手違い その3

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少し、気を失っていたらしい。
カチカチという秒針の音にうっすら目を開けると、いきなり真っ赤なボールギャグを
噛まされたOLの顔が目に飛び込んでギョッとした。
ハッとして芋虫のようにいざってから、鏡に映った自分自身だとようやく気づく。
消えることのない、ブラウス越しのだるい拘束感‥‥
あぁ‥‥
瞬間的に、冷え切った肉のうずきがぶり返した。
すでに冷え切ったショーツが、股間の革ベルトによって肉ヒダへねっとり押し当てら
れている。心なしか不快で、でももちろん直しようもない。手首と、肩のすぐ下から
ビッチリ上腕を包む緊縮した拘束具の感触が悩ましい。
よろよろと肩をねじって起きあがり、鏡に向き合う形ですわりなおした。
私、こんなにも性欲の強い女だったんだ‥‥
ふたたび甘く鈍痛を訴える熟れたカラダを、一方でさめた意識が見下ろしている。縛
り上げられた私を、縛った私が満足げに鑑賞しているのだ。
どこかのHPで見かけた話を思いだした。
自縛を好む人間は、SとMの獣を同時にカラダの中に飼っているのだという。時に、
そのせめぎあいの衝動は激しくなりすぎ、自分自身を徹底的に壊したい衝動に駆られ
てしまうというのだ。
あるいは歪んだ自己愛か‥‥
時計をちらりと見た。午後の9時半すぎ。まだ、全然人の出入りの激しい時間だ。
どうしたものか、そう考えながらガクガク乱れる足を突っぱって立ち上がり、とにか
く台所から雑巾を取ってきて、体液で汚れた床を不自由な手つきで掃除した。テトラ
はトイレの中で寝入ってしまったのか、鳴き声もない。
そのまま、熱くほてったカラダを扱いかねてベットまで這いずっていく。
どうしよう‥しばらくは、縛られたままでいなきゃいけない‥‥
被虐的なマゾの予感に身震いし、私はベットシーツにもぐりこんだ。枕に顔をうずめ
声を殺して再びリモコンのスイッチを押し込む。
もう少し、自分を虐めてあげようか‥‥第2ラウンドには十分すぎるくらいうるんで
しまってきているし、どうせ今の時間、カギなど取りに行けないのだから。
‥‥そう。
これが、私自身へのイジワル。
志乃さんの自縛プレイをまねて、私もマンションのエレベーターホールの、観葉植物
の根っこに鍵を括りつけてきたのだ。
安全な部屋にいる限り、拘束具の縛めから逃れる見込みはない。
これで‥‥私は、緊縛姿で屋外へと歩いていかない限り、手錠から抜け出すことがで
きなくなったのだ。絶望的な、スリルと冷や汗が待っている。
人の出入りが少なくなるまで待つか、危険を冒して卑猥なブラウス姿で出て行くか。
危うい誘惑に悩むのも、自縛プレイの数少ない、選択肢なのだから。

