飼育 二日目

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まどろみからの目覚めはごくゆるやかなものだった。
ぽうっとした意識がけだるく昂ぶっている。
耳に届くのは、ゴウンゴウンという振動に、なにか爆ぜる音。
目を開け、朝のはずなのに真っ暗な世界につかのま混乱する。顔に触れようとした手
がギッと固い感触に引き戻され、そこでようやく、昨夜のことを思いだした。
――私は、ご主人様の奴隷になったのだ。
――私自身の望みどおりに――
ほんのり頬が赤らむのが自分でも分かる。
しっかり押し込まれたボールギャグが、言葉を剥奪する口枷が、実際おかれた立場を
いやでも意識させてしまう。
人としてでなく、調教され、可愛がられるだけの奴隷としてむかえる最初の朝だった。
ふつふつ悩ましく火照る裸身をシーツの上でくねらせる。
セルフボンテージで『嵌まって』から一日半。ずっと同じ姿勢で拘束されていた手足
の関節も今はほぐれ、普通に動かせるようだ。
私自身も、簡単な拘束を施されただけで、ゆったりと寝かされている。目隠しは相変
わらずながら、手首を緊めつける革の手枷は左右の太ももと手首同士を繋いでいて、
無防備な拘束姿とはいえぐっすり眠れたらしい。
気がつけば、寝ているシーツまでがいつのまにか清潔なものに取りかえられていた。
ということは、あの振動はつまり、お漏らしをしたシーツを洗っている洗濯機の音。
何から何まで、かいがいしいばかりにお世話をして頂いて。
私のご主人様は、本当に‥‥
どうしようもなく、思うだけで溶けてしまいそうなほど、優しい人らしかった。
「ンッ、ンフゥゥ」
つくんつくんと下腹部を蕩けさせる秘めやかな振動にギクギクと背が突っ張る。
こんなところは‥‥ンッ、やっぱり、いじられっぱなしで‥‥
ほんの少し、朝からの刺激を恨めしく思いつつも、下腹部を責めっぱなしの器具から
しみわたった被虐的な刺激に身をゆだねていく。みっしりクレヴァスを爛れさせる
バイブの重みが消え、代わりに小さなローターらしき振動が女の合わせ目のつけねで
もっとも敏感な肉芽をじわじわ炙りたてていた。
「ンッ、ふぅぅぅン、はぅッ!」
意識したとたん、快楽の奔流がゾクゾクッと一気に背筋をうねってほとばしりだす。
もどかしいばかりの弱々しい振動だから、かえって敏感に下半身をよじらせちゃって
腰の動きがとまらない。そこばかり意識が集中しちゃって、ほかへの注意がすっかり
おろそかになってしまうのだ。
恥ずかしさも忘れ、腰を浮かして感じやすい場所を探していく。
うん、この角度‥‥ちょうどクリトリス全体がピリピリって痺れて、気持ちイイ‥‥
「おはよう」
「!!」
足音も前触れもなく男性のカラダが覆いかぶさってきて、本気でおののく裸身がピク
ピクンとあゆのようにベットの上で跳ね踊ってしまった。
「ンッ、ンフッ」
「!」
力強くからみつく腕に抱きしめられる。
チュっと、くすぐるようにして暖かい唇が頬をくすぐり、顔を覆う革マスクの上から
ボールギャグのふくらみにそって唇が這っていく。
目隠しの下でゾクゾクあおられている私を誘うように、柔らかな感触はゆるゆる首元
まで這いおり、そこでいきなり、鎖骨の下あたりをちゅるりと舐めあげる。
敏感すぎる肌が激しい反応をおこして‥‥
「ヒッ!! ンッ、くぁ‥‥あぅぅぅぅぅン、いぅぅ」
のけぞったカラダを、濡れた下半身を、後先も考えずご主人様にこすりつけた私は、
心の準備もできぬまま絶頂の悦びを極めさせさせられてしまっていた。
嬲る指先に肌をすりつけ、しとどな喘ぎ声をもらす。
おはようございますの返事のかわりに、声を奪われた唇から本気の喘ぎ声をこぼして。
とろーっと内股をつたう私自身のオツユが、いっそう事態を悩ましいものにする。
