手違い その2

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夢遊病者のような、惨めな足取りで自分の部屋に戻る。
渡された小包の紐は、不自由な後ろ手の指先からしっかりぶら下げたままだ。
またしても、それは間違い小包だった。私こと早紀ではなく、佐藤志乃あてのもの。
中身は、数本のビデオテープと「ダビングしました」とかいう手紙だ。
少し迷って、見てみることにした。
革手錠のカギは見つかったけれど(部屋の隅に転がってた)、指先が痙攣してすぐに
外すことができない。隣の住民とのニアミスが、これほど私をおかしくしてしまうな
んて予想外だったのだ。
だから、他のことで気を紛らわそうと思ったのが‥‥
まったくの、失敗だった。
ビデオの中身は、志乃さんの赤裸々な露出緊縛の記録だったのだから。

なまなましい、現実。
ネットの情報でさえ、いくらか現実と隔たっている安心感があった。
このテープには、それがないのだ。
ビデオも一人でセットしたのか、地面に置いた視点が多い。大抵周囲は明るい屋外、
どこまでも普通の日常。そこで志乃さんは服を脱ぎはじめ、自分から後ろ手に拘束具
を嵌めた緊縛姿となって、バイブで身悶え、猿轡を噛み締めて絶頂を迎えたりする。
さらに、その裸にコートを羽織っただけの拘束姿で立ち去っていくのだ。
志乃さんは綺麗な女性だった。
大人の憂いを含んだ表情にすらりと伸びた美脚、すばらしく豊かな胸にきゅっとくび
れた腰。私だって体型では負けてないけど、子供っぽいとよくからかわれる童顔の私
に比べたら、志乃さんははるかに男心をくすぐりそうな雰囲気があった。
こんなキレイな人がどうして‥‥
それも、一人遊びなんか‥‥
そんな疑問も、知らずに見入ってしまった原因かもしれない。
慣れた手順で拘束具に身を任せ、女の大事なところとか、リング状の猿轡の中とか、
自力で取り出しようにないところにカギをしまいこんでいく鮮やかさ。
いわゆる、最高難度の‥‥その趣味の人が見たらすごく興奮してしまう自縛だという
のは見ていて私にも分かった。サポート役がいない、逆に言えばトラブルがあった時
彼女は抵抗すらできないのだ。
30分観たところで、耐え切れなくなった。
おぼつかない指先でフローリングの床をひっかき、あわてて握ったリモコンでビデオ
を打ち切る。静かな室内に、ぜぇぜぇと荒い息。
恥ずかしいことに‥‥
そんな状況で、私の下半身はかっかとほてりだしていたのだ。
さっきまでの、あの、止まらないような露出の身震いが、ぶり返してくる。
手が使えないから、冷蔵庫から出した麦茶を歯で咥えてがぶ飲みして、そのまま転が
り込むようにやわらかいベットに飲み込まれ、眠ってしまい‥‥
自縛したまま、私は一晩を過ごした。

                           ‥‥‥‥‥‥‥‥

とうとう、通販で大人の玩具を買ってしまった。
5センチくらいのごくありきたりな、というか小さい部類のバールローターだ。お股
の大事な割れ目に押し込んでも、ほとんど目立たずに行動できる。
例のビデオの中で志乃さんが使っていたのは、もっと禍々しい男性そのもののバイブ
レーターだから、それに比べれば‥‥
いや、分かっている。
これは、あれ以来、意識したこともないもやもやに悩まされるようになってしまった
私自身の変化のせい‥‥
少しづつ、私は、志乃さんの姿に自分を重ねるようになっていた。
ああまで激しいことができるとは思わない、けれど‥‥
私のカラダは確実に、あの忌まわしい快楽の味を覚えこんでしまったようなのだ。
自縛する緊張‥ほどけないと気づいた瞬間の、あのジリジリ炙られるような焦燥感。
そして‥‥そんな破廉恥な姿を、人に見られるスリル。

自縛をすることで気分が高まっていくというのは、私にとってまったく新しい、未知
の経験だった。肌がほてり、心がうろたえ、指だけがせわしない。
初めて後ろ手錠のままオナニーをしたのが、あの晩から3日ぐらいしてのこと‥‥
送られてきた淫らなビデオで、不自由な指先をどう動かせば、冷酷な手錠の拘束感を
どう味わえば酔っていけるのか、十分知ってしまっていたから。
それはあたかも、耳年増の少女が初めて迎えたセックスにも似ていた。
カラダはまったくの無知なのに何もかも知っている恥ずかしさ。求めている快楽の高
みへ身動きがついていかないもどかしさと焦りの感情‥‥
言うなれば、私はあのビデオの山のおかげで、SMバージンでありながら充分すぎる
くらいに調教されてしまっていたのだ。
「んっ、んぁン、ダメッ、おかしくなっちゃ‥‥ヒッ!!」
鋭く息を呑み、一人きりのベットの上で恥ずかしい刺激に陶酔して身をよじる。
それは本当に久しぶりの、女の限界まで「イッた」満足感だった。
甘いけだるさの底へ罪悪感が沈んでいく‥‥