                ‥‥‥‥‥‥‥‥

ツーッ‥‥
『早紀〜、いないの〜?おっかしいなぁ、ケイタイ鳴らしてもでないし、部屋に置き
っぱなしでコンビニでも行っちゃってるぅ?』
『居留守だよ〜、最近付き合い悪いしさぁ‥‥』
「んんムっ、はぁぁン‥‥っくぅぅ」
聞こえるはずもない。
なのに、親機の留守電機能で筒抜けとなった同僚たちの仲の良い会話に、心臓がバク
バク弾んで、声も押し殺してしまうのだ。
能天気な、心持ち酔った同僚たちからの電話。
もう1時間近く自分を焦らしつづけ、3度目の絶頂を迎える寸前だった私は、どうし
ようもなく火照った裸体をシーツに押しつけてもどかしさに耐えていた。
『聞いてる〜?あのね、今オトコあさってんの〜〜』
わ〜〜とか、イエ〜とか間断なく聞こえてくる騒音。どうも居酒屋とか、そういう系
統の場所にいるらしい。
『でもね、これがゼンッゼン駄目。覚えてんでしょ、この間早紀が断ってた話よぉ。
アンタ見る目あったわ〜』
『も、ねぇ、帰っちゃうことにしたんです、全員』
この声は、SM好きのカレに悩まされていたあの後輩の子だ。
『でね今、新宿にいるんだけど、ほんっと〜にヒマんなったから、今から早紀んち、
寄るから。いたら必ずもてなすよ〜に。じゃね』
ツーッ、ツーッ、ツー
「ンンンンっんむぅぅ!!」
ダメェェ‥‥!
私は、思いっきり絶叫を上げていた。
今来られたら‥‥新宿からだと、中央線で30分と少し‥‥そんな‥‥
びっくり箱のように焦って腰を浮かせかける。
私のマンションは2LDKで、少し広めだから人を呼んでホームパーティみたいな事
をしたこともある。彼女たちも2度くらいは来たことがあるはず、だけど‥‥
部屋の前で携帯を鳴らされたら、ごまかしようもない。
最後に携帯をどこに置いたか、今日は自縛のことで頭が一杯だったから覚えてもいな
いのだ。部屋のどこかで鳴っていた気もボンヤリするけど、こんなパニクッていては
探しようもなく‥
後ろ手にカッチリ拘束された姿で、部屋の中央に立つ。
と、ともかくこの姿は見せられないし‥後ろ手錠の鍵を外して、部屋のエッチな匂い
も換気して、全部隠してしまわないと‥‥
時計がまだ11時も回ってないのを見て、私は絶望的な気分に犯された。
本当は、もっと深夜になってからそっと鍵を取りに行くだけの予定だったのに‥‥‥
サラリーマン、OL世帯が多いマンションで、これからの時間は特に人の出入りが激
しい。そこを、こんな風俗嬢みたいな格好で歩いていったら‥‥
トテトテと腰の砕けた足取りで、私は玄関に向かった。
あらかじめ用意した、腰までの丈のコートを肩にかぶせ、なるべく前の方まで覆う。
ボタンは嵌められもしない、だから人と向き合えば、ブラウスを喰い締める革ベルト
が、股間に深々ともぐった革紐が、コートの合わせ目から丸見えだ。
それにボールギャグだって‥‥
助かりようのない無残な現実に、私は扉へ寄りかかった。
あふれでる後悔の念。自縛を始めるときは、えっちな期待で気が昂ぶっているから、
縛りすぎて悲惨な目にあう。そんな体験談を読むたびに笑っていたのに。
その私自身が、絶望的な拘束の厳しさに追い込まれている。
さらに浅ましいことに‥‥
こんな瞬間でさえ、いや、残酷なほどに他人の目にさらされる確率が高くなった今だ
からこそ‥‥
深々と拘束具を施された裸身が灼けるように火をふき、下着の意味をなさなくなった
ビチャビチャの布切れから、粘液質のしずくが玄関にしたたっているのだ。
ねっとり熱くとろけた、マゾの裸身。
「ン‥‥グ‥‥‥」
行くしかない。
これも、こんなはしたない行為で感じてしまった私への罰‥‥
惨めなマゾ奴隷には、数少ない選択肢さえ、許されないのだから。

              ‥‥‥‥‥‥‥‥

少しの間、耳を押し当てて外の様子をうかがっていた。
エレベーターホールまで歩いていって、しゃがんで鍵を外すまで3分、戻ってきて部
屋を片づけるまでに5〜6分。
あと、20分弱しか残されてない。
それでも、私はすぐには廊下に出なかった。
私の部屋は、エレベーターホールから遠い位置にある。しかも左右に部屋がならんで
て、どっちから人が来てもすぐには分からない。
しばらく様子をうかがって‥‥
シーンとしてる様子に思い切ってノブを回しかけたとたん、トタトタトタッと子供の
足音がした。
「おかあさぁ〜〜ん、今日のね、おいしかった〜」
「おいおい、あまり安上がりな男になるなよ?」
「お父さん、ダメでしょ、せっかくの外食なのにそんなこと言ってちゃ」
全身から血の気が引く。
ずるっと扉に寄りかかった私の前を、ドア一枚へだてて幸せそうな家族が通り過ぎて
いった。ガチャ、そして子供の走りこむ音、閉まるドア。
上半身がわなないている。
風の音、道路を歩く反響音、国道の方からの車の騒音とかすかな振動‥‥
一生懸命聞いていたのに、雑音にまぎれてまるで分からなかったのだ。逆に言えば、
いつ誰に見つけられても、おかしくないということ‥‥
後ろ手がイヤなカンジに痛み、よじれる。
何かを待ちわびるようにトクトクと心臓の鼓動がはずんでいる。
ぎゅうっとよじれるようなお股の、ざわざわ蠢きだすヒダのぬめりに正気を失いかけ
ながら、ローヒールを履き、とんとんと爪先を押しこんで‥‥
ノブに指を絡め、私はお尻でドアを押し開けた。