うぁ、あぁ‥‥ン‥‥
恥ずかしい‥‥目覚めのキスで、私、イかされちゃった‥‥



磔の横木から解放され、よつんばいの姿勢で獣の拘束具を装着させられた。
ご主人様の手に導かれるままフローリングに肘と膝をつき、束縛の枷を施されていく。
生まれたままの裸身が、毛を逆立ててぷるぷる震えている。きっとはた目には、期待
と興奮で紅潮し、発情期の獣に似つかわしい桜色にゆだっているのだろう。
首輪のリードをつながれ、惨めさに裸身が引き攣れた。
ご主人様は、私をマゾのペットとして調教し、仕立て上げるつもりなんだ――
「う、うぐ」
気づいた瞬間、信じられないほどの快感が電撃となって裸身を流れくだってゆく。
人以下の存在として、惨めに扱われて燃え上がってしまうカラダ。
セルフボンテージを重ねるうち無意識に誘導され、今やこの裸身はそら恐ろしいほど
ご主人様好みに仕上がってしまっているようだ。
おずおずと目隠しのまま顔を振る私に、今日始めてご主人さまが囁きかけてくる。
「おはよう、早紀。似合ってるよ」
「う、あふぅぅ」
思わずくねったお尻を撫でまわされ、双丘の谷間に指が入りこむ。ふりふりと可愛い
お尻をふらなくてもいいんだよ。そういわれた気がして、耳まで赤くなった。
「よしよし。じゃ、朝食だ」
ぐりぐり頭をなでられ、じぃんと深いところを甘い愉悦がみたす。ただ一言でこんな
にも嬉しくなる。飼い主に裸身をすりつける私は、身も心も堕とされたペットだった。
リードを曳かれ、おそるおそる4つ足で室内を歩かされる。
お尻を振りたてる浅ましい歩行で怯えつつもいやおうなく感じてしまうのは、無意識
に私が彼を信頼していられるからなのだろう。
長い間‥‥
このひとときを、セルフボンテージに魅入られたあの瞬間から待ちわびていた。
本当のご主人様に躾けられ、調教され、服従の身を嬲られて。
なまなましい部屋の空気さえドロリと私を愛撫し、エッチなオツユをしたたらせる。
「おすわり」
「ンッ」
「口枷を外すけど、『ワン』以外言っちゃいけないよ。破ったらオシオキだ」
「んんぅぅ!」
「じゃあ朝食抜きかな? うちのペットは」
思わず口を尖らせた私は足の甲でオッパイをたぷたぷされ、抵抗もむなしくたちまち
甘い喉声を漏らしてしまう。ひどいコトをされているのに、たまらなくイイ‥‥
おとなしく頷き、口枷と目隠しを外してもらった。
目に映るのはリビングの床スレスレ、まさにペットの世界だ。正面の柱がテーブルの
足らしく、そこにリードが短くまきつけられている。右隣に、ご主人様のぬくもり。
そして、私の鼻先に‥‥
「‥‥!?」
ゾクゾクッと、背筋が波打った。
正面、テーブル下の定位置にはキャットフードをペチャペチャむさぼるテトラがいて、
その手前、私の鼻先に置かれた小皿には、スクランブルエッグとソーセージが私の分
の餌として盛りつけてあったのだから。
ペットと鼻つき合わせて四つん這いでの餌付け。
飼っている子猫と一緒に、自分までペットとして不自由なカラダで食事を取らされる。
どうしようもない浅ましさ、屈辱、くらりと眩暈。
すべてが戦慄となり、私の心にひそむ、いやらしい女の芯を直撃していた。
下半身で咥えっぱなしのバイブを、キュウウッと千切れんばかりに緊めつけてしまう。
意地悪い‥‥こんな、あんまり‥‥
情けなくて、そんなことに従ってる自分が、いとおしくて‥‥おかしくなる‥っ‥‥
ご主人様は、黙ったままテーブルの上で朝食を始めているようだった。
「あ、あの、ご主‥‥」
「こら」
身を起こし、顔をあげて訴えかけたとたんキュッと足で背中を踏みつけられた。
ドキッと鼓動が乱れ、いやおうない圧力に顔を低くして伏せの姿勢をとってしまう。
やはりご主人様は顔を見られたくないのだろうか。でも、それだって足でなんて‥‥
