うたがい その2

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いつものように、いつもの準備。
何度となく慣れているはずの行為なのに、心は逸り、体温がとくとくと上昇していく。
私自身のための縛めを一つ一つ用意していく、その過程自体が被虐的なのだ。
革の光沢と、金属のきらめき。
革手錠といっても警官の手錠とは形からして違う。中世の奴隷が手首にはめるような
頑丈な革の腕輪が短い鎖で繋がり、ベルトのバックル部分には勝手にはずせないよう
南京錠が取りつけられる。
悶える奴隷の汗を吸う革手錠は、小さいながらも無慈悲で、強固な牢獄なのだ。
「んぁ‥‥もう、こんなに」
ノーブラのブラウスの上からでも分かるほど、乳首がツンと勃ってきている。
今の私はだぶだぶのブラウスをハダカの上に引っかけただけ、まさに1人暮し仕様だ。
ルーズなこの格好は前の彼氏のお気に入りなんだけど、思いだすとブルーになるので
頭の隅に記憶を追いはらう。
どのみち、すぐに服なんか着れなくなっちゃうんだから‥‥
ゾク、ゾクッと走るおののき。
弱めにしたクーラーが、緊縛の予感にほてりだす肌をすうすうなでる。
服を脱ぎ捨てて裸身をさらけだし、全身にまとう拘束着を広げながらこっそり指先で
まさぐってみると、秘めやかなとばりはすでにじっとり潤いだしていた。
ベルベットのように柔らかく、危うい自縛の予感。
肌を食い締めるだろう窮屈な感触を思いだすだけで、どこもかしこも充血していく。
今日は‥‥どうやって、自分を虐めようか。
迷って、普段使うことのない麻縄の束を手にしてみた。ろうそくやムチと並んで縄を
使った緊縛はSMの代名詞の一つだろう。女性の肌を噛みしめる後ろ手の美しい緊縛
はMッ気のある子なら誰でも憧れるけど、一人きりのセルフボンテージで後ろ手縛り
はほとんどムリに近い。
それでも、縄が肌を締めあげていく淫靡さや独特の軋みは、たしかに心を震わせる。
「‥‥」
久々の縄の手ざわりに息をのみ、フローリングの床にペタンと座った。大きくお股を
開いて足首を水平に重ね合わせ、手際よく縛り上げていく。いわゆるあぐら縛りだ。
曲げた左右の膝の上下にも縄をかけ、太ももとふくらはぎが密着する体勢をとった。
思いきり裂かれたお股が、ひとしれぬ惨めさにぷっくり充血していく。
もちろん、期待にうるむクレヴァスへの責めも忘れない。
さっきの夢にも出てきた、革の固定ベルトを腰にまわした。垂直にたれるY字の細い
革紐を、お尻の方から下にまわしていく。谷間にもぐりきったところで一度手を休め、
小さな逆三角形のプラグを取りだした。
丁寧に口でしゃぶり、塗らしてからお尻の穴にあてがう。
「ん‥‥っッ」
つぷん。
お尻いじめ専用のアナルプラグが、きゅうくつな括約筋を広げつつ胎内に入ってくる。
マゾの女の子は、アヌスでも感じることがある‥‥ネットで仕入れた生半可な知識を
元に始めたお尻虐めの儀式は、いまや私をやみつきにさせていた。
ノーマルじゃない刺激とタブーが、入れてはいけない場所、感じるはずのない汚れた
場所に異物を挿入する背徳感が、たまらないのだ。
にるにると、意志に関係なく菊花が拡張されていく異物感。プラグが抜けないように
ベルトで押しこみ、お股をくぐらせていく。カラダの前でY字の部分を広げ、女の子
