10月のサマーカクテル その5

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 見つめあう瞳と瞳が、スタンドライトの光で輝き、うるんでいる。誘われるまま抱擁し、
そっと上体を起こした。僕の腕の中で、しなやかに彼女が身をよじる。
「や、やっぱりお風呂、先に行っとけばよかった‥‥汗かいてて、匂っちゃうから」
「虐められるの、好きなんでしょ? それに僕、先生の匂いが好きです」
「や、もう、ばかぁ」
 拗ねてもがくたびに、豊満な乳房が胸板にふれるのを感じるのだ。
 こんなにも楽しいはずなのに、こんなにもドキドキするはずなのに‥‥なのに、彼女と
じゃれあいながら、とめどなく涙が視界をにじませる。
 今の僕にできる事を、悔いのない思いをすべて彼女にぶつけて、そのカラダに刻み込み
たい‥‥それは、気負いだけが先ばしる初体験の青年の、あまりに悲壮な覚悟だった。
 「んっ、ンア」
 軽くついばむような愛玩をくり返して、耳たぶを甘咬みしてやると、彼女が熱い吐息を
僕の肩にあびせてくる。不器用に乳房をまさぐる僕の掌に上から指を絡めあわせ、そっと
なぞりかたをレクチャーしてくれるのだ。
「こういう風に‥‥胸の先を‥‥ん、うんっ、その方が、私は好きなの」
「先生‥‥」
 呼びかけると、衝動的に彼女が僕の唇を奪い、ムリヤリな勢いで唇を吸い上げてくる。
「イヤ。先生じゃなくて。杜奈って、呼んで。敬語もダメ」
「わ、分かった。ぼ、僕のことも‥‥清水じゃなくて、圭(けい)って呼んで」
 初心(うぶ)な恋愛ドラマみたいだ‥‥恥ずかしさにカァッと頬が火照る。それはイヤな
恥ずかしさではなかった。ギリギリの瞬間に、同じ気持ちを彼女と共有できる幸せ。
 たった一度の逢瀬を、深く記憶にきざみつけるための‥‥


                 ― 23 ―

 香椎杜奈は、ひくひく腹を波打たせ、自在にカラダをよじって僕の愛撫に応えてくれた。
瑞々しい美肌にふつふつと汗が吹きだしていく。触った指先はもちっとした肌触りに吸い
つき、驚くほど感受性豊かに反応する。大胆な反応に、僕は夢中になっていた。
「この匂い‥‥甘くて、爽やかで‥‥杜奈の匂い」
「ん、香水のこと? これは212サマーカクテルっていうお気に入りの‥‥ん、あふッ」
 今さっき教わったとおりに片方の掌を使い、触れるか触れないぐらいのタッチで乳輪を
焦らしながら、細い裸身を抱いて背骨の脇のくぼみをつうっと指でなぞっていく。冷静に
喋りかけていた女教師は衝撃でのけぞり、僕の肩に顔をうずめた。
「んぁ、ふぁァ、なんでそんな、圭君はすぐにツボを覚えて、私を感じさせるのよぅ」
「先生こそ、僕のを握って‥‥ック‥‥き、気持ちよすぎです‥‥」
「うふふ、こんな反り返って、エッチな子‥‥‥ん、くぅぅ‥」
 尖りきった乳首の先を指でつまむと、女教師は切なげに顔をしかめ、甘い声で啼く。
 さらさら長い黒髪が僕の胸板を流れ、鼻先をくすぐる。密着したぬくもりと柔らかい肌、
まじりあう汗の眩暈を誘う匂い。下腹部の淡い亀裂をまさぐっていた手がそらされる。
 いつのまにか僕の上で彼女が反転し、目を見はる卑猥な光景が広がっていた。ヒクヒク
肉の合わせ目が色づき、期待に満ちた汁がべっとり太ももを濡らしている。なまめかしく
蠢き、男を誘うその光景に、僕の分身が天まで反り返っていく。
「キレイなピンク色。これが圭君なんだ。なんだか、ドキドキしちゃうわね」
「ん、んぁ杜奈、さんッッ‥‥!!」
 ちろりと亀頭の先を舌でつつかれ、必死に歯を食いしばって電撃じみた刺激に耐える。
お返しに蜜のしたたる合わせ目の裏側をちろりと舐めると、美しいお尻がブルブル揺れた。
「け、圭君‥‥おかしくなっちゃ‥‥い、入れて‥‥」
 再び彼女が位置をいれかえ、汗に滑る細い指が、よりしとどに濡れた最奥を押し開いた。
初めてのことに焦り、腰をうごめかす僕を、からみつく彼女の指が優しく導いていく。
 ぬちっ‥‥
 猛りくるう僕自身が彼女の亀裂をこじ開けた時、すさまじい感触が背筋へ突き抜けた。
ざわざわまとわりつき、ねぶり、めくるめく陶酔の波が僕の下腹部を一瞬で連れ去り‥‥
 ほとんど2度・3度‥‥腰を振るか振らないかで、僕は激しく射精していた。 