絶対的な奴隷と主人の格差にすくみあがる。
「ワン以外はお仕置きだよ、早紀。分かったら返事」
「‥‥」
「返事は?」
低いささやきはからかうようで、ぐりぐりと足で体ごと押さえ込まれてしまって。
反発もできず、辱められて声も出せずにいる私は奴隷なのだ。
優しくない‥‥
不意に、そんな思いが心をよぎった。
私、調教だって、こんな本格的なのは始めてなのに、もう少し優しくたって‥‥
いきなりこんなだと、私、くじけちゃう‥‥
「‥‥わ、ワン」
返事する声に、多分、少しだけ泣きべそが、嗚咽が交じっていたのだろう。ご主人様
の足がどけられ、一度だけ、上から覆いかぶさるように屈んで腕を回してきたご主人
様に、裸身を、乳房を、腰を、あやす手つきで抱きしめられた。
震えをとりのぞくように這う繊細なタッチが官能をくすぐって、鼻声で鳴いてしまう。
「ふぅン、ん、ンンッ」
「可愛いペットだよ、早紀は」
「ぅぅ‥‥」
どうしてなのだろう。
どうして、もう、私はご主人様の調教から、逆らえないでいるのだろう。
調教行為の底を流れる、ご主人様の愛情にくるまれた気分になってしまうのだから。
「ンッ」
鼻をすすり、顔を小皿につっこんで食事をはじめる。手をつかうことなどできない。
目の前で前足を舐めるテトラが鏡写しの自分のようで、つぶらな瞳にさらに煽りたて
られて、それでも顔中をベタベタに汚して朝食をたいらげていく。
いやらしい姿の私。
子猫と一緒に犬食いを強いられ、そんなので下半身までグチョグチョにして、自分で
も聞き取れるぐらいクチュクチュあふれるオツユで太ももを汚しちゃっている。
んぐんぐと口だけでソーセージをほうばる格好。これだってメタファーそのもの‥‥
「んっ、ひゃぁンン!!」
かじりついたソーセージがぷちっと弾け、肉汁が顔にかかって私は悲鳴をあげていた。
お尻を高くつきあげ、へっぴりごしになる‥‥その顔を、清潔なタオルを持った手が
ぬぐってくれる。
「んっ」
口一杯にソーセージをほおばったまま、私は、わけもなくその手に頬ずりしていた。
浅ましい奴隷にできる、精一杯の、これが、愛情表現で‥‥
おねだり、なのだ。


             ‥‥‥‥‥‥‥‥


朝食を終えた私はふたたび目隠しと口枷を噛まされ、一匹の従順なペットに戻った。
裸の上にまとう単純な後ろ手の手枷。縛めと枷は、私の心を奴隷へと作り変えていく。
『してもらいたいこと、ある?』
「んふ‥‥?」
『ムチでも、蝋燭でも、緊縛でも。して欲しいこと』
乳房をたわませ、ご主人さまが指文字で話しかけてくる。猿轡を噛ませておいて、私
の反応をうかがうために、そして羞恥をあおるために、わざとそんな問いかけばかり
してくるのだ。
ベットに横たえられた私のカラダは、背中からしっかり抱擁されていた。
密着感と甘い男性の息吹、睦みあう男女の体勢が心地よい。
執拗に濡れたクレヴァスをまさぐられ、ボールギャグを噛みしめて顔を赤くさせる。
秘めたこの場所を男性にいじられるのは本当に久しぶりで、繊細な手つきが背徳感を
かきたてて、のびあがって逃げるカラダを抑えつけられるのが憐れで‥‥
ふと、あることに気がついた。
自分でも意識せずにムズムズと逃げてしまう私の下半身。エッチな昂ぶりとは違う、
これは、いわゆる生理的欲求‥‥
「ん、んーーーっっ」
『どうしたの、早紀。やけに嫌がるね。もうやめるかい?』
「くぅ、うふぅー」
違う、違うったら、そんな変な焦らし方をされても、私‥‥
しだいしだいにこみあげる尿意が、間断なく腰から下を震わせる。ご主人様の愛撫が
なお尿意を加速させてしまうから、だから腰をいざらせてシーツにのめりこんで。
知られたくない、我慢したい、けど、このままだと堰が切れて‥‥
『‥‥トイレ、か』
ビクッと震えた。
おそるおそる、こくりとうなずく。