             ‥‥‥‥‥‥‥‥

「ひぅぅ‥‥」
一歩踏み出して、ボールギャグからヨダレと一緒にかすかな悲鳴をもらしてしまう。
私‥‥私は‥‥
あぁ‥こんな、ウソじゃないんだ、感じている、本当に私のカラダ‥‥
絶対抜け出せないように緊縛されて、ぐしょ濡れのショーツに股間のベルトを食い込
ませて、こんな卑猥な姿で廊下に立ちつくして。
倒錯的な事実に、頭がクラクラする。
煌々とした廊下の常夜灯、9階のここからは、手すりの向こう側に広がった住宅街は
夜の帳に沈んでいる。
同じ高さの建物が近くにないとはいえ、くっきり闇に浮かび上がった半裸の上半身‥
さぞ、いやらしい見物だろう。
私は全身の毛を逆立て、おそるおそる歩き出した。
カッ‥コッ‥‥カカッ‥‥‥
かえって、大きく響くような気がするローヒールの音。その度にトレンチコートの下
で手首がねじれ、拘束を施された指先が救いを求めてひきつってしまう。
まだ‥まだ、まだなの‥
908号室からエレベーターホールまでの距離は、あまりに遠かった。
ドアの一つ一つの前を抜けるたびに安堵のヨダレがブラウスにしたたり、ドアの向こ
うでわぁっと生活音が響くたび、根っこの生えたみたいに足が凍りついて、その場で
弓なりに背をよじり、もつれて倒れそうになったりする。
下半身をギュギュギュ、っと甘く絞ってくる甘美な刺激。一歩ごとにお股の裂け目に
そって切れ上がってきてはクリトリスにローターをこすりたててくるベルト。コート
の丈が短いから、屈んだり腰を曲げればすべて晒されてしまう。
桟のはまった窓の前では腰をかがめ、ボールギャグを噛まされた醜い顔が見えないよ
うに祈りながら通り抜けて‥‥
「ん〜‥‥おぶっ、ぁくぅ、ヒッ‥‥‥‥」
目もくらむような、不自由な身を一歩づつ進めていく被虐の道行きだ。
背を丸めた緊縛姿を、何もかもにおびえきってビクンビクンと反応しながら。
「ひっ‥‥はぁうぅぅ」
ひたすらに、息を殺して。
ようやく、わずかな30メートルを歩ききった私は、もつれるような足取りで人気のな
いエレベーターホールに駆け出していた。監視カメラなどもないホールは、ある意味
一番安全な場所だからだ。
廊下の突き当たり、階段とエレベーターがある、その隅っこの背の高い観葉植物。
目ざとくその根元に鍵を見つけて、私は甘い喘ぎをこぼした。
良かった、ちゃんとある‥‥
4時間近く上半身をいましめ、痛いほど肌で味わいつづけた革ベルトの感触さえ、今
はいとおしく思える。
これで終わり‥‥あとは外すだけ‥‥
そう思いつつ、私は鉢植えのわきに慎重に屈みこんだ。目と耳を澄まし、できる限り
鋭敏に人の気配を探る。
ここからの手順が、一番危険なのだ。
後ろ手で作業するために、着ていたコートを脱ぎ、緊縛を施されたブラウス姿を外気
にさらさなくてはならない。
「ん‥‥」
人の気配はなし、エレベーターも一階に止まったまま‥‥
するりと、コートを脱ぎ捨てる。
緊張と陶酔の汗でベタベタになったブラウスがあらわになった。拘束具の嵌った腰を
よじって、鉢植えのふち手首でつかむ。うまく背中ごしに見ることができないので、
半ば手探りの作業だ。
「んっ‥‥いぅぅン‥‥」
結ぶとき変に興奮していたせいだろうか、結んだ紐がなかなかほどけない。焦って、
腰を左右にうねらせては指先を頼りに結び目を確かめて爪をこじ入れようとする。
と‥‥
何か、ゾワゾワッと背筋を駆けぬけるような戦慄に、私は身動きを止めた。
なに‥‥人の気配、話し声?それとも‥‥
ビクッと怯えきった目で、エレベーターの回数表示を見た。