                 ― 24 ―

 ビクッ、ビクンッッ‥‥‥‥
 腰の抜けるような開放感と快感の中、恥ずかしさと屈辱に僕は顔をゆがめた。早すぎる
のは恥ずかしいことだ。力を失ってゆくソレの反応に、耳まで燃えあがりそうになる。
「その、気に障ったらゴメンね。女の人とするの、初めて?」
「‥‥」
 無言の返答に、下から僕を見つめていた彼女は大きく、こぼれるようにニコリとした。
「嬉しい。じゃ、圭くんのカラダに、私の○○○を刻んであげられるのね」
 その、あまりに淫らな一言で‥‥
 柔らかな肉襞をねじりぬいたばかりの僕の分身は、弾けんばかりに固く反り返っていた。
貫かれたままの彼女の裸身が、一瞬で膨張する僕の動きにビクビクッとのけぞり、本人も
気づかぬ間に唇の端からつっとヨダレが流れ落ちてゆく。
「あぁっ、圭君‥‥すごいの、一瞬で‥‥ドロドロになっちゃうぅ‥‥」
「僕も、です。杜奈さんにも感じて欲しいから。だからもう一度、してみます」
「あふ、フフッ。何度でもいいのよ。時間はあり余るほど。好きなだけ、私の中に注いで」
 安全日だから気にしないでね‥‥香椎杜奈はそう囁き、僕の胸板に頬をすりよせた。
もう一度ゆっくりと、体の芯に絡みつく、めくるめくヒダのざわめきを感じながら静かに
腰を使い始める。
「杜奈さん、一つだけ。演技はしないで。感じるのが不十分なら、それでもいいから」
「んっ、分かった」
 囁きかえして、彼女は狂おしく僕の下でカラダをよじらせる。
 なれぬ動きに腰が少し痛かったが、それ以上に下半身にすべての感覚が凝集していく、
あの溶けるような陶酔が、僕をやみくもに駆り立てていた。ずっ、ずくっと腰を打ち込ん
で行くたびに、汗みずくの裸身が波打ち、彼女の吐息が荒くなっていく。
「ん、イイ、いいわ、もう少し‥‥」
 僕がもう一度イッた時、彼女の瞳は激しくうるみ、後一歩で高みへたどり着けなかった
切なさに身悶えを繰り返していた。