このあと、どんな目に会うか‥‥私はじゅうぶん承知していた。
ここで自由に解放してくれるようなご主人様ではない。きっと、さらに私を‥‥
『トイレの躾も飼い主のつとめだったな。トイレに行こうか、早紀』
追いつめようと、する。


「んぐ、ふぅっ‥‥んくぅぅ」
もがき、身をよじり、いやいやながら私はトイレまでひったてられた。
自分でできるから、だから手枷を外して‥‥身振りで訴えたところでご主人様が満足
するはずもない。あきらめ、不自由なカラダをご主人様の手にゆだねる。
便座に座らされ、ドアを閉じて狭い個室にぎゅう詰めになった。
じっと見下ろす視線の圧力をビリビリ感じる。おしっこ出さなきゃと思っても、見ら
れる緊張で膀胱がきゅっと締まってしまい、すぐには出てきそうにないのだ。
頬なんかピリピリ、痛いくらい紅潮している。
目隠しも口枷も、赤面し、うろたえる私の表情を隠してはくれない。
お願い、お願いですから私を見ないで‥‥
「リラックスして」
「!?」
甘い吐息を耳もとに浴びせられ、私はなすすべもなく後ろ手のカラダを捩じらせた。
近々とくっついてきたご主人さまが、妖しい手つきで愛撫を再開する。あろうことか
緊張に震えているお股に指をさしこみ、同時に胸から指を滑らせていく。
だっ、ダメ‥‥こんな時に、そ、そんな‥‥
「ほらほら、出しちゃいなって」
まるで子供のように無邪気な命令に激しくかぶりをふった瞬間、堰を決壊したそれが
シャーッと激しい勢いで下腹部を駆け抜けた。
や、ダメ‥‥
あっと思う間もない。おしっこを見られる、その心の準備さえできぬうち、ゆるんだ
尿道から勢いよく水音をあげて、おしっこがあふれだしていく。
「‥‥」
「ん、あぅ」
ボールギャグを噛みしめ、頬をうつむけて視線に耐える。
安っぽい煽り文句でないご主人様の沈黙が、かえって私の羞じらいと悩乱を深めた。
見られてる、卑しい、はしたない排泄行為を、あまさず見られてる‥‥
止まらない‥‥まだ、まだまだあふれてる‥‥
出きったおしっこが湯気をあげ、ぽたぽたっと残りの雫がまとわりつく。トイレット
ペーパーに手を伸ばしかけ、ぐっと手首に食いこむ手枷ではっと気がついた。
「‥‥」
「う、うぅぅ」
「‥‥」
「ン、くぅ」
うらめしく、ご主人様をみあげる。まぶたの下まで火照ってしまうほどの惨めさだ。
拘束されてるから、おしっこさえ自分でふくことができない‥‥
「拭いてほしい?」
囁かれ、コクコクと首を縦にふった。鼻を突くアンモニアの匂いがますます私を赤面
させる。はしたない後始末までご主人様にしていただく‥‥ポッポッと顔が火を噴き、
もうろうとして理性さえさだかではなかった。
柔らかく拭くご主人様の手のぬくもりが、なおさら羞恥心を沸騰させるのだ。
「どうせだから、こっちもしちゃいなよ」
「‥‥くふぅぅ!!!」
急にその手がお尻をくりくりっといじり、とたん、強く強く排泄の欲求を覚えていた。
そうだ‥‥
さっきの感覚は、ただ尿意だけじゃなかったんだ。
ご主人様の前で緊張して、だから、ずっと我慢していた生理的欲求が‥‥
「う、うぐぅぅぅ」
「俺は気にしない。大丈夫だよ、早紀」
「あふ、あ、っはぁぁ」
猿轡から洩れる悩ましい喘ぎが呻きへ、そしてすすり泣きめいた諦めに変わっていく。
お尻を、そん、そんなに激しくいじったら、虐められたら。
ダメ、汚いの‥‥全部、出ちゃう‥‥
私、もう限界で、だから、これ以上、む、無理、我慢なんか‥‥
あ‥‥‥‥


              ‥‥‥‥‥‥‥‥


「かわいかったよ、早紀。お尻をヒクヒクさせて」
「くぅぅ」
ご主人様のからかいに、やっとの思いで返事する声は消え入りそうな喘ぎだった。
ぐったりした裸身を抱えられ、流したトイレからつれだされる。
私‥‥なにもかも、見られてしまった‥‥
