縄掛け その3

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セルフボンテージを試した経験のある人なら、誰でもまず憧れるのが後ろ手の縛りだ。
後ろ手の緊縛。
みるからに淫靡で無力な、高手小手の縄目。
あらゆる自縛の中、ほぼ自力では不可能とされるのが縄を使う日本独自の緊縛だった。
いやらしく裸身をむしばみ、後ろ手にかっちり自由を奪いつくす緊縛は、どうしても
もう一人分の手がなければ完成しない。
一度でいい。あのスリルを味わい、ひりつく焦燥感、目も眩むばかりの愉悦を存分に
噛みしめることができたら、どんなに気持ちイイだろうか。
プロの手による縄掛けを体験したい。そのキツさ、残酷さ、絶望感に酔いしれたい。
あの晩、バーテンは私の瞳にそうした被虐の色を見てとり、わざと焦らしたのだろう。
確実に獲物をからめとるため、そうしたのだ。
けれど、バーテンの言いなりになるつもりはなかった。私はご主人様など欲しくない。
私の主は私自身。深い愉悦を味わうために自縛を楽しむ。それが私のスタイルだ。

なら、彼女をセルフボンテージの道具として・・・・・・・・・・・・・・利用したらどうだろう?

おそらく、かって誰も想像しなかっただろう、危うく妖しい思いつき。
自らを拘束し、縄抜けできるかどうか限界のスリルに溺れる衝動をセルフボンテージ
と呼ぶなら、発作的な私のこの行為は何なのだろう。
バーテンにウソはついていない。
ご主人様という単語を口にし、露出の命令でも受けてきたフリをする。事実、調教の
命令を出したのはもう一人の私自身だ。
けれど‥‥その結果、どんな縛めを施されても、私に拒否する自由はないのだ。
バーテンの鮮やかな縄さばきを知っているだけに、こうして敢えて彼女を挑発した私
が、本気になったプロの縄目から抜けだせる可能性は限りなくゼロだ。一応縄抜けの
初歩を本でかじった程度の私が、バーテンの緊縛にあらがえるだろうか。
焦燥と陶酔が入りまじり、カラダは小刻みに痙攣していた。
確実に失敗する自縛。それは、セルフボンテージではない。耽美で愚かな破滅願望だ。
たくらみを見抜かれ、本物の奴隷にされてしまうおそれさえある。無謀な遊戯だ。
それでも、私は‥‥
ポタリ。
沈黙を破ったのは、濡れそぼった私の女のとばりから床にしたたったオツユだった。
年季の入った表情に奇妙な色が浮かぶ。
「裸で縛られてきなさいって命令? ふぅん、変わっているわね」
「自分でほどけないように縛られて、その格好で戻ってきなさいって命令なんです」
「そう。メール調教みたいな感じかしら。でも、違うようね」
鋭い疑念のまなざしを受けながら、とっさにすらすらと言葉がでたのは上出来だった。
だが、老練なバーテンの瞳は、見透かすように私を射抜いていた。
不安にかられるひとときが、じわじわとすぎていく。
「‥‥で、NGは何?」
「え?」
一瞬きょとんとした。それだけでバーテンの視線が圧力を増し、ひやりとする。とて
も重要なことを聞かれている感じ‥‥なのに、私はまるで分かっていないのだ。
「NGプレイよ。ご主人様に何も言われていないの?」
「あっ」
バーテンの意図するところに気がついてはっとした。NGプレイ‥‥つまりこの場合、
ご主人様に禁止された行為のことだ。うかつだった。ご主人様の命令なら、禁止事項
もあってしかるべきだった。
バーテンは黙って返答を待っていた。焦りつつ、必死になって頭をフル回転させる。
なんだ、なんだろう‥‥
されたくない行為‥‥それは‥‥
「男性との絡み、ピアッシング、針などの拷問系のプレイ‥‥あと、お浣腸も、です」
思いついて最後をつけくわえた。
「ふぅん、ハードなのはアウト。ということは純粋な緊縛派なのかしら‥‥にしては、