誰か、上ってくる。

表示は止まる気配もない‥‥もう2階、3階‥‥4‥‥5‥‥
まさか、もう30分経って、彼女らが遊びに来たというの‥‥それともぜんぜん違う、
見知らぬ誰か‥‥
「あぅぅ、んぐ‥」
びっくり箱のようにわなないて、私は立ち上がった。痙攣して動かなくなった指先で
必死にコートを拾い、何度も何度も背中を揺すってどうにか肩にはおらせる。
‥‥ポーン
ギリギリのタイミングだった。
9階まで来たエレベーターが止まり、ドアが開く。
私は、ホールの隅に顔を押し込むようにして、後ろを向き、壁によりかかった。
ガタガタ止まらない膝を押さえつけて、ケイタイで電話している人間が取るような、
俯いたポーズで背を向ける。
「‥‥」
降りてきたのは一人のようだった。無言で、少し酒くさい。すぐに歩いていかず立ち
止まっている。背中に感じた視線が、そのまま止まった。
「‥‥‥ッ」
動揺と焦りで、完全に瞳孔が開いていたと思う。
今にも洩れそうな悲鳴は、やっとのところで喉につっかかっていた。大丈夫、大丈夫
だから‥‥コートをはおってれば拘束具なんか見えないし、腕だってピンと伸ばして
変に身じろぎしてないし、それにボールギャグだって‥‥
‥‥ボールギャグ!?
ワンレングスの髪の下に隠れて、丸いボールを締め上げるストラップは見えてない‥
‥はずだった。けれど、あんなに髪を乱して、うろたえて身じろぎしてて‥‥
もしも見えてたら‥‥
全身が冷え切ってしまうような恐怖。
モジモジ腰をかがめたくなる気持ちを堪える。ギリギリしか長さのないコートだから
屈んだら濡れ濡れのショーツも食い込む股間のベルトもすべて覗いてしまうだろう。
「‥‥んにゃあぁ」
「‥‥」
あぁぁ‥‥
酒臭い男性のヘンな声が、少し近寄ってきた。背中の後ろからジッと凝視されている
のを感じる。あぁ‥どうしよう、どうしよう‥‥‥

肩に手をかけられたら、ムリヤリ振り向かされたら、コートを剥がされたら‥‥‥

と、すいっと気配が離れた。
「‥‥おえっぷ」
すっかり酩酊したゲップ声が廊下の向こうで響く。まるで理性もないような感じで、
そのままがしゃんがしゃんとドアを乱暴に開け、男性は部屋に入っていった。
「‥‥ぅぁ、いぁぁぁ‥‥」
危なかった‥‥
悩ましい喘ぎが、止められない。
ブルンブルンとオッパイを揺らし、太ももにベッタリ流れ出した異常な量のオツユに
マゾの被虐が呼び覚まされて‥‥
もう駄目、限界だった。奴隷の自覚の前に、理性を失ってしまったのだ
私はたまらずに、かがみこんで後ろ手を伸ばし、コートを揺すってふりはらいながら
クリトリスのバイブを最大に押し込んでいた。
「‥‥っっ‥‥ひぎア、はぁぁン、いぅくぅぅぅン‥‥!!」
子宮の奥まで突き抜けるような衝撃に腰がめくれ上がり、結び目に触れかけていた指
先はあらぬ方向にねじれ、肩幅に足を開いたまま思い切りしゃがみこんで‥‥
亀甲縛りのベルトをイヤというほどオッパイとウェストに食い込ませたまま、その場
でただブルブル、痙攣する人形のように震えながら何度も昇りつめていた‥‥