のとばりを左右にかきわけて革紐を食い込ませた。にちゃりと粘つく肉ヒダを奥まで
さらけだされ、恥ずかしさがカァッと肌を火照らせる。
「んあっ、ァァ‥‥」
顔を赤くしながら、私は充血した土手に埋もれる革紐をきゅうっと引っぱりあげた。
つっかかっていたお尻のプラグが根元までスポンと嵌まりこみ、くびれた部分を括約
筋が深々と咥えこむ。そのまま腰のベルトを固定してしまうのだ。
しだいに昂ぶる快感にせかされ、私は上半身にもどかしく革の拘束具を着ていった。
乳房の上下をくびり、腕とカラダを一体化させる残酷な上衣。
本来、佐藤志乃さんが着るはずだった縛めが私のカラダを這いまわる。わりと自信の
あるオッパイが革紐のせいでたぷんと大きく弾み、チリチリしたむず痒さが、拘束着
の食いこんだ肌をビンカンな奴隷のそれに作り変えていく。
最後にバイブのスイッチを入れてから濡れそぼった肉のはざまに深々と呑みこませ、
首輪から吊りさげた手錠に後ろ手を押しこんでいく。たどたどしく手錠の革ベルトを
絞りあげ、手首が抜けなくなったのをたしかめて、震える指先でバックルに南京錠を
嵌めこんだ。
カチンと澄んだ音色が、私の心をすみずみまで深く揺り動かす。
「ん、ンフゥゥッ」
完成‥‥
かってないほどハードで、ただの呼吸さえつらい自縛が私の自由を奪ってしまった。
これでもう、私は戻れない。逃げられない‥‥
自力で抜けだすしかないんだ‥‥
とっくにリング状の革の猿轡をかまされて声を失った唇が、甘い睦言をつむぎだす。
後ろ手緊縛の完璧さを感じたくて、私はギシギシと裸身を揺すりたてた。
「ンッ、くぅっン!」
とたんにミシリと裸身がひきつれ、革ベルトの痛みで全身が悲鳴をあげる。
ウソ‥‥どうして、予想より全然ヒドい、激しすぎる‥‥
首を突きだしたまま、私は焦りにかられて思わぬ呻きをあげていた。
あぐら縛りの縄尻が首輪の正面リングに短く結ばれ、もはや私は不自由な前かがみの
拘束された姿勢のまま、床を這いずることさえ不可能になってしまったのだ。
ぞくに海老縛りと呼ばれる、残酷な拷問用の緊縛。
その緊縛を自分自身に施してしまった今、下半身も両手も達磨のように軋むばかりで
なに一つ自由にならないのだ。この自縛姿から逃れるためには南京錠のカギを外し、
なんとしても後ろ手の手錠をほどかねばならない。
それが、唯一の望みなのに‥‥
今の私に、本当にソレができるのか‥‥
快感に理性が狂って、無謀なセルフボンテージに挑戦してしまったのはないのか‥‥
「にゃ、ニャニャ?」
いつになく興奮して室内をうろつきまわるテトラを見つめ、私はうっとり絶望感に酔
っていた。彼女の首輪から下がった小さなカギ。あれを取り戻さない限り、私が解放
されることはないのだ。
後ろ手のこのカラダで、一体どうすれば子猫の首から鍵を取リ戻せるというのだろう。
ブブブブ‥‥
必死に脱出プランを練る私をあざ笑って、バイブの振動はオツユをしたたらせるクレ
ヴァスをぐりぐりかき回し、残酷にも私から思考能力さえ奪いさろうとする。
あぁ‥‥
思いつきかけたアイデアがふつんと甘くとぎれ、私は淫らな吐息に溺れきっていた。
かって一度もしたことのない、ギリギリの危ういセルフボンテージ。
もはや、このステージから降りる道はない。