何もかも、一番汚いとこまで見られて、うぅ‥‥恥ずかしい思いがおさまらない‥‥
全身をうち震わせる恥辱のわななき。
Hな小説で浣腸されたとたん従順になってしまうヒロインの気持ちが、いまほど、嫌
というほど分かったことはなかった。
この恥ずかしさ‥‥打ちのめされた感覚‥‥本当に、立ち直れそうにない。
ご主人様と目を合わせることさえできない気分。目隠しをされてなお、おさえようの
ない羞恥で顔を伏せてしまう。
もっとも秘めておきたい部分を、もっとも憧れていた異性に見られてしまったのだ。
エクスタシーを見られるより、恥ずかしい自縛の現場を取り押さえられるより、なお
みっともない生理的欲求をあまさずみられてしまって。
胸のうちにわきあがるのは、はかない諦めと、深い深い従属の心だった。ご主人様に
逆らえない、あんな下の世話までされて、素直に調教されるほか、私には尽くすすべ
がない‥‥
ご主人さまが胸に指文字を描くのを、ぼんやりと意識する。
『俺は少し出かけるけれど、君はどうする?』
「え、あぅ‥‥う、ぁ」
『どんな風に調教してもらいたい? どんな縛られ方をしていたいかな?』
おっぱいをなぞる文字を理解して‥‥
瞬間、怒涛のようなイメージが頭を駆け抜けていった。
ご主人様に会ったら頼みたかったこと。して欲しかったこと。そんなもの、言われる
までもない。本当に、数えきれないほどの願望があるのだから。
猫のように一晩中かわいがられたい。
屋外に連れ出されて、恥ずかしい晒し者にされてみたい。外でエッチなコトされたい。
ムチの味を知りたい。吊るしぜめにされたい、逆海老に緊縛されてみたい。あの人と、
ご主人様の前の彼女と‥‥
佐藤志乃さんがされたのと同じ事を、全部私にして欲しい‥‥‥‥!!
「‥‥ふふ」
知らぬ間にひくひく跳ねていたのか、私の仕草に何かを感じたらしくご主人様は薄く
微笑んだ。いとしいものを撫で回すように、私のカラダにすみずみまで指を這わす。
「そうだな」
ご主人さまが、私の心に刻み込むかのように、自分の声で呟いた。
「早紀に、俺の縄の味を教えておくか」


ギヂッ、ギュチィィ‥‥
激しい縄鳴りをあげながら、熟れ爛れた女の柔肌を麻縄が喰い緊めていく。
「うぐッ、あ、はぅ、はふぅぅ‥‥んなァァ」
たえまない疼痛と疼きが灼りつく裸身を絞り上げ、情欲をそそりたててゆく。
ただ一本の縄で自在にコントロールされ、悔しくも甘くよがり、むせび泣かされる。
惨めに操られ、あらがうこともできず蛇のように腹をのたうたせ、指の関節にまで、
縄をまきつけられて。
そのいやらしい縄目の餌食となっているのが、私自身のカラダ‥‥
火照る裸身はベットの上でうつぶせとなり、後ろ手の逆海老縛りで転がされていた。
ひときわ引き絞った足首の縛めが後ろ手の結び目に短くつながれ、私は完全に自由を
失ってしまう。
『柔らかいね、早紀のカラダは』
「ンッ」
囁きつつの縄さばきと同時にご主人様の下半身が肌をこすり、私は真っ赤になった。
ご主人様もこの姿に欲情してくださっているのだ‥‥
見られる快感はひときわ恥ずかしく、暖かい。
目隠しを外された私がご主人様の背中ごしに目にしたのは、私の視線にあわせて角度
を変え、あますところなく灼りつく裸身を映しだす全身用の姿見だった。
非日常的なSMバーとは違う、ほかならぬ私自身の家。OLとしての私の部屋。その
生活の匂いさえしみこんだベット上に、被虐的に淫靡な湯気を立ちのぼらせる肉塊が
コロンと無造作に転がされている。
痛々しく発情しきったソレは、見る者の目を愉しませる扇情的な剥き身。
乳房をくびられ、V字の首縄の重みに喘ぎ、ウェストを絞られて細身の柔肉をたわま
せられ、後ろ手の手首にかっちり縄が噛みつく愛玩用のかなりきつめの緊縛だ。