あなたの姿、妙なのよね」
「なにがですか」
「縄の痕、まるでついていないじゃない」
ぎくりとする。
「ふ、普段はあとをつけないように革の拘束なんです。それで、その」
「うふふ、まぁいいわ。確認するけど、それでNGは全部ね。わざわざ私を指名して
くれたのだから、このバーでは私の言いなりになってもらうわ。いいわね」
怯えつつこくりと頷く。
そう。このバーにいる間は縄抜けなどおぼつかない。バーテンの可愛がられるだけの、
マゾ奴隷に堕とされて、そう扱われることだろう。
じくりと、カラダの芯が熱くただれ、濡れそぼっていく。
たまらなく、疼いて‥‥
「あらあらぁ、怖がらないで。大丈夫、ちゃんと良くしてあげるから。それとも」
「‥‥」
「疚しいなにかでも、隠しているのかしら。ねぇ」
婉然と微笑んだバーテンは、私の手をひねったまま背中に回りこみ、くいっと中指を
まげて私のクレヴァスを爪であやした。
ちゅぷんと、耳を覆いたくなるような汁音が弾ける。
「期待感でいっぱい、言葉も出ないのね。いいわ、遊んであげる‥‥子猫ちゃん」
首をくいっと背後に傾けさせられ‥‥
そのまま、私は燃えあがったドミナに深く唇を奪われていた。

              ‥‥‥‥‥‥‥‥

40代か、あるいは50代に入ろうとしているところか‥‥
こうして間近で見ないと分からないほどの小皺がバーテンの顔を彩っている。年季の
入ったその表情が女王様の威厳をかもしだし、私は目を奪われていた。
「ンッ‥‥ンンッ」
「‥‥」
深く唇を交わし、侵入してきた舌に前歯をくすぐられる。
懸命に閉じた歯をあっさり崩され、私の口腔はザラリとした感触に犯されていった。
初めての女性とのキスに呆然となった私の両手首を、唇を休めることなくバーテンが
後ろ手にねじりあげていく。
あいま、あいまの息継ぎにあわせ、唇を甘く噛まれて刺激にしびれてしまう。
「んッ、反応いいわ‥‥どんな縛りがいい? 後ろ手でも、鉄砲でも、合掌縛りでも」
「ふぁぁ、その‥‥‥‥‥‥後ろ手で、ぜひ」
「そう。エッチな子。そんなに後ろ手が好きなのね。マゾなんだ」
恥ずかしいことを口走ったと気づき、首まで赤くなった。意識がぼんやりして自分を
コントロールできなかった。カラダも脱力してしまい、ぐったりバーテンにしなだれ
かかっている状況だ。
心のどこかがマズいと警鐘を鳴らしていた。しかし理由に気づくより早く、ザラつく
二つ折りの麻縄の感触が重ねられた手首に吸いついてきた。ぴくりとふりむきかける
が、口を封じるバーテンの唇からとろとろと唾液を流し込まれ、反応できない。
「ふぅ‥‥いい? 拳を握っておいてね」
私の表情の変化を見つめるバーテンの瞳が、にいっと愉悦に微笑む。
次の瞬間、痛みに腰が跳ねていた。
手首の一番細い部分をとらえた縄が、二巻きしてギュギギ‥‥と食い入ってきたのだ。
あがく指を握りこまれたまま一度しっかり縄留めされ、さらに何重にも手首の周囲を
固めては念入りに縄掛けされていく。
(ウソ‥‥こんな、手首だけで念の入った縛り方を、どうして‥‥)
動揺に背筋が引き攣り、おののいた。
普通の縛りと違う。SMサイトや雑誌の写真でも、手首一つでここまで縄を打たれて
いる女性などみたことなかった。鈍い痺れが握った指先まで届く。明らかに、これは
私が縄抜けできないようにするための緊縛なのだ。
「ふぐ、ん、んくっ」
跳ねまわる私の裸身をしっかり抱き寄せ、縛りあげられた後ろ手の縄尻をつかんで、
バーテンがぐいっと容赦なく吊り上げた。肩や肘が悲鳴をあげ、絡みつく舌に言葉を
奪われてディープキスの奥にくぐもった息が詰まっていく。二の腕の外側から乳房の