             ‥‥‥‥‥‥‥‥

静かに室内に響くのは、深く胎内をえぐりまわすサディスティックなローターの振動。
ふぅ、ふぅぅっと荒い呼吸が、リングギャグの輪の中からあふれでる。
「ンッ、んぐぅ」
すでに、自縛を完成させてから50分近くが経過していた。
いつもならとっくに甘い快楽をむさぼりつくし、おだやかな余韻にひたりながら手錠
の痕をさすっているぐらいの時間‥‥
緊縛されきった私の肢体は、座りこんだ場所からほんの1ミリも移動していなかった。
縛めを皮膚に食いこませたまま、自分の無力さにさいなまれたまま灼けつく焦燥感に
身を焦がすだけの、絶望しきった奴隷の終わり。
なのに容赦なくトロけきったマゾのカラダだけは、意志と無関係に昇りつめていく。
焦りが、おののきが深くなればなるほど、スリルは快楽の深みを増し、毛穴さえ開い
た裸身のすみずみまで、くまなく刺激を伝達していくのだ。
「ぐッ‥‥!」
口の奥まで咥えこんだ鉄のリングにぎりぎり歯を立てる。
何度となくわき上がる淫らなアクメを噛みしめ、共鳴しあう2本のバイブがもたらす
疼痛の激しさにだらだら涎をこぼしつつ、私は必死に汗をほとばしらせてイキそうな
カラダを押さえつけていた。
ダメ‥‥ココでイッたら、また頭がおかしくなる‥‥その前に‥‥
早くテトラから鍵を取り返さないと‥‥
「くぅ‥‥ン、ンンンっっ」
しかし。
やけになってギシ、ギシッと悶えても念入りに締めつけたベルトがゆるむわけもなく、
拘束具が軋み、あぐら縛りの縄とともに重奏を響かせるばかりだ。
縛り上げられた全身を、キリキリ苦痛めいた拘束の衝撃が走りぬけていく。どんなに
深くても、のけぞるような快感の波でも、私は海老縛りの苦しい格好ですべてを飲み
つくすしかない。
自分でコントロールできない、ムリヤリな刺激の狂おしさ。
べったりとフローリングの床にお尻を押しつけているせいで、いやでも括約筋の根元
までプラグが食い込み、前のクレヴァスに埋まったバイブと一緒に直腸を擦りあげて
しまうのだ。おぞましい器具をくわえ込んだ下半身の粘膜は、しずくをあふれさせて
ヒクヒク咀嚼を始めていく。
カーテンを開け放った窓からは、嵐の昏い街並み。
アパートの9階だけあって、周囲から私の部屋を覗けるビルはないだろう。それでも、
恥ずかしい自分を窓の外にさらけ出しているというスリルが、とめどなく熱いオツユ
をクレヴァスからあふれさせるのだ。
「んっ、んん〜〜〜〜」
ダメ、イク‥‥また、またいクッッ‥‥
高々と被虐の快楽に載せあげられ、目を見張ったまま、私は部屋の隅を凝視していた。
服のチェックに使う鏡に、今はそそけだつほど悩ましい、たゆんたゆんとオッパイを
揺らして、うるんだ瞳でSOSを訴えかける女性が映っている。どう見ても抜けだす
望みのない、完璧な拘束姿。腰をひねるたび、血の気を失いつつある後ろ手の手首が
視野に映りこみ、痛々しさをより深めている。
そして何より感じきっている証拠。
お股の下の床に、お漏らしのように広がる、透明な液体の池‥‥
ぶわっとトリハダが全身を貫いた。
これが‥‥AV女優みたいなSM狂いでよがるこの格好が、私の本当の姿なんて‥‥
ウソ、違うのに。ほんの少し、エッチな気晴らしが欲しかっただけなのに‥‥
「ぐ‥‥うぅ、うんっッンンッッ!!」
しまった‥‥思ったときにはもう遅かった。
エッチな姿を再確認したことで、理性でねじ伏せていた被虐の炎がむらむらと大きく
燃え上がったのだ。惨めで、エッチで、助かりそうもない私。恥ずかしい姿で、この
まま最後の最後までイキまくるしかないなんて‥‥
ゾクン、と律動が、子宮の底が、大きくざわめく。
ぞわぞわバイブに絡みつき、その太さを、激しい振動を、寂しさをまぎらわす挿入感
を堪能していた肉ヒダがいっせいに蠢きだし、奥へ奥へと引き込むようにバイブへと
むしゃぶりついていくる。
足の指が引き攣れそうな、とめどない衝撃と、めくるめくエクスタシーの大波‥‥
お尻が、クレヴァスが、シンクロした刺激のすべてが雪崩を打って全身を舐めつくす。
トプトプッと革紐のすきまからにじみ出るオツユの生暖かささえ気持ちが良くて。
びっしょり汗にまみれて魚のヒレのように一体化した上半身の縛めが、後ろ手に固く
食いこんでくる革手錠の吸いつきさえもがたまらなくよくて。
「ふごぉぉ!」
怒涛のような昂ぶりに押し流され、メチャクチャになった意識の中で泣きわめく。
もうイイ。もう刺激はいらない。イキたくないのに。
良すぎて、視界が真っ白で、もう充分だよ‥‥腰が抜けるほどイッたんだから‥‥
イヤァ‥‥許してェ‥‥
壊れちゃうよ、こんなの、知らなかった‥‥
よがってもよがっても、何度高みに達しても、すぐにその上をいく快楽の大波にさら
われていく恐ろしさ。尖りきった乳首から母乳でも噴きだしそうなほど、オッパイが
コリコリにしこりきって、その胸をぷるぷる震わすのが最高の快感で‥‥
あまりの拷問に、瞳からじわりと苦しみの涙が流れだす。
背中を丸め、何も出来ないままブルブルとゼリーのように拘束された裸身を痙攣させ
つづけて‥‥エクスタシーの、絶頂の頂点に上りつめた私は、さらに深い奈落の底へ
転がり落ちていく。