見栄えのする縄目と恐ろしいほどの拘束感が、ギジ、ギュチチと縄鳴りをあげて私の
心をからめとっていく。
『行ってくる。おとなしくお留守番をしているんだよ、早紀』
「ン」
かろうじてコクリと首を揺すり、私はうなずいた。
見送りの挨拶をしようにも、歯の裏にしっかり咥えこむ口枷は、いつかのネコ耳つき
の、あごの下まで押さえ込む酷いボールギャグに取り替えられている。私の代わりに
みゃーとテトラが喉声をあげ、ご主人様は小さく肩を震わせてリビングを後にした。
室内に、静寂と沈黙がもどってくる。
かすかにカラダをゆらし、とたんアナルビーズに犯されて悲鳴をこぼす。
ひっきりなしにひくつくお尻には、尻尾つきのアナルビーズが入れられている。連な
った丸いつぶつぶが、腸壁をこそぎとっては汚辱の感触で私を啼かせてしまう。
ご主人様を見送る妻‥‥とはとうてい行かない。
見事なアーチを描く逆海老縛りで放置されたこの私の姿は、むしろテトラと変わらぬ
もう一匹の、それも手のかかるペットだった。
完全なセルフボンテージの失敗から、いつしか本当の調教へ。
絶望から絶望へ‥‥
ご主人様の縄掛けは、緊縛の手口はあまりに鮮やかで、これほど拘束を施されながら
カラダにかかる負担はほとんどない。ギシリギシリ身悶えるたび、私の被虐のツボを
押さえたかのように全身を圧迫感が緊めあげ、からみつき、できあがった肌を煽って
まとわりつく。
もし、これでご主人様の身になにかあったら。
びっちり柔肌に吸いつく縄装束を施され、叫ぶことも逃げることも、ありとあらゆる
生殺与奪の自由を奪われた私は、今度こそ‥‥助からないだろう。
誰にも知られず、誰の助けもなく、一人、無力な裸身を波うたせてよがり狂いながら。
この恥ずかしい姿で、最後を迎えることになる。
「‥‥」
ふふと、ひとりでに変な笑みがこぼれた。
私は‥‥本当に、もうどうしようもないほど、根っこの部分はエッチな人間らしい。
とめどない妄想ばかり思いついて、ゾクゾク自分自身を煽っているのだから。
そんなことありえない。
だって、私はすでに一度、危なかったところを助けられているのだから。
(‥‥本当に?)
絶えず疼き、ヒリヒリと、たえまなく甘い悦びの血脈がどくりどくりと皮下を流れて
たゆたっていく。じわじわ裸身をむしばむ淫らな期待が意識をぼんやりさせ、現実を
薄いベールにおおってしまっている。
いうなれば、これは夢の世界。
心を溶かす夢に魅入られて、私は従順に淫乱にしつけられていく。
我慢することもない。好きなように、気持ちよく、調教を受け入れていればいい。
「んっ、んふぅぅ」
不自由な肢体は、なかば吊られたような状況になっている。
足首と後ろ手を結ぶ縄が上から垂れる別の縄で作られた輪をくぐっているため、ほん
のわずか躯が浮かされてしまう。重心を前にかけると輪が足首の方にずれ、後ろ側に
体重をもどすと上体が少しだけ浮く。
このかすかなアンバランスが、私の身悶えを縄のきしみにつなげ、縛られたままでの
甘い悦楽をつくりだしていた。自ら悶えることで、好きなように全身を軋ませ、縄の
味に酔いしれてしまうのだ。
「あっ、あふぅぅ‥‥ふクッ」
トクン・トクンと動悸を逸らせ、のぼせた意識でご主人様のことを思う。
ご主人様‥‥私に佐藤志乃宛で拘束具を送りつけ、セルフボンテージの世界へと引き
こんだ悪い人だ。昨日の話でも、この部屋に住むのが志乃さんじゃなく私だと知った
上で、私を誘いこんだといっていた‥‥
あれほどに待ちわびたご主人さま。
なのに、どうしてか、彼は顔を見せず、声も聞かせてくれない‥‥
話をする時でさえ、できるだけ声をきかせたくないようだった。短い会話のやりとり
以外はすべて、乳房に指文字を書いて意志を伝えようとしている。
なぜ、だろう‥‥
顔を知られたくない‥‥ひょっとして、私の知り合い?