上を通された縄がふたたび背中に戻って縄留めされると、もはや私は吊り上げられた
後ろ手を揺することもできなくなっていた。
バーテンが、やっと唇を開放した。ふぅっと深呼吸しかけ、狂おしい感触に息を呑む。
「簡単だけどね。これだけでもう縄抜けなんかできないの」
「ん、んく‥‥苦しい、です」
「当然よ。私を挑発した罰よ、奴隷ちゃん。胸が圧迫されて呼吸が浅いのよね」
問いかけられ、大きく胸を波打たせていた私は、声もなくコクリと頷く。
たった一本のロープを使っただけで、私のカラダは奇跡のように自由を奪われていた。
俗に高手小手と呼ばれる手首を吊り上げた縛りのせいで、腕を動かせない。指を開く
だけで、キリリと縄が食い込んでくるのが感じられた。
「ねぇ。どうして指を握らせたか知っている? えっと、早紀ちゃんだったかしら」
「いえ‥‥分からない、です」
嬉しそうに微笑み、できばえを確かめたバーテンが近寄ってきた。軽くひしゃげた胸
をふにふにと繊細にいじられ、思わず切なそうに喉を鳴らしてしまう。
「合気道で言う”朝顔の小手”。指を広げるとほんの少し前腕が太くなるの。縄抜け
の基本よ。だから拳を作らせて、一番細い手首に縄掛けしたの。ココに」
「‥‥!!」
バーテンのほっそりした指が、高手小手の手首を緊めあげる縄目をそっとなぞった。
鬱血させるほどきつく肌を這いまわる麻縄のライン。そこを嬲られ、緊縛の残酷さを
あえて実感させられる屈辱に、カラダの芯がグツグツと溶けていく。
嫌がったとしても、この姿で逃げ場などないのだ。
「これでもう、早紀ちゃんは絶対に、縄抜けなんかできないわ。注文どうり。あんな
コトいわれるから、少しムキになって虐めてみたのよ? 緩めてあげないから」
少し、残酷そうに。
そう言って、バーテンはくすくすと無邪気に笑った。
本来の歳をまるで感じさせない、威風ただようドミナの笑い声。
その台詞に反応もできないまま、裸身をミシミシ締めつける縄の激しさ、息苦しさに、
私はひたすら喘ぐほかなかった。喘ぎつつ、震えるカラダや手首を小刻みに揺すらず
にいられない。無意味な煩悶が苦痛を招くと分かっていても、身じろぎが止まらない
のだ。まるで、かさぶたを掻きたくて狂いそうになるのと同じ。
分かってはいた。
多分、私は縄酔いしてしまうだろうと。
セルフボンテージにのめりこむような女性は、少なからずM性を秘めている。だから
自由を奪われたという惨めさや無力感に溺れきってしまうのだ。
「ん、ッッ」
バーテンに知られるのが嫌で、唇を噛む。
等身大の鏡に映ったカラダは、裸の胸の上を一本の縄が横断しているだけの姿だった。
縄をたるませない目的の絞り縄さえ噛まされてない。プロの縄目というだけの、あっ
というまに完成したシンプルな緊縛にすぎない。
それが‥‥それが、こんなに、カラダをおかしくさせてしまうなんて。
「‥‥」
「どう、泣きそう? 泣いたって駄目よ。これはオシオキなんだか‥‥」
縄尻をつかんだバーテンが声をかけ‥‥そこで止まった。
容赦ない凝視に耐えきれず、目をつぶる。いや、嫌ァ‥‥全部、知られちゃう‥‥
「掘り出し物ね、あなた」
「!」
ずくんと、背筋をなまなましい疼きが貫いた。
耳の裏でささやいたバーテンが、耳たぶを柔らかに噛んだのだ。のけぞったカラダを
抱きとめられ、なおもバーテンが楽しげに囁いてくる。
「あなた、初心者みたいにカラダはこちこちなのに、しっかり縄酔いしているのね。
気持ちイイんでしょう? 我慢しないで。好きなだけ啼いて、私に喘ぎ声を聞かせて」
「くぅ‥‥ぅぅぅ」
「もっと綺麗に縛ってあげるから目も開けて。いいのよ、リラックスなさい‥‥」
あぁ‥‥
叶わない。この時、私は痛切にそう感じていた。
調教慣れしたテクニックとしゃべりかた。甘く優しくささやきながら、彼女の両手は
