのように嬌声があふれ、愛撫となって私の喉へ流れこむ。
あ、ダメ――そう思った時には遅かった。
思わず吐息から逃れようと上半身を悶えさせてしまい、瞬間的にビチビチッと縄目が
軋んで悩ましい罰を奴隷の身に下したのだ。
一分の緩みもなく裸身をくびらせる後ろ手緊縛が一斉に締まって愉悦の大波が電撃の
ように迸り、鎮めたはずの熾き火があっというまに燃えあがっていく。高手小手の指
先まで引き攣れ、強い縄酔いが意識を混濁させていく。
たちまち悦びを極めて自失させられ、よみがえるアクメに幾度となくむせび狂う。
お、溺れちゃダメ‥‥
彼女に見入っても、耳を傾けてもダメ‥‥
どうしようもない状況のすべてを感じながら、でも、冷静でいないと‥‥
脱出不可能な連縛の籠女。
この異常事態からエスケープするには、決して止むことのない、爛れきった膿めいた
底なしの被虐のエクスタシーを、理性と意思で御していくしかないのだから。
そう思う間にも‥‥じくじくと股間は蜜を吐く。
唾液の交歓はおさまらず、残酷にくびりだされ、歪に快楽をはらんだ乳房はさらなる
刺激を求めて惨めに興奮し、双の乳首がクリップに食い込むほど充血して、ぴりぴり
と互いの乳房を刺しながら灼りついていく‥‥
止まらない。
最高のシチュエーションに放り込まれて、疚しい火照りにのぼせてしまう。
女という底なしの泉から情欲を汲みあげず、いかに沈めたままで縄抜けに挑めるか。
セルフプレジャーの無限循環に陥ることなく、疼きをあやしながら。
彼女と私を捕らえる無数の縄目、縛り方、拘束具の、南京錠の、あやなす凌辱のあり
ようを一つ一つ把握し、どのように拘束してのけたか、その過程(プロセス)に至る
記憶の糸を巻き戻していくのだ。
できなければ‥‥
いくつもの、惨めで無慈悲な結末が脳裏をよぎる。
その時は、死ぬまで快楽にむせび、囚われの身で互いを愛でつづけるだけだろう。
おそらくは、この自縛を施しあう前、二人そろって望んだように。
「ん、んく?」
「‥‥」
どのみち私の意図を彼女に伝えるすべなどない。、
ようやく、ふうふう息の鎮まってきた彼女をふたたび引火させぬよう、慎重な仕草で
身を起こし、じっくり縄目をさぐっていく。
「‥ぁ‥‥‥うぁ」
ひたすらに反応し続ける浅ましい愛奴の肢体が、その努力を水泡に帰していく。
弾ける快楽神経をことごとく無視しつづけ、喉を絞ってイマラチオに応じつつ、不自
由な口枷を噛み絞って、犬拘束の子から与えられた愉悦を殺していく。
すごい‥‥
こんなに火照っているんだもの、カラダが‥‥
この絶望、この感覚こそ、もっとも私が焦がれてきたもの。幾度となく求め、彼との
逢瀬で決して満たされることのなかったものなのだ。
セルフボンデージの『嵌り』。
絶望を噛みしめる致命的な失敗。それこそが何より私を狂わせる最高の媚薬なのだ。
その、致命的な失敗を犯した後の世界。
今このシチュエーションこそが、もっとも望んでいた極上の愉悦だった。
たえず夢想していたスリルと焦燥に動けない裸身が駆りたてられ、カラダは浅ましく
ドロドロに堕ちきっている。
弾む腰が全然止まらない‥‥止められないんだもん‥‥!
双頭のディルドウで激しく犯したてられるクレヴァスは、崩れっぱなしでしとどに蜜
を吐き、乳首はツンと勃ちっぱなしのまま。
この破滅的な、絶体絶命のシチュエーションに盲いてしまう。
悶えれば悶えるほど締まりだす縄掛けは、本当に、自分を見失うほど気持ちイイ‥‥
「っく!」
必死の思いで理性を取り戻す。
イヤらしさ、疚しさを、脳裏から排除する。
縄打つご主人様の目線で、他人事のように不自由な裸身を確認していくのだ。
溺れたら、そこで、終わりだ‥‥
見るも厭わしいほど卑猥にできあがった私自身を、芋虫のようにくびりだされた犬拘
束の彼女を、目を背けずにSの視線でねめつけ、鑑賞し、調べつくす。
犬拘束の彼女が物欲しげに瞳を潤ませる。
けれどダメ。応じたが最後、衰弱死するまでこの自縛の牢獄から逃れられないだろう。
私も、おそらくは彼女も、何一つ肝心なできごとを覚えていない。
どうやって自縛したか。脱出手段は確保したのか。
どうすれば、繋ぎ合わされた二人の躯を外せるのだろう。
始めるべきは現状把握であり、いやでも、壁際の鏡に肢体をさらけだし、どのような
緊縛が完成しているのかを知らなければならない。
全身を棒のように突っ張らせたまま、おそるおそる体躯を傾けて、壁に顔を向けた。
卑猥な光景に飲まれず、かといって目もそむけず。
鏡写しの光景と、自身の身体感覚を重ね合わせて、自由への活路を探っていくのだ。



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