            ‥‥‥‥‥‥‥‥

恥ずかしい話だけど、その後は良く覚えていない。
朦朧とした意識の中で、必死の思いで鍵を握り締めていたのと、気づいたらブラウス
とショーツそのままで、玄関にへたり込んでいたのと、それだけなのだ。入りっぱな
しになっていたローターのおかげで、無意識にお尻がプルプル痙攣してたのが、異様
に恥ずかしく悩ましかったのを覚えている。
危うい、紙一重のSM行為。
こういうのは、露出緊縛とか言うんだと後で知った。外で服を脱ぐだけでも羞恥心が
すごいはずなのに、勢いにまかせて緊縛までやってしまったわけで‥‥
何よりいいのは、気をやって目覚めた瞬間の、あの甘い罪悪感だ。
そんな罪悪感がイイなんて、それこそ私のマゾ性の証かもしれない。けど、ともかく
ふっと気づいて、ガッチリ全身が拘束具に固められ、腰の抜けるような甘いおののき
に満たされてるのを感じる瞬間が、最高にイイのだ。
ちなみに、同僚の来たのは12時すぎだった
帰りかけたのを男性陣に見つかって揉めたんだとか‥‥
その間に私はしっかりカラダも洗い、換気もし、拘束具だってベランダの防災用具の
箱の裏に隠してしまったから、何一つバレなかった。ただ一つ、エレベーターホール
にローヒールの片方を置き忘れた以外は。でもまぁ、大事な靴でもないし、あまり気
にはしていない。
「‥‥で、中野さんは相変わらずカレシに困ってるの?」
よく冷えた麦茶を片手に私から話を振ると、
「それが‥‥私まで、最近クセになってきちゃったみたいで、なんかそんなのもイイ
かなぁ、なんて‥‥」
そう言って、例の後輩は顔を赤らめたりする。
「ホラホラ、早紀なんとか言ってやってよ、いやいやヤバイよ?」
「”俺色に染めてやる”だとか、そんな感じのこと言うんだって。アタマおかしいで
しょう?」
相変わらず、後輩のカレの悪口ばかり並べるほかの2人。
「そうねぇ‥‥ウフフ」
「ゲ、なにそれ」
ウフフ、そうやって染まっていくのもいいんじゃない、私がレクチャーしてあげても
いいわよ‥‥
ほんのり、妖しい想像まで頭をかすめる週末の深夜。
驚くほど、それは刺激に満ちた普通の夜だった。

             ‥‥‥‥‥‥‥‥

少しだけ、後日談‥‥のようなものを。
迷ったすえ、私は大きなバイブレーターを買ってしまった。その‥‥男性のカタチを
した、すっぽり私を満たしてくれる玩具。
一人遊びでイッた時、これがあるとないとでは満足感に雲泥の差があって‥‥
今は、また別に悩んでることがある。これもネットで知った情報なんだけど、お尻に
バイブを入れて生活すると、すごい快感を味わえるというのだ。さすがにためらうけ
ど、でもグッズを売ってるHPには、小さなアナルバイブもあるから‥‥
すっかり、未知の快楽に貪欲になった私。
それにつれて退屈だった日常もどこか刺激的になり、メリハリがついてきたのは気の
せいだろうか。なんとなく、あの後輩のコと仲良くなりつつあるのも、私の今の嗜好
と無関係じゃない‥‥と、思う。

そう、それともう一つ。
いつもの衝動的な気持ちに突き動かされて、またあの拘束具を着てみた。後ろ手錠に
上腕部をホールドする革枷、そして亀甲縛りの革ベルト‥‥
今度は、完全な裸だ。
あの時のようにコートをはおり、鏡の前で出来を確かめるためにくるりと回って‥‥
その瞬間、私は凍っていた。
背中‥‥
ピンとそろえて伸ばされた両手首は、すっかりコートの裾からはみ出していたのだ。
完璧に施錠された革手錠の鈍い輝きが、まったく無防備に露出していて‥‥
私は真っ赤になり、それから青ざめていた。
ウソ‥‥あの時、何もかもみられて、気づかれてたんだ私、あのおじさんに‥‥
さらわれても犯されてもおかしくない、ホントの窮地だった‥‥
きゅうぅぅぅっと股間が収縮し、私を貫くバイブをヒクヒクと食い締める。
そして今日も‥こんなミスに気づいていながら、鍵を取りに外出するしかないなんて
‥‥
分かっている。
ダメなのだ‥もう、戻れない。
ともかく、私は私自身の意志でつながれているのだ。
そのこと自体が、そんな、淫乱狂いのような恥ずかしい行為をやめられない自分自身
を感じるたびに‥‥
私は、惨めさのような、いたたまれない思いのような、ぞくぞくする妖しい気分へと
かられてしまうのだから。
まだ前の住人‥志乃さんにも及ばないけど、いつかあの‥‥梱包された小包を送りつ
けた誰かに、会えるかもしれないから。その時までには、志乃さん以上に自分自身を
調教して、開発しておきたいから。
ちょっとした手違いが、人の人生をどれほど変えたのか、見せつけてやりたいから。

だからまた、私は不自由な指先を蠢かせ、ドアを開けて散歩に出かける。
いつ見られてもおかしくない、スリルの始まりだ。



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