分からない。それどころか、カラダがとろけて、思考さえろくにまとまらない。
「はぁぁン、うァン」
いきなりバランスを崩し、ぼふっと顔からシーツにのめった私は、深々とクレヴァス
・アナル両方の内壁を器具で同時にこそぎ取られ、しびれきっていた。
たえまなくあふれかえる甘い愉悦の波。こんなのが、ご主人様が戻ってくるまで今日
一日ずっと、ひたすらに続くのだ‥‥
窓の外はまるで明るい。まだ昼でさえないぐらい、このまま、ずっと放置されて‥‥
これは、夢なのだろうか。
ふと思う。
あるいは、もうろうとした意識がみせる最後の幻覚に溺れているだけで、本当の私は
ずっと今も助けもなく、無残に拘束を施されたオブジェとなって安置されているまま
ではないのだろうか?
男性が、ご主人様が顔を隠すのは、本当は、そんな人がいないからじゃないだろうか。
想像もつかないから、こういう形にされているのではないろうか‥‥
分からない‥‥
ただ、カラダが熱くて、とりとめがつかない‥‥
どこか物足りないとでもいいたげに、私のクレヴァスはひくひくと熱く蠢いている。
犯されるのは怖い。むりやりはイヤ。でも、私は、ずっとあの人を待ちわびていた私
は、今では『ご主人様に抱かれたい』とまで思っている。それだけは、たしかで。
奇妙な気持ちだった。
自分から、まだ顔も知らぬご主人様の躯を求めてしまっている。
私は、ご主人様に犯されたいのだろうか‥‥
「あぁふ、ぃグ」
涎をしたたらせ、ボールギャグに歯を立ててこみあげた快感をのみくだす。
セルフボンテージで馴らされきった放置責め。
その中で、ご主人様に施されたこの緊縛は、かぎりなく完璧に近かった。
愛撫や揶揄の台詞で煽られ責め立てられ、なかばムリヤリ一足飛びに被虐のステップ
を駆け上っていく、あの苦しいエクスタシーとはまた違っていた。
湯舟に身を沈めたような、ゆるくたゆたう高揚感。
どうせ、どうあがいて四肢を突っ張らせたところで、今の私は後ろ手の指先まで固く
縛り合わされているのだ。
蹂躙され、発情する裸身はまさしく緊縛のオブジェそのもの。
目の前の姿見を見つめ、悶える様と現実の触覚を擦りあわせながら、さらに自発的に
カラダを熱くグズグズに脱力させていく。
私自身でなく、ご主人様の手によって徹底的に緊めあげられたこのカラダでは何一つ
抵抗など叶わぬ身なのだ。ただひたすら、不自由な裸身を心ゆくまで悶えさせ、その
惨めさに酔いしれて、被虐の波間をただよいつつ上気し、昂ぶらされ、のぼせていく。
縄目が残酷であるがゆえに、束縛のリズムはむしろゆるやかに。
鼓動の速さで一歩ずつ、着実に、禁断の甘い官能を搾りとっては蜜を喉へと流しこみ。
無慈悲に縄打たれた奴隷の身で、煩悶の悦びを極めさせられてゆく。


             ‥‥‥‥‥‥‥‥


ふわふわと、手足が宙に浮き上がったようで感覚がまひしかけている。
比喩ではない。長いこと縛られっぱなしの手足がしびれ、それが痛みではなく、心地
よい陶酔となって全身をかけめぐっているのだ。
イイ‥‥
気持ちイイ‥‥酔って、縄の味に溺れて‥‥いつかのバーの一夜のように‥‥
嬲りつくされた身は軽く波打たせるだけでギチチリッと幾重もの縄鳴りを呼び起こし
合奏となって肌を食む。狂おしい快楽の調べばかりが、私をドロドロに中から溶かす。
おま○こが、べちゃべちゃで、もう、たまらない‥‥
いっぱい奥深くまで突き刺されて‥‥思いきりかき回されたい‥‥