               ‥‥‥‥‥‥‥‥

いつのまにか会社での人付き合いが悪くなっているらしい。今日、上司にそれとなく
注意され、驚いた。私は、むしろ如才なく溶け込んでやっている方だったのに。
でも、それ以上に驚いたのは、自分の反応だ。
物腰柔らかな上司に、珍しく私はかっとなって言い返していたのだ。
こんなことは以前はなかった。きちんと自分をわきまえ、分をわきまえた上で、割り
切って仕事をこなしていたというのに。
まるで、今まで抑圧されていた感情が、殻を破ってあふれだしてきたようだ。
同僚の持ってくるパーティとか合コンとかの話も、あまり興味をもてなくなりつつあ
る。ちょっと仕事場で浮き出している自分を、戒めないといけないだろう。

               ‥‥‥‥‥‥‥‥

初めて、全身拘束具での完全な自縛を試すことにした。昨日の夜からやってみようと
思っていたのだ。仕事中も気がそぞろで、電話の取次ぎを一度間違え叱られた。
早めに退社して、逃げ込むように自分の部屋に舞い戻る。
暑い日ざしと湿気のせいで汗ばんだスーツを脱ぎ、バスルームに向かう。浴室のラジ
オをいつものFMチャンネルに合わせてカラダを流していく。

‥‥これからまたびっしょり汗をかくのにね‥‥‥

そう思った途端、ドキッと心が疼いた。

風呂から上がっても決心が定まらずウロウロする私の後を、テトラがはしゃいで追い
回してくる。主人の興奮を、子猫なりに敏感に感じ取っているのかもしれない。
こんな子猫にまで、いやらしい自分の心を悟られている‥‥
そう思うと、それだけでまた、カァッと体がほてるのだ。
タオルで髪をぬぐい、ブラを外した下着姿に大きめな長袖ブラウスをはおる。腕など
にアザがつかないよう、一応の防衛策だ。
ようやく迷いが吹っ切れて、私は自縛を始めることにした。
今日は、ちょっと自分にイジワルしてみる予定だ。
いつも手錠で自縛しているときは、必ず手の届くところにカギを置いている。万一、
トラブルがあったときのためだ。
けれど最近、色々なパターンを試しながら、そんなのでは物足りなくなっている自分
に気づいていた。もっと、ギリギリの恐怖とスリルを味わってみたい。あの、初めて
の時に全身を貫いたような、冷や汗のしたたるような体験がしたいのだ。
みずから施した自縛で抜け出せなくなる‥‥
そんな、時折SM系の体験談や掲示板で冗談交じりに交わされる言葉。
‥それを、今から試してみるつもりでいた。
本当の意味での冒険だ。

黒い光沢を放つ革の全身拘束具を、床に並べる。
いつも使っている革手錠、それに上腕部を縛りつける幅広の革帯、胴体を亀甲模様に
絞りだしくびれさせる、いやらしいベルトの数々‥‥
そして、ボールギャグという名称の丸いさるぐつわと、お股を締めつける器具だ。
テトラは作業の邪魔にならないように、おトイレに閉じ込めておいた。心細げにニャ
〜ニャ〜鳴いてる声がする。
心細いのは私だって同じ‥‥
そう思って、最初の拘束具を取り上げると、服の上からそれを着はじめた。信じられ
ないほど指が震えている。緊張なのか甘い期待のせいなのか、自分でも分からない。
まず、革ベルトの形に沿って胴体から下腹部へ絡めていって‥‥
それから少し迷って、先にボールギャグを深く咥え、頭の後ろでストラップを括る。
両手を後ろに回すと腕の上の方へ革帯をとりつけ、背中から動かせないように拘束し
ていって、胴体のベルトとも連結する。
ぴんと伸びきった両手首をそろえて、巻いた革手錠を絞り込み‥‥
最後の最後で、南京錠を支える指が止まった。
今ならまだ、気の迷いで済む。
いまなら、すぐに解くことができるのに‥
これを嵌めてしまったら、もう、私のカラダは‥‥
心からマゾの悦びに溺れてしまって、戻れなくなってしまいそうな‥‥