                 ― 25 ―

「ダメ、だめよぅ。もう少しだったの‥‥だからお願い、ちょうだい‥‥今度こそ」
 爛れた肉を焦らされきった、年上の彼女からのおねだり‥‥これ以上に男を駆り立てる
ものがあるのだろうか。三度、硬直した僕自身を突きたて動きだす。お互いの感触をつか
んだ下半身がびっちりと吸いつきあい、白濁した雫を吹きこぼしつつドロドロに溶け崩れ
ていく。
「あっ、圭君‥‥ッッ!」
 杜奈が鋭く、あわてたような声を上げる。正常位だった僕が体を起こし、彼女のお尻を
支えながらあぐらをかくようにしたからだ。いわゆる対面座位の格好になり、杜奈自身の
体重が僕の分身を深々と奥へ受け入れることになる。
「‥‥一度、してみたかったんです。もう、恥ずかしいこともないと思って」
 杜奈のすべてを知りたい、彼女のすべてを、記憶に、感触に焼き付けたいから‥‥
 僕の言葉で真っ赤になった杜奈は、やみくもにキスを求めてきた。
 「んっ、んンー」
 「くふっ」
 唇をふさいで杜奈の喘ぎ声を奪ったまま、僕は無我夢中で貫いた腰を突き上げていく。
ズンズンと爛れた粘膜を下からえぐり、柔らかい女性の躯を煽るようにこすり上げると、
すぐに彼女の目がうつろになり、貪るように自分から腰を使い出した。男と女の絡み合う
淫靡な響きが、寝室いっぱいに広がっていく。触れあう肌と肌は汗にまみれ、さまざまに
まじった匂いが僕を激しく刺激する。
 だが、めくるめく感覚の頂点が驚くほど間近に迫っていた。またか‥‥?
「一番、嫌いな人のことを、ンンッ‥‥憎しみを、心に想ってェ」
「え」
 囁かれた瞬間、他ならぬ木村紀夫の顔が浮かんでギリッと奥歯が軋れた。グウッと腰に
力がわきあがり、怒りすら込めてドスドスと股間のモノを打ちあげる。わずかな猶予‥‥
だが、今度こそはそれで十分だった。震えていた杜奈のしなやかな足がキュウッと僕の腰
に巻きつく。キリキリ下腹部が締めつけられ、爪が僕の背中に立てられる。
「イッ、いひっ、ん、く‥‥イク、イッちゃうぅぅ‥‥‥‥!!」
 長い尾を引いて彼女のアルトボイスがはしたなく喘ぎ、全身を波打たせてよがり狂って
いく。上半身がふらっと弓なりにのたうった瞬間、断末魔の小刻みな震えをみせて彼女は
カクンと崩れた。声もなく呻いて僕の肩にあごをうずめ、ふるふる余韻に痙攣する。子宮
の奥深くまで僕自身を埋め込んだまま、二度・三度とつややかな裸身がひくついた。
 痺れるような深い蠕動が、僕自身の滴を最後の一滴まで搾りだそうと襲いかかってくる。
 そして‥‥
 我慢の限界を迎えた僕は、彼女のなかに思いきり、残ったすべてを放出していた。