私を背中から抱きしめ、躯のあちこちを焦らすようにさわってくるのだ。
自縛経験の有無なんて関係ない。こんなにもプロの手管が圧倒的で、心乱されるもの
だったなんて。もう、抑制もきかなかった。ただひたすらに、この人の前でムチャク
チャに乱れてしまいたかった。
最後の最後まで、何もかもゆだねてイカせて欲しい‥‥
でも‥‥そうなったら‥‥
「こ、怖い‥‥」
「どうして?」
「‥‥命令を無視して、本当に、意識が、飛んじゃいそうな、気がして‥‥」
「それの何がいけないの。ね、目を開けてよ、子猫ちゃん」
耐えがたいほどジリジリとバーテンの片手がわき腹を伝い、下腹部へ向かっていた。
同時に乳房を下からすくい、はらんだ熱と汗ばむ量感を愉しむように掌で転がされる。
もはや目をつぶっている方が苦しかった。
不自由なカラダのせいか五感が鋭敏になり、じわじわ這っていく指の動きをなまめか
しいばかりに素肌で感じとってしまうのだ。
でも、目を開けたら、きっとそこにはいやらしく呆けた私の顔がある‥‥
「あなたのご主人様のことは、バーの外に出てから思いだしなさい。第一、そうじゃ
ないと私に失礼でしょう? 仕事の時間を割いてこんなに尽くしてあげているのに」
「ひンっ‥‥あ、あっ、いぁぁッ、そこは‥‥」
骨盤のあたりをまあぐっていた指がふっと離れる。そして、次の瞬間。
ツプリと音を立て、びしょびしょに熱いお汁の漲ったクレヴァスの花弁を押し開いた
バーテンの指が1本、根元までみっしり下腹部に埋まっていた。
「やぁ、らめぇぇ‥‥」
あのとき、何を叫んだのか、覚えていない。
ただ、思わず見開いた瞳の先に、茹で上がった顔を振りたくる私自身の卑猥な表情が
飛び込んできて‥‥あとはどうしようもなく、浅く苦しいアクメが押し寄せてきた。
目の前が真っ白になる。意識が一瞬遠のきかけて、なのに気を失わないほどの、絶妙
なもどかしい刺激の狂おしさに翻弄されていく。
息つぐ間もなく断続的な快楽が全身を揺らし、キリキリ裸身を身悶えさせて‥‥‥‥
全身でむさぼらないとどうしようもなくて、悲鳴がこぼれて‥‥
「ちょっとあなた喘ぎがうるさいわ。これでも咥えていい子にしてなさい」
「や、待っ‥‥ふぐッぅ」
それすら口実に利用され、鮮やかなボールギャグが私の唇を割って押し込まれていた。
ちょうど咥えこんだ口の中がパンパンに張りつめるサイズだ。思わず噛みしめた歯が
ボールギャグにあたり、閉じきることができない。
「んク‥‥かふっ」
「ふふ、奴隷らしくなってきたわ。そうやって素直に言うことをききなさい。ここに
いる間は私がご主人様なの。そういう約束、さっきしたものね?」
あごをつままれ、再び鏡越しに返答を迫られる。
なんて‥‥憐れなんだろう‥‥
こんな姿で、高手小手に縛られて、私に逆らえるはずなどないのだ。
悩ましく眉をひそめつつ、バーテンにいたぶられる自分自身に私の目は釘付けだった。
奴隷の惨めさに酔いしれつつ、コックリと頷く。バーテンの顔がほころぶのを見て、
なぜだか心がどきりとした。新たな麻縄の束を彼女がほぐしだす。
もっと縛ってもらえるのだ‥‥
それがセルフボンテージを困難にする物だと理解していながら、一度縄の味に溺れた
カラダは理性とうらはらに悦びで跳ねてしまう。
「よしよし。いい子。じゃ、もっと縛ってあげるから。待っていて」
「ん」
もう一度従順に頷く私の頭を、バーテンが優しくなでる。鏡に映った姿はまさに信頼
しあった女王様と奴隷そのものだ。
背後でどこかのドアが開いた。物音に一瞬きょとんとなり、はっと冷汗がにじみだす。
‥‥誰かが入ってきた!?
ここはたしかSMショップのはず。まさか‥‥
そんな‥‥お客に、浅ましい奴隷の格好を、見られてしまう!!