このまま、縄掛けされたままで、玩具のようにあしらわれて‥‥男性の強い手で‥‥
『ちょっと、すぐそこまで買い物に行ってきたよ』
「?」
うつろな意識を引き戻すと、いつのまにかご主人さまがいた。
出かける時と違って顔を隠そうともしない。サングラスに風邪用のマスク、いささか
不審者じみているけど、見てとれる顔の輪郭は想像以上に若々しい男性のものだった。
オッパイをなぞられた痕が、うるしでも塗られたように腫れあがる。
ぱっつんぱっつんに爛れた乳房は、指文字だけでめくるめく快感をしみださせるのだ。
すご‥‥すごすぎる‥‥
ご主人さま、もっと、もっと私を、私を虐めて‥‥かわいがって‥‥
会話なんか二の次で、自分からふりふりとくびりだされた胸を押しつけていく。
苦笑しつつご主人さまがギュウっとオッパイを絞ると、頭の中で火花が弾けとんだ。
先の方なんかビリビリってしびれてしまって‥‥
イク‥‥気持ち、イイ、よすぎて、イっちゃう‥うぅぅ‥‥!!
「んんぐ、む、っふ、うぅぅぅぅ‥‥」
『買い物って言うのは早紀を調教するためのものでね』
「はふっ、ンァァァァ‥‥!!」
『すぐ近くのSMショップでね、早紀を責める道具をそろえてきたんだ』
「‥‥っ、ひぅ!?」
唐突に不自然な動悸が私をとらえていた。
このマンションの近くにあるSMショップ。この町でそんな場所は一つきりだ。駅前
の繁華街の雑居ビル4Fの『hednism』 。私の知っているもう一人のご主人様のお店。
そもそも、発端はあれだった。
屈服したら一生彼女のモノになる‥‥奴隷か、自由か‥‥
私自身を賭けた調教で屈服し、丸一日彼女の奴隷となる約束を交わした私は、その時
のことを思い返していて衝動に駆られ、絶望的なセルフボンテージを始めてしまった
のだから。
彼女との約束はまだ生きている。
私はご主人様の奴隷だ。けれど、あの女性との約束だって、破るわけにいかない‥‥
『さぁ、早紀もしたくを始めようか』
「‥‥‥‥!?」
甘い息の下、物思いにふけっていた私はご主人様の声でわれにかえった。
厳重な縄を解かれ、どこか残念に思いつつ自由を取り戻す。
何をされるのか分からぬまま、ご主人様に急かされてふたたび4つんばいのポーズを
とらされた私は、今度はケモノの拘束具を嵌められていった。朝よりもずっと厳重に、
革のロンググローブも、底厚の肘パッドも取りつけられる。
浅ましいことに、自由になったばかりの私は期待と興奮で裸身を熱く昂ぶらせていた。
両手、両足ともぎっちりベルトを絞られ、太ももと足首、手首と肩がくっつく拘束姿
で、もはや肘と膝でよちよち歩きするほかないというのに。
さっきよりずっと不自由な、完全な4つ足のケモノ‥‥
このカラダで、私はどんな恥ずかしい調教を強いられるというのだろう。
顔を上げる私は、きっとボールギャグと革マスク越しにもはっきりと嬉しげに見えた
に違いない。
頭をなでられ、首輪のリードをとらえられて、これで私は完璧にご主人様のモノだ。
低く、深く、そして嬉しそうに‥‥ご主人様が呟いた。
「さぁ、メス犬の夜のお散歩に行こうか、早紀」
「?」
「室内じゃない。マンションの外へ、その格好で公園まで歩いていくんだ、早紀は」
思わず窓の外を見る。
外は、まだ夕暮れにさえ程遠い、晴れ上がった午後だった。


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