               ‥‥‥‥‥‥‥‥

ゆっくりと、失っていた意識が浮上してくる。
カラダがほてって熱い。それになんだろう。疲労がぎしぎし溜まっていて‥‥
「‥‥!」
そこでようやく、頭が元に戻った。
変化のない室内。乳房の先が太ももに触れるほど折りたたまれた海老縛りのカラダ。
私は、私自身の流しつくした汗とオツユ溜りのなか、固く後ろ手錠に縛められた姿勢
そのままで座りこんでいた。
と同時に、ヴィィィィンと鈍く痛烈な衝撃が咥えこんだクレヴァスから広がってくる。
前と後ろから胎内を掻きまわすバイブが、再び快感を送り込んでくるのだ。
あの、めくるめくエクスタシーのすばらしさときたら。
このままイキまくって、二度と拘束姿から抜けだせぬまま衰弱死してしまってもイイ
‥‥そんな呆けた思考さえ浮かぶほどの、甘美で残酷なマゾの愉悦。
どうしよう‥‥どうしよう、本当に拘束具がほどけない‥‥
このままじゃ、衰弱して私倒れちゃう‥‥
急速につきあげた焦りをぐいとねじ伏せ、時計に目をやる。気絶したのは5分足らず。
単調なTVの音声だけが、室内を支配している。
テトラはどこにいるの?
とっさにそれを思った。彼女の首輪につけた南京錠のカギ、あれがなくなったら私は
終わりなのだ。外に行ってしまわないように、窓などの戸じまりは念入りにしてある。
どこか他の部屋にいるはずの、あの子を見つけ出さないと。
「ンッ」
ぐいっと足に力を込め、膝をいざらせる。
なにも起きなかった。
背中を丸めたまま仏像のように固まったカラダは、濡れたフローリングの床でかすか
に揺れただけだ。やはり、どうカラダをよじらせても、移動などできるはずもない。
顔からつっぷして這いずるのは、ケガをしそうな恐怖があった。
背中高く吊りあげてしまった後ろ手錠も、自由な指が動かぬほどしびれきり、見込み
の甘さを無慈悲なカタチで突きつけてくるのだ。
やはりムリなのか、テトラが戻ってくるのを待つしか‥‥
「‥‥ッッ!」
こみあげた甘い悦びがふたたびカラダの芯に火をつけ、私は舌をならして喘いでいた。
もうダメだ、もう一度あれを味わって理性をとりもどす自信は、私にはない。
けれど次の瞬間、アイデアが頭をよぎっていた。
「‥‥ッッ」
舌を鳴らし、喉声をあげてみる。テトラを呼びよせる時、私はよく舌を鳴らしていた。
運悪く子猫が眠ったりしていなければ、きっと。
「ニャー」
「ん、んんーーッ」
ふにゃっとした顔でベットルームの方から這い出てきたテトラに、私は踊りあがった。
子猫の首にはカギが下がっている。そう。そのまま私の方に来て、その鍵を早く‥‥

ピンポーン

大きく鳴りひびくドアチャイムの音が、一人と一匹をすくませた。
「佐藤さーん、お届けものでーす」
ある事実に気づき、猿轡の下でさぁっと顔があおざめる。
致命的なミス。
スリルを増すため、私はわざと、玄関のカギをかけていなかったのだ。


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