ギョッとして全身がこわばり、無意識に私はその場から逃げかけていた。
手首に激しく縄が食い込み、弓なりに背がのけぞってしまう。
かすかに怯えつつふりむくと、縄尻をひったてたバーテンが静かに私を睨んでいた。
「何をしているの。どこへ逃げるつもり‥‥?」
「かふっ、ふぅぅ‥‥」
「見られて感じる淫乱なマゾのクセに、従業員には会いたくないの。身勝手な娘ね」
バーテンを怒らせてしまったらしい。淡々と色のない口調に、かえって身がすくんだ。
違うの、勘違いして、お願い‥‥すがりつく哀願の視線も彼女には届かない。ボール
ギャグに言葉を奪われ、誤解を正すこともできないのだ。
近くの陳列棚に近づいたバーテンは、緊縛の縄尻を一番高いところの柱に結わいた。
自然とカラダを引きずられ、棚のすぐわきで爪先立ってしまう。
「いいというまで待っていなさい。分かった?」
「‥‥ふぅぅ」
がっくりとうなだれ、小さく頷くのを見届けてバーテンは扉の向こうに消えた。沈黙
の下りた店内に、くぐもった私の息づかいだけが響いている。
私‥‥私は、どうしたらいいんだろう‥‥
ふるふると身を揺すった途端、高々と吊り上げられた後ろ手の縄目がギュチチと軋む。
深々と咥えさせられた猿轡がわが身の情けなさを再認識させ、非現実的な今の状況を
身をもって思い知らせていた。
いやらしく、浅ましく、絶望的な緊縛を施されてしまった私。
セルフボンテージの道具にバーテンを利用するつもりが、いつのまにか完全に彼女の
奴隷として扱われ、あまつさえこうして緊縛姿で放置されてしまっているのだ。
もし今お客が入ってきたら、私はどう目に映るだろう。
誰もいないSMショップの店内にポツンと拘束された裸の女性。
だらだらボールギャグから涎をたれ流し、丸出しの股間はびっしょり愛液まみれで。
都合よく発情したマゾ奴隷がいたら、その場で犯されたり、しないのだろうか?
襲われても、このカラダでは助けも呼べない‥‥
冷たい恐怖が背中をはしり、縛められた裸身がいやな感触にきしんだ。濡れそぼって
いた下腹部から、波の引くように疼きがさめていく。
今すぐ縄を解かなければ‥‥
「んグっ」
身じろいだ瞬間、手首の痛みに呻きを漏らした。少しでも手首を下げようとすると、
それだけで痛みが走る。縄を解くのは不可能だ。せめて縄尻をほどいて棚のわきから
移動したいけれど、頭より高い位置で結わえられていて手の出しようもないのだ。
あらためて戦慄がカラダを震わせる。
この姿がいかに無防備で、いかに無力な存在なのか。
どうしたらいいのだろう‥‥
カチリと背後で響く音に、弾かれたように私は振り返った。棚の影で誰だか見えない。
「私よ、落ち着きなさい。そんなに怯えないの」
「‥‥」
バーテンの言葉に、トリハダだった肌が徐々に静まっていく。
だがあらわれたバーテンの背後を見て、私は驚きのあまり硬直していた。
同じように火照った肌、縄の食い込みでひしゃげたカラダ、目隠しに革の口枷‥‥
「今日のSMショーに出る子なの、彼女。あなたの先輩に当たるわね」
「ンッッ!!」
耳は聞こえているのだろうか。見えない第三者の存在に気づいて、彼女が身をよじる。
その姿‥‥私の前にいたのは、私よ同じように縛られた女の子だった。
ペットさながらに首輪から伸びるリードを引かれ、足元をふらつかせている。
「この子に奉仕してあげなさい。快感を与えてあげるのよ」
「‥‥くぅ?」
つかのま、私は混乱しかけた。
縛られて、口枷もされて、手も口も自由につかえないのに‥‥?
息苦しいボールギャグを圧迫された舌でつつき、何もできないとバーテンに強調して
みせる。苦笑したバーテンは私のあごを指でつまみ、語りかけた。
「やり方は自由でいいの。この子は刺激に飢えているから、感じさせてあげて。その
間に、私があなたのカラダを」
片方の手に持っていた縄の束を私の素肌に這わせながら、
「ここも、ここも、ココにも‥‥みっちり縄を這わせて、感じさせてあげるわ」
「ひっ‥‥ン!」
「分かったわね。さ、初めて」
さっきと同じように私の背後にまわったバーテンが二つ折りの縄をしごいている。
奴隷同士の虐めあい‥‥そんなことを強要されるなんて‥‥
おののきで、カラダがブルリとよじれた。


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