心臓が、激しく震えている。

ふぅぅっと、私はギャグの空気穴から息を吐きだした、そうして。
カチッ
「ん‥‥あふっ、カハ」
恥ずかしい私の自縛姿は、完成した。
もう、ダメ‥‥
引き返せないんだ、私‥‥
ぞくぞくっとざわめく心を抑え、前髪を揺らして、汗のつぶを弾き飛ばす。
クーラーが利いているというのにびっしょりの、汗。ここまでの、もどかしい手順で
30分以上かかり、のたうちまわっていたせいだ。
待ちわびた全身を絞りたてる、激しい緊縛感が気持ちイイ‥‥
棒のように背中で束ねられた両手は、左右に揺するだけで胴体の革ベルトと連動し、
みっちり食い込んだ乳房の上下に刺激を与えてくる。
しかもパートナーのいない私は、くたくたに疲労してイッた後も、さらに自力で戒め
を解いていかねばらないのだ。しかもカギは、あの場所にあるから‥‥
ひょっとしたら、些細なトラブルで縄抜け不可能な窮地にさらされるかもしれない。
その困難な手順を思っただけで下半身がうるんでくる。
そうよ、この感覚が、私の求めていたもの‥‥
あぁ、いい‥‥もう2度と解けないかもしれないのに、全身が過敏に反応しだして‥
‥‥
熱にうかされた気分で、ふらふらっと部屋の端、等身大の鏡の前まで歩いていく。
「ンッ‥‥ひぐ‥‥」
これが‥‥わ、私なんだ‥‥
自分の姿を見て、つかのま鼓動が乱れた。
しっかり拘束具を絡みつかせ、ぴくぴく震えるブラウス姿。今そこに映ってるのは、
志乃さんに負けないくらい淫らで被虐的な女の姿だった。
革ベルトで虐められたオッパイは窮屈にブラウスの胸元から弾けだし、コリコリに勃
った乳首が生地を押し上げ淫靡なシワを形作っている。汗ばみ透けた白いブラウスの
上から、黒い光沢を放って亀甲縛りに食い込む拘束ベルト。末端は太ももの間、下着
にくっきり割れ目をつけてお股に食い入っていた。
なまじ、肌に密着したブラウスとショーツだけの半裸なのがさらにいやらしい。自分
でも恥ずかしいくらい着やせする大きな胸、そしてくびれた腰を締め上げる拘束具。
ボールギャグで歪んだあどけない顔はすっかり紅潮し、ネットで見かけた写真以上の
リアリティで私の心に迫ってくる。
腰の後ろに刺したバイブのリモコンへ指先を伸ばすと、南京錠がチリチリ鳴った。
そっとスイッチをつまみ、ゆっくり押し上げていく。
「あぅぅン、ん、ンォ‥‥」
醜い、獣のような歓喜の呻きがもれた。
微妙に調整して、クリトリスに当たるようにしておいた小さなローター‥‥
それが今、激しく自己主張し、私の快感中枢を芯から揺さぶりかけてくる。
ヒクンヒクンと腰が跳ね、私は鏡の前で酔っ払ったように千鳥足でよろめいた。ブラ
ウスのはしがまくれ、あらわになったショーツのソノ部分は目を覆いたくなるほどに
濡れてしみでている。
浅ましい、その惨めな現実のすべてが、めくるめく快感だった。
立ったままブルブルと子犬のように震えて刺激をこらえ、次の瞬間には噛まされた猿
轡のスキ間から、たえきれずに艶やかな喘ぎをこぼして‥‥
大きなボールを咥えさせられて口腔にあふれてくる唾液。歯をこじ開けられたままの
私は、だらだらボールギャグから流れだすヨダレで下唇を濡らし、あごを伝って首か
ら胸の谷間までしとどにブラウスを汚していくのを、ただ感じているしかない。
「いぅっ‥‥カハァ、はグ、ぎぃぃ‥‥」
勝手に、カラダが身悶えだしてゆく。
カラダの深く深くへと積もってゆく快感を噛み殺していた私は、ついに立っていられ
なくなり、崩れるように床に転がってアクメを貪りつづけた。
ぎゅううっと、からっぽの肉壁が収縮し、潤滑油がいっそうにしたたりだして‥‥
ヒクヒク腰を蠢かせ、みずからの汗と液体ですべるフローリングを這いずり回り、相
変わらずガッチリ施錠されたままの後ろ手をうらめしさを思いつつ、不自由な爪先で
いじましく南京錠を引っかき、ひしゃげたオッパイを床に擦りつけては、勃起した乳
首を押し潰す痛みと刺激に嬌声をひりだして‥‥
「ひォォ、んく、ん、ンゥ‥」
すでに、まわりの何もかもが目に入っていなかった。
拘束されている‥‥手錠を嵌められ、乳房をよじられて、自ら望んで自由を奪われて
いるこの状況に酔っているから‥‥
私はブルブルッと震え、絶頂に突き上げられて声を失っていた。
フローリングにぴったり押し当てられた頬、そこへたれてくるまだ生ぬるい唾液‥‥
かは、かはっと息声だけがもれている。
ダメだ‥‥
真っ白、何も考えられない‥‥
そっか‥‥ 私、すごい勢いでイッちゃったんだ‥‥



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