                 ― 26 ―


 幾度愛しあい、何度彼女の中で果てたのか、分からない。
 顔をなぜる冷たい陽射しに目を覚ました時、香椎杜奈はすでにリビングで朝食の準備を
していた。一服してから寝室を出て、エプロン姿の彼女を背中から抱きしめる。振り向く
年上の女性の頬をなで、甘く舌と舌を絡めあう。
 こんなにも愛しあったのに、引き裂かれるという現実。ゆっくり心にしみていく事実が、
2人のキスをいっそう深く、いとおしいものに変えていた。
「ンっ‥‥煙草が匂うわ、圭君。その匂いちょっとキツすぎない?」
「なんだよ、CAMELにはこだわってるんだ。この味が一番好きなんだから」
 たわいない会話の合間にも互いを感じあい、心が繋がっているのをたえずたしかめる。
恋人と向きあう、最初で最後の遅い朝食を僕たちはとっていた。
「でも、もう、どうしても会えないの? え、遠距離恋愛だって不可能じゃないかも‥‥」
 不意にぶり返してきた感情の波をどうにか押し殺す。
 泣いちゃいけない。どんなに悲しくても、泣くのはダメだ。最後に瞳に焼きつけるのは、
彼女の笑顔にしておきたかった。だから。
「遠距離恋愛だって、年に一度しか会えなくたって、僕は必ず先生だけを」
「ううん、ダメよ。きっと、圭君は私を忘れるから‥‥」
「そんな‥‥どうしてそんなこと言うのさ。僕が信じられないの!?」
 湯気の出る珈琲を手に、香椎杜奈は小さくなっていた。カップ越しに、これ以上はない
ほどの愛情と、哀しみのこもった目で僕を見つめる。彼女もまた、にじみ出る思いを押し
殺しているのだ。
「どうしてもと言うなら、毎年、私たちの結ばれたこの夜に、あの居酒屋のカウンターで
待ち合わせましょうか。一年に一度会えるかもしれない。会えないかもしれない」
「ホント?」
 ぱぁっと明るくなる僕を、彼女は不思議な色の瞳で見つめていた。 
「高校生のうちはダメよ。大学生になって、それでも、まだ私を覚えていたら」
「僕が忘れるわけないって。必ず、3年後、大学生になったら、あの居酒屋で先に待って
いるから」
 朝食を追え、別れの優しいキスのあとでマンションをさりぎわにもう一度ふりかえる。
フローリングの床を斜めに這う冬の光の中、静寂の漂う玄関で微笑む彼女‥‥
「ありがとう、圭、いままで、ずっと‥‥」
「うん‥‥」
 それが、僕が香椎杜奈を見た、最後の記憶だった。


                 ― 27 ―

「女の人を待っていらっしゃるんですか?」
 女性バーテンダーのしんみりした口調に、僕は長い物思いからわれに返った。
 そう‥‥結局彼女は正しかった。ただ一人の女性を見ていたはずの僕も、いつか彼女が
できていた。高校から大学へ。さらに3年間。僕は、どうしてもここにに来られなかった。
後ろめたさと、その時々の彼女へのやましさと、矛盾に裂かれて。
 だが、どんな女の子と寝ても、あの身も心も溶けあい、つながる感覚は得られなかった。
香椎杜奈は、僕にとってのかけがえのない人だったのだ。
 ‥‥遅すぎた今、それが、ようやく分かったから。 
「あぁ‥‥僕のファム・ファタル(運命の女)かな。君と同じ香水の持ち主なのさ」
「出会えるといいですね、その方」
「ただ、当時は僕も高校一年だからね。背も伸びたし、成長した僕を見て分かるかどうか」
 すると、バーテンダーが驚くことを口にした。
「その方‥‥ひょっとして、あなたの後ろにいる方ですか?」

 ふわりと首に巻きつく、柔らかい腕を、僕は感じていた。

「どういうつもり? 『運命の女』だなんて、人を悪女扱いするのかしら。久々の再会な
のに、つれないのね」
「あ、いや‥‥」
「なぁに? 弁解なら、一度だけ聞いてあげるわ。圭(けい)君」
 耳元をくすぐる低い声に、僕は思わず知らずひたっていた。変わらぬぬくもりに、変わ
らぬ甘い芳香。首を回して確認せずとも、すべてを体で感じとることができる。
「相変わらず大胆だね。いきなり抱きついて、人違いだったらどうするつもりだったの?」
「‥‥タ・バ・コ。キャメルのそれ、銘柄にこだわっていたんじゃない?」
「そっか。コレが、僕の匂いか」
 この匂いが、彼女にとってのサマーカクテルだったのか‥‥
 にやりと笑い、僕は、楽しげに僕たちを見つめて微笑するバーテンダーに語りかける。
「前言撤回するよ。彼女は僕の――初めてで、たぶん最後の、大事な人だ」
「――バカ。ずっと、待ってたんだから。信じていたんだから」
 首に巻きついた腕が、小さく震える。
「ずっと、ずっと――」 
 ポタリとしたたる暖かい雫が、僕のうなじを下っていった。
                                     



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